こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1974年
監督:小沼勝
出演:谷ナオミ、東てる美、高山千草、影山英俊 脚本:田中陽造
役所広司、黒木瞳主演によるもう一つの『失楽園』を夢想する
(轟夕起夫)
久木祥一郎と松原凛子。
この二人の名にピンときたアナタは『失楽園』ブームの一端を担ってきた方なのだろう。原作を読んだか、はたまた映画版を観たか。
原作の渡辺淳一さんの著書がバカ売れで・・・
役所広司さんと黒木瞳さん主演で映画化したら大ヒット!の『失楽園』ですね。
それぞれの家庭を犠牲にし、真実の愛とやらに殉じていく男と女。映画ではシンシンと雪が降りしきる中、役所広司と黒木瞳扮する〈祥一郎と凛子〉の、その道行きを貫徹するラストがまた、とりわけ深い余韻を残していた。
そもそも「失楽園」て、アダムとイブが禁断の実を食べちゃって追放されるという、旧約聖書にあるお話です。
それはそれでいいのだ。そんな風に美しく人生を諦められたら実に悦ばしいことではあろう。本当に。
ところがここに、心中をしたにもかかわらず、そうは簡単には美しく死なせてもらえなかったカップルが存在する。『生贄夫人』の東てる美と影山英俊扮する若きカップルだ。
東てる美さんはこの後、テレビドラマで人気女優に!「渡る世間は鬼ばかり」はじめドラマ出演の他、11PMの司会をされていたことも。
山中に、仲よく並んで仮死状態にあった二人。それまでさんざんヒロインの谷ナオミを責めまくっていた、サディスト男に見つかったのが運のつきだった。女のほうは死姦されて息を吹き返し、廃屋に連れていかれ、のちに男がそこに自力で辿りつく。
谷ナオミさんは団鬼六原作のSM映画に数多く主演し、「SMの女王」と呼ばれてました。
谷ナオミはサディスト男に訊ねる。
「やっかいなお荷物を背負い込んだものね。なぜ助けたりしたの?」
「妬ましかった……」
「妬ましい?」
「顔がね、笑ってたんですよ。幸せそうにね。まるでもう、自分たちの愛を信じきっているといった顔で……」
「死人に嫉妬するなんて……あなたらしいわ」
「花と蛇」原作の映画は何作も作られました、人気です!
初めて映画化したのは日活ロマンポルノで。谷ナオミさんが主演です。
杉本彩さんも主演していたりしますね。(2004年、石井隆監督)
小日向美奈子さんが主演してたりもします(2010年、成田裕介監督)。
そうして縛られ泣きじゃくる女に、谷ナオミが駄目押しでこう云う。
「どうして死んでしまわなかったの。……これから生き恥をさらすことになるというのに……」
男がハッと目を覚ますと、自らは柱に括りつけられ、そこには縄化粧の恋人が、例のサディスト男に浣腸を一発お見舞いされるところであった。「 ウッー」という呻き越えとともに恋人の目の前で失禁する女。
ホント、死んでおけば良かった。
それにしてもドリフの“もしも”コントではないが…、
ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」は、今でもちびっこがケラケラ笑い出す破壊力!
もしも祥一郎と凛子の心中現場に、このサディスト男が現れていたなら──雪の上の浣腸──。
それもまた、もうひとつの失楽園と呼ぶべき光景かもしれない。
「失楽園」とドリフを列記しての、このオチ!?、どうかと思います…。
ビデオボーイ1997年8月号掲載コラムより!
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