日活ロマンポルノおすすめ復刻コラム『暴る!』ハードボイルド派・長谷部安春監督作

館理人
館理人

こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。

館理人
館理人

その前にロマンポルノ解説を少々。

館理人
館理人

ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。

詳しくはこちらで紹介しています。

館理人
館理人

前置き以上!

あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。

データ

1978年
監督:長谷部安春
出演:八城夏子、青山涼子、今井健二、花上晃、岡尚美、椎谷健治、加藤寿、八代康二、島村謙次、石山雄大、田畑喜彦、伊豆見英輔、本田博太郎、大平忠行、賀川修詞、戸塚孝、新井一夫
脚本:桂千穂、長谷部安春 音楽:ジャノ・モラレス 助監督:根岸吉太郎

期間限定

日活ニューアクションのハードボイルド派、長谷部安春監督作

(轟夕起夫)

 走る車。女がひとり。BGMは「マイルストーン」似のクール・ジャズ。

 サングラスをかけた女の横顔が画面右に配置される。その左側にはタテ組みの、3つの白文字が静かにこう浮かびあがる──。

 暴る!

 するとひと呼吸おいて、血の色をしたルビがワンポイント、的確にレイアウトされるのだ。すなわち、こんな風に。

 る!

 というわけで、結論。タイトルデザインは映画の“前戯”である。

 やった・・・のは長谷部安春監督だ。

 日活ニューアクションのハードボイルド派。ロマンポルノを手がけても、たとえば『暴行切り裂きジャック』(1976年)では、自分のクレジットを切り裂いて、真っ二つにしちゃうという遊び心を忘れない。あれも長谷部監督ならではのスタイリッシュな前戯であった。

館理人
館理人

長谷部監督の映画では『野良猫ロック』シリーズ、『女囚さそり 701号恨み節』『あぶない刑事』などがあります。

 では肝腎の、本番のほうはどうなっているのか。やはりタイトルに注目しよう。『暴られる!』ではなく『暴る!』。つまり「暴る側」を描いた、まるで男優辞典みたいな映画なのだ(脚本は桂千穂との共同)。

 まず冒頭。山道にてトラックがパンクしている。車を止める女。運転手はジャッキを貸りたお礼に、彼女を襲って犯す。

館理人
館理人

か、借りたお礼、って!

 この運転手を演じているのが椎谷建治である。『蘇える金狼』(1979年)や『戦争の犬たち』(1980年)、『極道の妻たち・最後の戦い』(1990年)にも出演した、高倉健をうーんとニヤけさせた感じのイイ男だ。

 場面変わって。女は警察に申し出るのだが、そこで「パンツは脱いだの、脱がされたの?」「男は勃起していたんだね、どうなの?」とネチネチ訊問する刑事が石山雄大。

 この人もイブシ銀のバイプレイヤーなのだが、何といっても長谷部監督の傑作、アウトローな男に扮して主演を務めた『レイプ25時 暴姦』(1977年)が最高。とはいえ最後には死体となり、トンカチで前歯を砕かれ、野郎どもにナニを突っ込まれてフェラさせられる、という、書いているだけで「痛え〜」役だったが……。

 話を『暴る!』に戻そう。エンストし、途方に暮れている女の前に現れるのがガソリンスタンドの店員。演じるは、出ました若き日の本田博太郎! 博太郎は法外な修理代をふっかけて「払わなくてもいいから、なっ、な」と女を押し倒す。

館理人
館理人

どーゆー展開…。ところで出演作多彩多数の本田博太郎さん、近いところでは、押井守監督の青春アクション『東京無国籍少女』に出ています。

 さらに病院の医師やら、取り調べ中の刑事たちに女は暴られるのだが、その刑事のひとりが東映ほか各社、凄みある悪役で名を売った今井健二。豪華な男優陣だ。

館理人
館理人

今井健二さんも出演作多数ですが、前出の『蘇える金狼』にも出演していますヨ。

 ところで、たった2日の物語でヒロインは、理不尽にも彼らに何回暴られたのか? 各自で数えて、大いなる不条理さを反芻すること。それがこの映画の“後戯”となるのである。

(轟夕起夫)

館理人
館理人

補足! この女性、暴られっぱなしじゃなく反撃もします、ここ大事!

轟

ビデオボーイ1999年9月号掲載記事を改訂!

館理人
館理人

Amazonプライムビデオではレンタルタイトルになっています!(2020年10月現在)

館理人
館理人

長谷部監督のロマンポルノ作品『暴行切り裂きジャック』については、こちらにレビューがあります!