こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1976年
監督:小沼勝
出演:谷ナオミ、北川たか子、花柳幻舟、蟹江敬三、中丸信、長弘
脚本:松岡清治
音楽:樋口康雄
小沼勝とキェシロフスキを語りたい!
(轟夕起夫)
日本の、そして日活ロマンポルノの“キェシロフスキ”といえば小沼勝だ。
なぬ!? Who is キェシロフスキ?
めっちゃ語りたそうですね。聞きましょう。
ほら、『デカローグ』『ふたりのベロニカ』『トリコロール』3部作などで知られるポーランド生まれの映画作家、1996年に54才の若さで早逝したクシシュトフ・キェシロフスキのことですよ。
「偶然と必然と運命」とを天秤にかけ、ときに政治的寓話も盛り込み、力ワザでドラマチックにストーリーを転がしてみせた(でもトンデモ系ぎりぎりの)語り部の才人!
『デカローグ』は元はポーランドのテレビシリーズ。話題を呼び、のちに世界で劇場公開されました。
『トリコロール』3部作とは、その名の通りフランス国旗の青(自由)白(平等)赤(友愛)がモチーフです。
まあ、「SM描写のない小沼勝」がキェシロフスキで、「政治的寓話のないキェシロフスキ」が小沼勝といえるか。
ただ、どちらも“視線劇の官能”を撮らせたらピカイチ。たとえばキェシロフスキには『愛に関する短いフィルム』があり、小沼にはその極致と呼ばれる傑作『花芯の刺青 熟れた壷』がある。
『愛に関する短いフィルム』は、『デカローグ』の第6話が元になってます。
谷ナオミ扮するヒロインと、かつて自分を犯した歌舞伎役者の息子(中丸信、現・中丸新将)との運命の出会い。「これを許さにゃあ、キェシロフスキも許されまい」てな偶然の出会いなのだが、嫉妬の炎を燃やしつつナオミが、中二階からセックスを覗き見し、自らを慰める場面のパースペクティヴな光景の素晴らしさよ! 彫師(蟹江敬三)との刺青シーンの凄さも含め、本作はほとんどアートフィルムの域に達している。
そんな小沼勝の新作は『女はバス停で服を着替えた』。かつて不義の関係にあった男(遠藤憲一)と女(戸田菜穂)が、「偶然と必然と運命」の力ワザで北海道でサルサを踊る(笑)。
やっ、やはりこの監督は、日本のキェシロフスキだ!
ところで『熟れた壷』の音楽は樋口康雄。
再評価著しい名曲「I LOVE YOU」で知られるピコである。ロマンポルノは『エロスは甘き香り』ほか何本か担当しているが、ここでのトゥーマッチな和楽テイストは、ちょっと笑えマス。
作曲家、樋口康雄さんの愛称がピコ。
音楽提供は、映画やドラマ、CMなど多方面。アニメ『小公女セーラ』や『機動新世紀ガンダムX』の音楽も手がけてます。
ビデオボーイ2003年5月号掲載コラムより!
『花芯の刺青 熟れた壷』はU-NEXTでは見放題タイトルに入っています。(2021年7月2日まで、2020年10月現在情報)
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