竹内結子主演映画『いま、会いにゆきます』は奇跡のチームが制作したファンタジー&時代の標!その理由を徹底解説!!

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館理人
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竹内結子さんを偲び、この映画記事を復刻します。彼女が参加した素晴らしい映画のひとつが『いま、会いにゆきます』。

映画共演後、中村獅童さんとの結婚と離婚があったこともあって、話題に上がることが多い映画ですが、純粋に秀逸なファンタジー映画として語りたいです。

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監督は土井裕泰さん。TBSの演出家で、ドラマは「青い鳥」「逃げるは恥だが役に立つ」「凪のお暇」などを手掛けています。

ちょっと先の新作映画に『花束みたいな恋をした』があります。菅田将暉&有村架純主演、2021年公開予定です!

『いま、会いにゆきます』の美術監督は『キル・ビルVol.1』『ヘイトフル・エイト』など、世界でも活躍中の種田陽平さん。

おふたりのインタビュー記事も含んだ深掘り解説記事となります!

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テレビ局が映画を制作し、ヒットを飛ばしはじめた時期の潮流を作った映画でもありましたので、そのへんの話も!

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ちなみに、ネタバレに配慮した記事ですので、これから観たいかも…な方でも読み進めていただいて大丈夫です♪

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『いま、会いにゆきます』概要

STORY

1年前に妻・澪に先立たれた巧は、一人息子の佑司と散歩中に澪と再会する。だが、濡はすべての記憶を失っていた。巧は澪に自分たちの恋の歴史を語り、2人は再び恋におちる。そして6週間後…。

DATA

2004年
監督:土井裕泰 脚本:岡田惠和 原作:市川拓司
美術:種田陽平 音楽:松谷卓 
出演:竹内結子(秋穂澪)、中村獅童(秋穂巧)、武井証(秋穂佑司)、
浅利陽介(高校時代の巧)、平岡祐太(高校生の佑司)
大塚ちひろ(高校時代の澪)、
美山加恋、森田正光、岡田浩暉、田中圭、
市川実日子、You、松尾スズキ、小日向文世、中村嘉葎雄

館理人
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駆け出し時代の田中圭さんも出演してますね!

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さて、まずは簡単な映画紹介記事です!

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『いま、会いにゆきます』レビュー

(轟夕起夫)

最後に訪れる映画的快感

 ここに登場するのは、猟奇的な彼女ならぬ、寓話的な彼女である。そう、夫と6才の息子を遺して旅立った彼女は、「1年後の雨の季節に帰ってくる…」という生前の予告どおりに、2人の前に現れる!

 彼女の名は、秋穂澪。その正体は幽霊か、それとも…? なぜ「雨の季節に帰ってくるのか? 雨がやむと彼女はどうなるのか?

 次々とクエスチョンが頭をよぎる、まさに寓話的な作品世界を、ヒロインの竹内結子は、透明感あふれる表情や仕草で見事に支えてみせる。

 一方、夫=中村獅童もスゴい。彼の抑制のきいた的確な演技は、妻が生と死の境界線を行き来するというあり得ない物語に、自然に観客を引き込んでいく。

 そして映画初監督となるTVドラマ界のエース、土井裕泰。その手腕は、現在と回想を巧みに交差させるタイムパラドックス感、それと気づかせぬまま張り巡らせた伏線などで冴えを見せる。

 主人公と監督が丁寧に紡いだ物語は、後半、すべてのクエスチョンに答えを導き出す。その瞬間、観客は『猟奇的な彼女』やティム・バートンの名品に匹敵する昂揚=映画的快感を味わうはずだ。

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『猟奇的な彼女』のヒットをうけ、2008年には日本版でドラマも制作されました。草彅剛、田中麗奈主演、演出は土井裕泰なのでした!

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ティム・バートン監督の近作には『ダンボ』があります!

泣ける、から清々しい、昇華させた才能たちの手腕

 緑の森。赤い傘。トンネル。雨と水たまりと涙。アーカイブ星。そしてカート・ヴォネガット・ジュニア──。

「ジェイルバード」、「タイタンの妖女」といった小説が引用されていることでもわかるように、原作は、この現代アメリカ文学の第一人者の影響を隠してはいない。映画版も、そこは当然踏襲しているが、泣ける小説として有名な原作を、土井監督は「清々しく、笑顔で劇場を後にできる」映画にした。

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カート・ヴォネガット・ジュニアはアメリカの小説家。1976年の作品『スラップスティック―または、もう孤独じゃない!』からはカート・ヴォネガットを名乗っています。

 この6週間の奇蹟の寓話を脚本化したのは岡田惠和。「彼女たちの時代」(フジテレビ)、「ちゅらさん」(NHK)など、繊細なタッチで知られる名手だが、土井監督とは「ランデヴー」(TBS)ほかのドラマで名タッグを組んでいる。今回も、そのコラボレーションは見事な化学反応を見せた。

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岡田惠和脚本映画としては、新作に『おとなの事情 スマホをのぞいたら』があります。2021年1月8日公開です!

