こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1979年
監督:鈴木則文
出演:波乃ひろみ、土門峻、朝霧友香、日向明子、八城夏子、名和宏、菅原文太(友情出演)
脚本:大和屋竺 音楽:田口正幸 原作:佐藤まさあき
その昔、ヘドバとダビデてな歌手もいましたナ
(轟夕起夫)
「1970年代劇画の残虐非道の極致!」
そんな派手派手しいコピーとともに復刻された鬼才・佐藤まさあきの『堕靡泥の星』(アスペクト刊)。
事実、その惹句に偽りはない。ナチスが占領下、ユダヤ人に強制的に刻印した紋章〈ダビデの星〉。
「堕靡泥の星」は、漫画雑誌「漫画天国」(芸文社)で連載(1971〜1976年)されていた漫画です。
主人公は、アウシュヴィッツ捕虜収容所の惨劇の告白本『夜と霧』でオナニーしちまう恐るべき男、神納達也だ。人間本来の姿は悪にある――と女たちを地下室に監禁し、陵辱陵辱陵辱の嵐。酸鼻極まりない光景がとめどもなく目の前で繰り広げられる。
と、ここまではイントロ。
本題は映画化された『堕靡泥の星 美少女狩り』のほうである。
です。
監督は鈴木則文。
え〜!? あの『トラック野郎』シリーズの天才が? そう。理由のひとつは『鈴木則文』『伊賀のカバ丸』……と、コミックの映画化といえば則文、ってちょっと違うだろ。
『トラック野郎』シリーズは、菅原文太さんと愛川欽也さんが主演した映画シリーズ。10作品が作られました。
鈴木則文監督によって実写映画化された原作野球漫画「ドカベン」は文庫で全31巻。テレビアニメとしても長く愛されました。
鈴木則文監督実写版映画『伊賀野カバ丸』には真田広之さんが出てました! 映画主題歌も歌ってます!
じゃあデビュー当時の多岐川裕美に鞭打ち、ハダカにひんむいた『聖獣学園』(1974年)からの流れ、っていうのはどうか。ヒロインに波乃ひろみ(たしか1975年ミス日本では?)を持ってくるあたりに則文の趣味が反映されているのかもね。
さらに因縁深いのが、則文がロマンポルノに先駆けて、日本の“ポルノ映画”第一号『温泉みみず芸者』(1971年)を監督していること。つまりロマンポルノ初の他社監督となった本作は、〈東映〉ポルノのパイオニアからの“お礼参り”でもあったのだ。
初の他社監督ってことは、それまでは日活所属の監督によって作られてたわけですね。
則文式の、復讐戦の一例を挙げよう。
な、なんと友情出演・菅原文太!
先の『トラック野郎』の菅原文太さんですね?
それは映画の中盤、思いもかけない形で実現する。激しい陵辱シーンの後、突然場面が夜に変わり、ジョーズ(!)のペイントを背負ったデコトラが姿を現すや、助手席に座ったオヤジのこんな声が──。
『トラック野郎』の菅原文太さんですね。
「ホントだよ。お前、おなごのアソコがなぁ、上(ウワ)つきかそうでないか、いいか、鼻で見んだよヘッヘー。ダンゴっ鼻はよくねえしよ、たれっ鼻はもっとよくねえんだヘッヘッヘー」
「女も鼻で見んのか!」
『トラック野郎』の長距離運転手、星桃次郎こと菅原文太さん。
オヤジのエロ話に興奮した運転手は、遅ればせながら自己紹介する。
「オヤジよ、俺、星桃次郎っていうんだけど、今日は勉強になったなあ、アハハハハ」
ん? 役名で登場?
『トラック野郎』の桃さんが映画をしばしジャック! 東映が日活ロマンポルノを蹂躙! これぞ映画による映画へのSM行為だ!
自由すぎますね、鈴木則文監督。いや日活ロマンポルノが自由すぎるのか。
が、そんなことはおかまいなしに、さらに桃次郎はカメラ目線で、
「人生、勉強勉強! 今日はいいヒト乗せたよなあ〜」
いやあ、ボクちんこそ大変勉強になりました。則文先生に敬礼!
いいんでしょうか、オチが『トラック野郎』で。
ちなみに見出しだけ登場のヘドバとダビデ、「ナオミの夢」は1971年のヒット曲です。
月刊ビデオボーイ2001年10月号掲載コラムより!
ちなみに菅原文太・トラック野郎の関連記事、こちらにあります。
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ロマンポルノを鑑賞するためのサービスについて、関連記事はこちらです!