26本の映画と無数のTVドラマを生んだ国民的人斬り『座頭市』シリーズ、オリジネイター勝新太郎版の歴史解説と、おすすめ5本

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館理人
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『座頭市』、世界的に人気です。異形のエンタメヒーロー!

館理人
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ワンピースでいえば、キャラ、藤虎ふじとら(イッショウ)のモデル! 仕込み杖を持つ盲目の凄腕剣客とはまさに勝新太郎の『座頭市』のキャラ設定。

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『座頭市』のリメイクもたくさん作られています。

ハリウッドではルトガー・ハウアー主演の『ブラインド・フューリー』(1989年) 、日本では北野武監督・主演『座頭市』(2003年)、綾瀬はるか主演『ICHI』(2008年)、香取慎吾主演『座頭市THE LAST』(2010年)…。

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さて、こちらの復刻記事、そんな『座頭市』の魅力を解説したものですが、雑誌掲載時期は、北野武監督・主演作『座頭市』が公開された時期で、その元となった勝新太郎バージョンを振り返ったものになります。

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ですので、フリとシメが北野武版について言及されております。

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てことで、前置き以上!

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『座頭市』シリーズ解説

(文・轟夕起夫)

 2003年、勝新かつしんこと勝新太郎の七回忌に合わせるかのように、北野武監督版『座頭市』が公開された。この映画的継承には何とも興味深いものがあるのだが、当の北野氏はというと「頼まれたからやった」と、案外そっけなかった。

 たしかに北野武監督版で「企画」として名を連ねている斎藤智恵子氏(浅草ロック座の会長)は、たけしにとっては昔からの恩人であり、勝新とも親しかった傑物。その懇望を断るわけにはいかなかったろう。

 だが、本当にそれだけか。「頼まれたからやった」という言葉を鵜呑みにしていいのか。物事とはそう単純ではあるまい。

 そこで今一度、勝新の残した『座頭市』の歴史を素描してみるとしよう。

記念すべき第1作

 名匠・三隅研次監督の手で記念すべき第1作『座頭市物語』が発表されたのは1962年のこと。原作は子母沢寛の随筆集「ふところ手帳」の中の掌編である。

 そこに綴られていたのは、「市」と呼ばれる座頭(頭髪を剃って按摩や鍼をなりわいにしていた盲人)で、侠客でもあり、博奕が強く、しかも居合斬りのエキスパートでもあった。

 脚本を執筆したのは犬塚稔。やはり勝新が盲目のピカレスクな鍼医者に扮し、白塗り二枚目路線からの脱皮を果たした『不知火検校』(1960年)に続いてのコンビ作だ(子母沢と交友のあった犬塚が原作を読み、当時の大映企画部長・鈴木晰也と意気投合して企画成立したとの説も)。

 勝新は、この破格のキャラクターに惚れ込んで、役に同化した。

 時は天保の頃。講談でもおなじみのやくざ者、飯岡助五郎と笹川繁造の勢力争いを背景に、助五郎のもとに草鞋をぬいだ市と、笹川の用心棒となった平手造酒(天知茂)との友情と宿命の対決が描かれてゆく。

大ヒットを受け2作目、3作目へ

 大映京都撮影所ならではの職人的ワザも冴えわたる、人情ハードボイルド時代劇の傑作『座頭市物語』は大ヒットし、同年、すかさず森一生監督で『続・座頭市物語』がこしらえられた(“城健三朗”時代の若山富三郎と、兄弟役を演じあい、一戦交えた)。

 翌1963年には田中徳三監督の『新・座頭市物語』で初めてカラー作品となり、シリーズ化にいっそう拍車がかかってゆく。

観客を魅了した殺陣

 とにかく、目にも止まらぬ市の逆手居合斬りが観客を魅了した。とりわけ革新的だったのはその音。シュブ〜、ズブッ、シャキーン、ザザッ..….。市の仕込み杖が一閃し、鞘に収まった瞬間、徳利や蝋燭は真っ二つになり、刀を抜いて向かってきた相手どもが皆、地に倒れていた!

 静から動へ。動から静へ。回を重ねるごとに、殺陣のほうは(まるでマカロニ・ウスタンのように)スペクタクルかつ荒唐無稽になっていったが、映画はつねに、五感を研ぎ澄まして音と匂いとカンとで闘う市の “聴覚映像”を、観る者にまざまざと体験させた。

館理人
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マカロニ・ウスタンはイタリアで作られた西部劇。クリント・イーストウッドが主演の『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』などがそれです!

三船敏郎との勝負

 つぎつぎと剣豪が挑むものの、市の必殺剣は敵なしであった。そんなとき、頂上対決が組まれた。第20作『座頭市と用心棒』(1970年)である。黒澤明の生みだした三船“用心棒”敏郎との勝負。

 共演は若尾文子、監督は岡本喜八と申し分のない顔合わせで実現したが、決着は巧妙に避けられ(ま、そりゃそうだろう……)、怪優・岸田森の殺し屋“九頭竜”の存在感がキラリと光った。

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岸田森さんについては、こちらに記事があります!