 映画は原作以上に『いま、会いにゆきます』というタイトルを鮮烈に印象づけるが、それは夫・巧の目線から妻・澪の目線へと、いつの間にか視点を移動させてしまう構成力に負うところが大きい。

 さらに、物語に奥行きと豊かさを与えているのが種田陽平の美術だ。特筆すべき才能が結集して構築した寓話世界。ぜひ足を踏み入れてほしい。

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『いま、会いにゆきます』原作

 原作はインターネット小説「Separation」(のちに「14ヶ月〜妻が子供に還っていく」としてドラマ化)で作家デビューを果たした市川拓司の同名小説。

 2003年3月の発売以来、全国の書店員らの手書きのPOP(推薦文)やロコミなどによってじわじわと部数を伸ばし、発売から1年後には累計で45万部を記録したベストセラーだ。

 巧と澪の間で交わされる、最初は決してスムーズではない会話。だが、物語の中盤から、2人の言葉は一気に熱を帯びて読む者にたたみかけてくる。

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では!ここからは演出と美術について深掘り! 監督と美術監督のコメントにてどうぞ!

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監督・土井裕泰 インタビュー

プロフィール

ドイ・ノブヒロ
1964年生まれ。
TBS入社後、ディレクターとして数々のドラマを演出。「愛していると言ってくれ」、「青い鳥」、「ランデヴー」「Beautiful Life」「GOOD LUCK!!」「マンハッタンラブストーリー」「オレンジデイズ」「空飛ぶ広報室」「眠りの森」「S -最後の警官-」「コウノドリ」シリーズ 「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」「カルテット」など。

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記事はすべてご本人のコメントで構成しています。

(取材・構成 轟夕起夫)

適演を引き出す巧みな演出

土井 竹内結子さんには、手をつないだり肌で感じたこと、子供を抱きしめた時の感覚を大事にしましょう、と。普段の時の彼女の潔さは秋穂澪というキャラクターに通じていると思います。

 少し意識したのは『猟奇的な彼女』や『ラブストーリー』などの韓国映画。展開的にお客さんを気持ちよく裏切る一方で、エモーションの面では裏切らない気持ちよさも与えてくれる。

 今回はそんな、ハンドメイドで温もりのあるアナログなファンタジーを目指すにあたり、種田陽平さんの美術が非常に大きな役割を果たしています。

 表向きは恋愛映画ですけど、父と子、家族3人の物語でもあります。僕にも子供がいるんですが、例えばもし僕が妻と出逢わず、そして結婚していなかったら「この息子は存在していないんだなあ」と思う時があるんです。

 みんなそんなにドラマチックな人生を送っているわけではないけれど、でもどこかで運命みたいなものが存在してるわけで…この映画で、そんなことを感じてもらえたら嬉しいです。

テレビドラマの演出家が撮る映画

土井 撮るという仕事として行う作業に関しては、テレビでの演出も映画を監督することもほとんど違いはないですからね。気負いとか戸惑いは全くありません。

 ただ、映画だからできることっていうものがあるとは思っています。『いま、会いにゆきます』はとてもファンタジー色が強いから、見てくれる方にとって日常に近いテレビドラマだとリアリティーなどの面で難しいかもしれない。

 でも、映画という形式なら、心象風景を描写して伝えることができるんじゃないか、と思うんです、寓話として。セットも含めて、独特の別の世界を構築できるはず…という思いはあります。脚本段階から、そうした映画ならではの工夫を重ねているから、正直、大変ではあるけれど楽しいですね。

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美術監督・種田陽平 インタビュー

(取材・構成 轟夕起夫)

プロフィール

タネダ・ヨウヘイ
『スワロウテイル』『不夜城』『悪人』『ステキな金縛り』『清洲会議』など数々の作品の美術を監督。海外の映画では『キル・ビルVol.1』や『ヘイトフル・エイト』などにも参加。国際的に高い評価を得ているアートディレクター。

寓話性を高めるセット&美術

種田 撮影現場では、例えば宮崎駿さんの『となりのトトロ』の美術には負けないぞっていう気持ちでやっていました。

 あのアニメは誕生して10数年経っているんだけど、未だに寓話性が色あせない。ならば実写でも、架空の町を舞台に、そういう世界にトライできたらなぁ、と。試みるのが難しいからこそ、貴重なチャンスを頂けた、と思います。

 脚本で好きだったのは、泣きの映画で終わっていないところ。だからテーマ的にも、希望が垣間見える家を意識して作りました。キーとなる廃工場は、アンドレイ・タルコフスキーの映画に触発されています。そこは主人公の息子・佑司がいろんなものを隠している場所で、秘密基地プラス異次元の扉みたいなイメージですね。寓話の入り口として、重要なセットです。

館理人
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アンドレイ・タルコフスキーの映画に、『惑星ソラリス』や『ノスタルジア』などがあります。

『となりのトトロ』に倣ったといえばそうなんですが、今回の美術はリアルに時代を追いかけるのはやめているんです。一体いつが軸となっているのか分からないようにして、場所もボカしている。それでもある種の郷愁が漂っていて、何ていうのか、映画が醸しだす脚色された懐かしさを、共有してみたいというのはありましたね。

