映画化もテレビドラマ化も数知れず。金田一耕助はさまざまな俳優が演じました。例えば映画版では高倉健、中尾彬、渥美清、西田敏行、三船敏郎…、テレビドラマ版では役所広司、稲垣吾郎、池松壮亮、加藤シゲアキ…。
なかでも空前の大ヒットを飛ばした映画『犬神家の一族』は、知名度ナンバーワン! 市川崑監督、石坂浩二主演。以降このコンビで6作の金田一映画が生まれました。
これら市川崑監督作に登場した、とっても味わいのある(目立つ!)脇役が「等々力警部」。演じたのは加藤武。市川崑映画が生んだキャラクターです。
さて。ちょっと気になるこの「等々力警部」を語るレビューをご紹介。等々力警部がわかると、金田一耕助の映像作品、動画を観るとき、面白さがアップしますヨ!
市川崑監督版の「そうか、よしっ、わかった!」by加藤武
ポンと手を打ち「そうか、よしっ、わかった!」と早合点。「犯人は○○だ」と断言するも的外れで、周囲を「えっ!?」と驚かせる。あるいは、金田一耕助とは何度も会ってるのに毎回「キミ誰だっけ?」式にボケるお約束。
この市川崑監督版の等々力警部に関しては皆さん、原作とは別モノとして大いに親しんできたものと思う。ま、ヒゲをたくわえた加藤武が扮しているわけだが、厳密にいえば第1作(『犬神家の一族』)が橘警察署長、第2作(『悪魔の手毬唄』)が立花捜査主任で第3作以降(『獄門島』『女王蜂』『病院坂の首縊りの家』、2006年版『犬神家の一族』)が等々力警部。
ちなみに片岡鶴太郎主演のTVシリーズにも登場し(こちらは磯川警部)、内田康夫原作の『天河伝説殺人事件』(1991年)にも同キャラ(名前は仙波警部補)で出ている。『八つ墓村』(1996年)では轟警部だ。
『天河伝説殺人事件』は原作内田康夫。横溝正史原作の金田一シリーズとはまったく別ものです!
『八つ墓村』(1996年)は、市川崑監督、金田一耕助役に豊川悦司。
金田一モノの最高出演数を誇る、いわばキャラクタライズされた“ここで笑ってください”的記号とでも言ったらいいか。
証拠物件として金田一耕助の事件DVD-BOXの特典ディスク、加藤武が語る「よしっ、わかった!インタビュー」を見てみる。日く、『犬神家の一族』では初めシリアスなキャラだったが屋根を登っていくシーンで滑ってから、おっちょこちょいに演じたほうがいいと思ったと。
で、以後それがエスカレートしていき、凄惨な事件をほぐす役回り、さらには金田一を引き立て、観客に優越感を与えるコメディ・リリーフになったと。
他にも得意の“粉末胃腸薬飛ばし”は龍角散にクリープを入れたなど、この特典は要チェックである。
ん……そうか、よしっ、わかった!
『犬神家の一族』では製作者・角川春樹が自ら“出演志願”をし、刑事役でチラリと顔を出している。で、当時の加藤武の当たり役といえば御存知、『仁義なき戦い』シリーズ随一の優柔不断ヘタレキャラ・打本昇である。警部役であろうと、映画に笑いを導入するのは必至だ。
さらに角川春樹にその部下を演じさせれば、凸凹コンビ誕生となる。加藤武の記念すべき一発目の「よしっ、わかった!」は現に、共演した角川春樹のセリフを受けて発せられたもの。崑サンが撮影中に思いついたのだが、この凸凹コンビの連携プレーが生み出した、とも言える……かも。
……えっ? 全然違うって? 失敬失敬。おわびに今日から「等々カ・タ起夫」に改名します!
なんつって。
(轟夕起夫)
映画秘宝2004年4月号掲載記事を改訂!
関連記事のご紹介! 加藤武自ら「よし、わかった!」の裏話しを語ったインタビュー記事があります!
こちらのインタビューでも「よし、わかった!」に触れています!
加藤武が語った一代記を綴った書籍「加藤武 芝居語り 因果と丈夫なこの身体」もおすすめ! 書籍レビューはこちらです。
そして追悼記事もご紹介させていただきます。
U-NEXTの見放題タイトルで市川崑監督作が何本観られるかを調べました!記事はこちらです。