リスペクトする監督のひとりとして黒澤明を挙げる海外の映画監督の多いこと! 『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカスのほかにもたっくさんいらっしゃいます。
てことで、黒澤明監督映画のどこが面白いか、を語るレビューではありません。誰が黒澤明をリスペクトしているかを紹介していく一文
ここに列挙されている監督のほかにもたくさんいらっしゃいますが、改めてその影響力の大きさに驚かされます。
黒澤明プロフィール
1910年3月23日、東京出身。
1936年、PCL撮影所(現・東宝)に入社。
1943年、 『姿三四郎』で監督デビュー。以後、バイプレイヤーを巧みに配しながら、三船敏郎とコンビを組んで数々の秀作傑作を生み出した。晩年は、日本よりも海外からリスペクトされ、1990年にはアカデミー賞特別名誉賞を受賞。1998年9月6日、死去。
黒澤明リスペクトな海外の映画監督たち!
「情熱、ダイナミズム、力強さ、切れ味、スピード、腰が抜けそうな美」。以上は、マーティン・スコセッシが黒澤映画から学んだものだそう。実に的確で素晴らしい要約だ。
まず黒澤は、エンターテイメントの巨星だった。マカロニ・ウエスタンびいきのジョン・ウーが『用心棒』を愛するのは至極当然であり、『マトリックス』の製作者、ジョエル・シルバーにリスペクトされているのもよくわかる(特に『天国と地獄』がお気に入りだとか)。
また、スティーヴン・スピルバーグが言うように、「現代における映像のシェイクスピア」でもあった黒澤は“アートの巨星”だった。
英国のピーター・グリーナウェイが「マクベス」の斬新なリメイク『蜘蛛巣城』を褒めるのはスゴイことだし、黒澤ドキュメンタリーも作ったアレックス・コックスがそれを「シェイクスピア悲劇の最高の映画化」と絶賛するだけでなく、完璧なホラーとしても称えているのが彼らしい。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞外国語映画賞を得た『羅生門』はさすがに人気が高い。
スパイク・リー、デニス・ホッパー、(黒澤の薫陶を得た)ニキータ・ミハルコフ、イエジー・スコリモフスキ、ニール・ジョーダン……etc。
“真実と視線の複数化”を応用した2作、『スネーク・アイズ』のブライアン・デ・パルマ、『花様年華』のウォン・カーウァイも、なるほどという感じだ。
デニス・ホッパーは俳優として参加の映画が多いですが、監督作に『イージー・ライダーなどがあります。
リュック・ベッソンは、ヒューマンな『赤ひげ』に魅かれるそうだ(群衆シーン好きゆえか『影武者』も)。
変わったところでは『デルス・ウザーラ』のエンキ・ビラル。
ジョン・シュレシンジャーやマイク・リー等とともに、『狼たちの街』『007 ダイ・アナザー・デイ』などを監督したリー・タマホリが『生きる』を絶賛しているのも面白い。
サム・ペキンパーにフランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス……『七人の侍』は映画の偉大な教科書だが、マネは不可能だ。黒澤は、テーマとアートとエンターテイメントを見事合致させた巨星だった。
(轟夕起夫)
黒澤明ピックアップ作品データ
『生きる』
1952年 144分 監督・脚本:黒澤明 出演:志村喬、日守新一、田中春男、千秋実、左ト全、ほか
市役所の市民課長・渡辺は模範的な役人だったが、自分の余命が少ないことを知り、人生の最後に本当に市民の役に立とうと公園建設に情熱を注ぐ。
『蜘蛛巣城』
1957年 111分 製作・監督・脚本:黒澤明 出演:三船敏郎、山田五十鈴、ほか
シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えた、戦国武将の一代悲劇。圧巻のラスト・シーンに注目。
『赤ひげ』
1965年 187分 監督・脚本:黒澤明 出演:三船敏郎、加山雄三、ほか
山本周五郎の原作をもとにした、江戸時代の診療所が舞台の人情ドラマ。三船がヴェネチア映画祭主演男優賞受賞。
『デルス・ウザーラ』
1975年 144分 監督・脚本:黒澤明 出演」ユーリー・サローミン、ほか
シベリアを舞台に力強い男たちのドラマを描く。旧ソ連映画界の全面的な協力体制のもと、念願の企画を映画化。
『影武者』
1980年 181分 制作・監督・脚本:黒澤明 出演:仲代達矢、山崎努、ほか
命を落とした武田信玄に代わり、影武者に仕立てられた盗人。だが彼にとって信玄の存在はあまりにも大きかった。
月刊スカパー!2003年1月号掲載記事を改訂!
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