こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1983年
監督・脚本:森田芳光
出演:岡本かおり、太田あや子、宮脇康之、大橋範子、三崎奈美、森田日記、吉川遊士
森田芳光監督作、かつての大スターチャイドル・ケンちゃんの本気映画!
(轟夕起夫)
たった1本の映画が――人生を思いも寄らぬ方向へと導いてしまうことがある。それは観客サイドだけでなく、もちろん製作者サイドにも起こりうる不測の事態だ。
例えば『(本)噂のストリッパー』というこのロマンポルノ。かつて名子役として人気を博したひとりの俳優にとって、これはまさしく“運命の映画”なのであった。
まだ〈チャイドル〉なんて言葉のなかった1960年代。
世紀が変わった頃には死語になりましたネ、チャイドル。子役アイドルのことをこうやって呼んでいた世紀末がありました。
映画にTVに大活躍し、7才のときから始まった主演作『ケンちゃん』シリーズでその俳優、宮脇康之はお茶の間のアイドルとなった。絶大なる人気ぶりといったらもう、ほぼ同年代の俺から見ても当時羨望のマトであった。
シリーズの舞台が寿司屋、ケーキ屋、おもちゃ屋に、レストラン、そば屋、フルーツパーラーと毎回変わっていくのもステキで、
「カアチャン、なんで俺を“宮脇康之”に産んでくれなかったァ!」
と恨めしく呟いたもんだが、さすがにシリーズ最新作『フルーツケンちゃん』の頃などは観ているはずもなく、
「まだやってんだ、ケンちゃん……」
と、同情とねぎらいの気持ち。1976年のことで、すでに15才になっていた。
『(本)噂のストリッパー』は堀越学園卒業後に、そんな宮脇康之が“脱=ケンちゃん”を目指して出演したロマンポルノである。
監督には劇場デビューしたばかりの気鋭の森田芳光。
森田監督が本作を撮ったのは、『の・ようなもの』(1981年)の翌年でした。
森田監督、その後に松田優作主演『家族ゲーム』(1983年)、薬師丸ひろ子主演『メイン・テーマ』(1984年)、深津絵里主演『(ハル)』(1996年)、役所広司主演『失楽園』(1997年)、『武士の家計簿』(2010年)、『僕達急行 A列車で行こう』(2012年)などなど数々の話題作を手掛けます。
森田監督については記事もあります!
イメージチェンジを図るには申し分のない企画だった。事実、映画の出来は良かったのだ。彼が演じてみせたのは、ストリッパー(岡本かおり)に片思いする純朴なアルバイト学生。
岡本かおり(現・岡本椛里)さんは、この後レーサーとして活躍、パリ・ダカール・ラリーを完走します。
別の女性を抱いて心の隙間を埋めていたのだが、そのストリッパーがマナ板ショーを始めたと知り、相手役に立候補。念願のセックスへと突入するものの向こうにとってはただのお仕事! 夢に生きる男の痛いところをクールに刺激する作品だ。
宮脇康之さんも芸名を変更、現・宮脇健です。
宮脇康之、20才のときの大勝負。で、彼の自伝『名子役の虚構 ケンちゃんの真実』を繙いてみると、
「─略─よし、これが呼び水となって、再び仕事が入るようになるか。それとも芸能界から見放されることになるか。どっちか一つに賭けてみよう─略─」
結果は見事に後者だった。作品にも彼にも罪はなかった。つまり、世の偏見に押しつぶされたのだ。
それにしてもこの自伝、スゴイ内容です。帯からして
「芸能界史上最高の名子役の誰も知らなかった悲痛な舞台裏、ケンちゃんのイメージを守るためだけに、両親が離婚、兄が自殺未遂をしても、僕たちは最良の家族を演じ続けた…」
子役の受難となると、実の両親が法廷で息子のギャラを奪い合うに至った『ホーム・アローン』(1990年)のマコーレー・カルキンがすぐ連想されますが、彼は『危険な遊び』(1993年)で子役時すでに悪役に挑戦していたんですよね。
チャイドル、必読の書である。
チャイドルは死語です。大切なので2度言いました。
ビデオボーイ1998年5月号掲載コラムより!
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