役者・成田三樹夫を出演代表作とともにご紹介!
『座頭市』でのクールな仇役浪人、TVドラマ『探偵物語』での「工藤ちゃ〜ん」も!
「今度、生まれてくるときは、“人間”はイヤだ。便所の脇の、陽の当たらないところに生えてる、なんとか草みたいなもんでいいし……ま、何でもいいんだ。だけど“人間”はゴメンこうむるわ」(1978年「ムービー・マガジン」 No.12)
高平哲郎氏のインタビューにこう答えていた成田三樹夫サン。その演技同様、とてもニヒルな人だったのだ。
大映時代、バイプレーヤーとしての代表作は無数にある。例えば『座頭市地獄旅』(1965年)。友情を深めた市(勝新太郎)とラスト、暗譜で将棋を指しながら、詰めの一手と同時に刀で勝負! クールでスマートな浪人・十文字は見事な仇役だった。
関連記事として、『座頭市』シリーズの敵キャラをフィーチャーしたレビューはこちらにあります。
『座頭市』シリーズについては、『座頭市』のレビューにてご紹介しています。
『ある殺し屋』 (1967年)も外せないだろう。凄腕の殺し屋(市川雷蔵)に心酔しつつも、機を見て裏切ったり、その一挙手一投足が魅力的。
市川雷蔵については、こちらでご紹介しています!
大映では各シリーズでフル稼働。主演作では珍品『怪談 おとし穴』(1968年)もあった。
ダイニチ映配『新宿アウトロー・ぶっ飛ばせ』(1970年)では黒スーツに身を包んだ殺し屋役が強烈で、大映倒産後では『仁義なき戦い』シリーズの村岡組若衆頭・松永弘が当たり役か。
以後、東映実録路線になくてはならぬ存在になる。『女囚さそり けもの部屋』(1973年)の片腕切断されちゃう悪徳刑事役も忘れ難い。
そして松田優作主演のTVシリーズ『探偵物語』(1979年)での服部刑事役。「工藤ちゃ〜ん」のセリフ回し! その鋭い眼光とドスのきいた声はコメディ作品にも活かされていく。
松田優作については、こちらでご紹介しています。
深作欣二監督とは相性良く、呼ばれれば何でも出た。『柳生一族の陰謀』では白塗りの公卿にして剣豪の烏丸少将文麿を怪演。『宇宙からのメッセージ』(ともに1978年)では面妖なコスチュームを身につけ、今度は顔面を銀色に塗りたくった。
一転、熊井啓監督の『海と毒薬』(1986年)では非情な助教授役。これは太平洋戦争末期、とある大学医学部で米軍捕虜に行った生体解剖実験をテーマにした作品で、硬軟どちらもイケた。
『海と毒薬』は出演:奥田瑛二、渡辺謙、岡田眞澄ほか。
ちなみに冒頭のインタビューだが、成田サンはこんなふうに続けている。
「……いま、言ったこと書かないで。こりゃちょっと気障だ。 (略)映画俳優が、吐きそうな言葉だ。書かないで。イヤだ」
そう、彼は、含羞の人でもあったのだ。
映画秘宝2010年11月号掲載記事を改訂!