 観終わったときには、過去と未来がグルっとひっくり返って、結構すがすがしい気分になれる。そういう意味で、今作はとても可愛い映画ですよ。

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『いま、会いにゆきます』細部の見どころ

(轟夕起夫)

キャスティングの妙

 主人公の巧と澪、そして6才の息子・佑司(『丹下左膳 百万両の壺』で観客の涙をさそった武井証)を取り囲む多彩な共演者たち。

 土井監督が信頼を寄せる、面白い顔ぶれが集められた。

 まず巧の同僚で、実は映画のキーパーソンに市川実日子。次に滋味深い3人、小学校の先生役のYou、洋菓子店・店主役の松尾スズキ、巧の良き理解者である医師には小日向文世

 いずれもフツーの演技をしているのに、一癖あって個性的、いろいろとバックボーンを想起させる。

 さらに高校時代の巧と澪に、浅利陽介(獅童クンにそっくり!)と大塚ちひろ。巧の上司に中村嘉葎雄(獅童クンの実の叔父)という遊び心あるキャスティングもお見事。

しずくのこだわり

 映画は雨の季節に訪れた6週間の奇蹟を描いている。そこで細心の注意が払われたのが雨の演出。

 大粒に小粒、霧のごとき状態…と、雨の雫が落ちたときの感じや、画面の後ろの木の葉の濡らし方に至るまで、ありとあらゆる方法で雨の場面には工夫が施された。

 そんな中、土井監督が撮影の本番ギリギリまで悩んだのが、「そして零は消えてしまった」としか脚本に記されていなかったシーン。

 雨の季節が終わる、という重要なシークエンスで、彼女に降りそそぐ最後のひとしずくをどう撮るか。

 最終的に、ここは唯一CG合成を使ったシーンになったが、編集してみるとそれはイメージ的に、巧の涙のようにも見えたという。

小道具の絵本

 映画の世界観を彩る、澪が描いたという劇中の絵本。これは美術監督・種田陽平さんの監修のもと、こじまさとみ氏が作画を担当した。

 種田さん曰く…「こじまさんは7〜8人の中からオーデイションで決めました。画調が明るいんだけど、少し哀しくて、でも暗すぎない…両面を持っているところが良かったですね。実は、小道具の絵本の装丁と家のセットの装飾が同じ色になっているんです。これも寓話性の構築のためですね」

ファンタジー演出のルーツ

 土井監督が子供の頃に影響を受けたドラマは、その作風からは意外な、久世光彦演出のテレビドラマ「寺内寛太郎一家」や「ムー一族」。

 が、理由を聞いて納得。笑わせ泣かせて、観る者をシッカリもてなすから。映画では同郷、広島出身の長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』。

 職業としての演出家を初めて意識したという。同じ東宝マークで、ある意味、こちらもファンタジー、という共通点も。

館理人
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さて次。この映画『いま、会いにゆきます』が公開された頃の話です。ちょっとその時代感をご紹介!

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『いま、会いにゆきます』誕生時の映像界背景

 映画製作にテレビ局が積極的に乗り出し、民放ドラマで活躍するディレクターの映画監督進出が増えてきた時代だった。

 自社のドラマで育ち、腕を磨き、ヒットを飛ばした才能を登用する試み。そんな中、映画界への傾斜目覚ましいTBSからもひとり、映画化に挑んだのが「ビューティフルライフ」「GOOD LUCK!」「オレンジデイズ」などのディレクター・土井裕泰だ。

 この流れにはひとつ、「踊る大捜査線 THE MOVIE」の連続ビッグヒットが影響していることだろう。

 制作会社「共同テレビ」出身の本広克行は当時すでに、完全に映画監督として認知されていた。実は共同テレビ時代の先輩、若松節郎も『ホワイトアウト』で特大ホームランをかっ飛ばしている。『いま、会いにゆきます』と同年、『笑の大学』を監督した星護も先輩ディレクターで「2人に続け!」という感じだ。

 テレビ出身の監督のほとんどがフジテレビ系で活躍しているのは、テレビ局として最も早く映画界に参入したフジの強みだ。1969年、第1回製作『御用金』を演出したのは当時フジの社員だった五社英雄。

 そもそも彼は、人気テレビ時代劇「三匹の侍」を同じキャストで1964年に映画化し監督デビューした。いわば、元祖 THE MOVIE男、なのだ。

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五社英雄監督映画に、『鬼龍院花子の生涯』
『極道の妻たち』『吉原炎上』などがあります!

 五社英雄は名前で観客を呼べる映画監督になったが、昔も今も一般に、監督名で映画館へと足を運ぶ観客はそう多くはない。だが、民放ドラマで活躍するディレクターたちはヒット番組が顔となる。

 彼らが映画を作った場合、その実績で、観る側に事前にイメージを発信できるメリットがある。そして多くに支持されれば、五社英雄や本広克行のように映画監督は誕生する。つまり、観客がTVディレクターの中から映画監督 を作っていく。

 『いま、会いにゆきます』は、そんな潮流の中にあった映画である。

轟

TV Taro 2004年10月号、12月号掲載記事を改訂!

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