香港の国民的ヒーローとの競演

 1971年、香港のゴールデン・ハーベストと勝プロ合作による『新座頭市 破れ!唐人剣』では功夫クンフーの雄、王羽ことジミー・ウォングとも闘った。これにより香港の武侠映画のみならず、功夫映画にも多大な影響を与えた。

勝新太郎の監督作への逆風

 そして翌1972年、勝新は『座頭市物語 折れた杖』を自ら監督。久々に師匠の犬塚稔に脚本を依頼したが、完成作はボロクソにけなされた。

 そればかりか師匠は、のちに因縁の相手となってしまう。すなわち、書き下ろしの脚本『罰あたり座頭市』(未映画化)執筆料をめぐっての訴訟問題が起きたのだ。

 だがそれはまた別の話だろう。ちなみに犬塚の著書「映画は陽炎の如く! (草思社)には『罰あたり座頭市』のシナリオが載っている。

テレビドラマシリーズへ

 第25作の『新座頭市物語 笠間の血祭り』(1973年)以後、『座頭市』は映画からテレビシリーズへと継承されていき、1974〜75年に『座頭市物語』、1978〜79年には『新・座頭市』が放映され、合わせて100本ものエピソードが生まれた。

 どうやら勝新にとっての『座頭市』とは、ローリング・ストーンズにおける「サティスファクション」のようなものだったのかもしれない。つまりこういうことだ。

「サティスファクション」を毎回ライヴで唄わざるを得ないミック・ジャガー。「またかよ!」とウンザリしつつも唄い始めるや、初期衝動を取り戻し「I can’t get no〜」のフレーズに力をこめるミックのごとく、勝新もまた、市を繰り返し演じながら、永遠に満足できない“芸の虫”に突き動かされていたに違いない。

勝新太郎の監督作再び

 シリーズ第26作目にして勝新最後の映画版『座頭市』(1989年)は当初、五社英雄監督で撮る予定だったが、勝新がメガホンをとった。テレビ、舞台版でも共演した緒形拳はわかるが、さらに内田裕也、陣内孝則、安岡力也、片岡鶴太郎、樋口可南子、そして息子の奥村雄大(のちに鴈龍)という異色の顔ぶれ。

 考えてみればこのメンツの中に、ビートたけしの名が並ばなかったのはちょっと不思議だ。が、同じ年、彼は“北野武”として『その男、凶暴につき』で監督デビューするのである。

『その男、凶暴につき』は、勝新の監督第1作『顔役』(1971年)と対応する、画期的な刑事映画だった。映像の手触りが極めて感覚的で、それは脚本を単なる叩き台にしてしまう“現場リアリティ主義”の勝新の姿勢と似ていた。

館理人
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『顔役』はこのたび東宝DVD名作セレクションで初DVD化となりました!2020年11月18日発売です。

勝新太郎亡き後のリメイク作

 勝新が逝去した1997年以降、『座頭市』映画化にいちばん近いところにいたのは、やはり“現場リアリティ主義”の三池崇史だ(筆者は三池監督から「松本人志にやらせたら面白いかも」という言葉を聞いたことがある)。

 市を演じられるのは間の取り方も含め、突拍子もない才能を持った芸人のみ。勝新は、三味線と舞踊を会得した伝統芸能の猛者だった。芸人として“浅草時代”を経験しているたけしが引き受けることになったのは必然か。

 新たに座頭市を体現するにあたって彼は、金髪にした。理由は、パイオニアの犬塚稔(脚本)、あるいは勝新が築きあげてきたものから自由になるためだろう。そしてきっと、その“盲目演技”は観客を驚かすことになるはず。1994年のバイク事故で眼を傷つけ、以来、無意識に人々の視線をそこに集めてきた男の最終形態──座頭市は、それだからである。

館理人
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以上、駆け足で歴史をお届けしました〜! さて。

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シリーズが多すぎて何から観ようか迷う時の参考にしてください!『座頭市』のクライマックスでチョイスした映画版5本はこちら!!

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勝新版『座頭市』名勝負BEST5!

(轟夕起夫)

BEST 1 VS 天知茂『座頭市物語』

悩んだが、やはりこれか。丸木橋の上。勝負は一瞬。平手造酒の今際のキワの言葉は「見事だ。つまらん奴の手にかかるより貴公に斬られたかった」。これを市の背中にもたれかかって言うんだよなぁ。市の目、男の目に涙。

BEST 2 VS 近衛十四郎『座頭市血煙り街道』

ド迫力!戦前派、戦後派ナンバーワン剣劇スター同士の、殺陣師なしのガチンコ対決。実質的には公儀隠密の近衛十四郎が勝ってるけど。最後は“花山大吉”的優しさが顔をのぞかせ、市は“焼津の半次”のよう。

BEST 3 VS 若山富三郎(as 城健三朗『座頭市千両首』)

馬をあやつり、鞭でビシビシツしまいにゃ、鞭が絡まり、地面を引きずりまわされる市ンさん。城健三朗、いやいや実兄・若山富三郎との壮絶な(兄弟) ゲンカ。落馬するアニキのワンカットが痛え。

BEST 4 VS 成田三樹夫『座頭市地獄旅』

十文字組(ただす)。いい名前だ。演じるは成田三樹夫。いい俳優だ。市と道中を共にするにつれ、心魅かれてゆくパターン。歩きながら棋譜を頭に浮かべて両者、“死”の詰め将棋対決。王手!チャリン! 見事な一手。

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敵役、成田三樹夫さんについての記事はこちらにあります。

BEST 5 VS ジミー・ウォング『新座頭市 破れ!唐人剣』

市が転がる。ジミー・ウォングか飛ぶ。これぞ元祖・異種格闘技。舞台となった岩肌のせいか、仮面ライダーのクライマックスを思わせる。それにしてもジミー勝利バージョンの映像、どこかに残ってないか。

轟

映画秘宝2003年10月号掲載記事を改訂!

館理人
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勝新太郎関連記事はこちらにあります。よろしければお立ち寄りください。

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勝新太郎情報!

勝プロが製作した勝新太郎作品4つが、2020年10月18日に初DVD化発売です。