こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
ということで復刻レビューにて『黒薔薇昇天』のご紹介を! ロマンポルノの煽りタイトルもそうですが、コンプライアンス感覚皆無の時代のレビューであること、ご承知おきいただけたらと。
さて、谷ナオミ様の主演作です!
データ
監督:神代辰巳
出演:岸田森、谷ナオミ、芹明香、山谷初男、高橋明、東てる美、谷本一、庄司三郎、森みどり、牧嗣人
20世紀が新世紀に残してくれた最高の遺産!
(轟夕起夫)
長く生きていると、いろんなことが起こるもんである。去る2000年の12月6日、俺はとめどもない高揚感とともに目的地へと向かっていた。そう、“伝説”の待つ場所へ。
なんと、あの谷ナオミ様にインタビューできるというのだ!
そーとー嬉しかったようです!
説明するまでもない。SM映画のアイコンにして日活ロマンポルノの名花。1979年に映画界を引退した伝説の女優が、特集上映会「監督小沼勝レトロスペクティブ」のため取材に応じてくれるというのである。
小沼勝はロマンポルノ・レーベルで多くの映画を撮り、レーベルを牽引した監督! 谷ナオミ主演の映画も多いです。例えばこちら。
新宿、14時。ところは日本最大級と言われるグランドキャバレー「歌舞伎町クラブハイツ」。
キャバレーでインタビュー??
俺はエレベーターに乗った。胸の鼓動。
? キャバレーで? インタビュー?
扉が開いた。
すると、いきなりけたたましい音の洪水が襲ってきた。で、目の前にはなぜか背中に“鬼”の一文字をあしらったハッピ姿の女性たちが!? てっきり階を間違えたのかと思った。しかし担当編集者の姿を発見する。そしてその第一声が──「こんなことになってしまって!」
ほら!ほら!!
にわかには状況が掴めなかった。視界の奥には巨大ステージが見え、そのまわりを数十ものボックス席が取り囲んでおり、総勢百人以上が歓談をしていた。
そこに司会者らしき男の声が響いた。
「え〜、今年の団鬼六の忘年会も…」
鬼六? 忘年会? 何だってェ〜?
なるほどキャバレー…
団鬼六は官能小説家の第一人者、ロマンポルノの原作は多数!映画監督、プロデューサーの一面も。2011年に80歳で亡くなりました。
あとは推して知るべし。だが、お会いできた谷ナオミさんは素晴らしく“保存状態”が良かった。いや、失礼な言い方をした。気品さ、妖艶さなど本当にスクリーンの中のままだった。
ただ、困ったのは、宴もたけなわのその場所でインタビューを行わなければならなかったこと。あとでテープを聞いて、あまりの騒音に声がなかなか聞き取れず泣いた。
逆に、騒音の方を聞きたいです、団鬼六の絢爛めくるめく忘年会!
しかし団鬼六の忘年会で谷ナオミさん (小沼監督の姿もあった!)とお話するなんて、2度と体験できることではない。20世紀のラストを締め括るにふさわしい出来事ではあった。
そして翌2001年、ビデオテープでリリースされたばかりの『黒薔薇昇天』を久々に観た。やはりシビれるような傑作だ。監督は神代辰巳。主演には岸田森が。
まだビデオテープ主流の時代の復刻リリースだったわけですが…たった20年前が、ビデオテープの時代だったなんて! そっちが驚きです。
岸田森に関しての記事、こちらにあります。
神代辰巳監督の関連記事はこちら!
二人ともすでに世を去り、言葉の真の意味で“伝説”になってしまった異才だ。そこに谷ナオミが加わる。黄金のトライアングル!!
岸田森と谷ナオミ──かたやエロ魂あふれるブルーフィルムの監督、かたやワケありの和服美人。運命の出会い(と、監督の奸計)によってカラダを重ねあう男と女。
と、そのとき、隣の部屋に潜んでいた撮影隊が出てきて、二人にカメラを向ける! 岸田森と谷ナオミの、カラみカラまりあう10分以上ものセックスシーン。20世紀が新世紀に残してくれた最高の遺産。これを観ながら俺はあの日、至近距離の、手の届くところにいた女神のことを思った。鳴乎〜、ナオミ!
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ビデオボーイ2001年3月号掲載記事を改訂!
『黒薔薇昇天』はU-NEXTでは見放題タイトルに入っています。(2021年7月2日まで、2020年10月現在情報)
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