『インフェルノ』の出演はアイリーン・ミラクル、他。ではデビューをどうぞ!
監督はイタリアン・ホラーの鬼才、ダリオ・アルジェント
ニューヨークに住む女流詩人・ローズは、『三母神』という古書を読み、自分の住むアパートが魔女のために建てられたものではないかと疑い、単身調査を始めるが……。
アルジェント映画の音楽といえばゴブリンだが、本作ではキース・エマーソンのシンセ音楽が神経を逆撫でし、不安を煽る。
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イタリアン・ホラーの鬼才にして重鎮ダリオ・アルジェントが1980年に発表した『インフェルノ』。
“魔女三部作”の第2弾に当たり、1作目はあの『サスペリア』(1977年)。
完結編は、時を経て登場の『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(2007年。娘のアーシア・アルジェント主演!)。待望作の注目度は高く、トロント国際映画祭にてプレミア上映された。
というわけで、『サスペリア・テルザ』の登場によって再び注目を集めることとなった『インフェルノ』だが、そのアウトラインは古書『三母神』と失踪した作者をめぐり、ローマとニューヨークで連続怪奇殺人が起こる、とでも書けばよいか。
実際にはアルジェント作品らしく「怖がらせるためには何でもあり」な演出満載で物語は支離滅裂。
だが、水没した地下室にヒロインが飛び込み、腐乱死体が浮かんでくる冒頭から人工的に作り込まれた幻想世界が展開。本作は論理では測れないお伽噺なのだ。
ショックシーンも豊富で、切断される首、眼球くりぬきなどは序の口、大量のドブ鼠に襲われた老人が近所のホットドック屋のオヤジに助けられるかと思いきや、なぜか包丁でトドメを刺される場面はナンセンスを極めて衝撃的だ。
古いゴシック建築に照明の妙……ディテールに凝った素晴らしきハッタリズムと、夢魔を再現するシュールレアリスム的魅力が同居した映画。
公開時のポスターには「このショックは目で、耳で、心臓で感じて下さい!」とのコピーが躍ったが、大らかなハートで楽しみたい。
週刊SPA!2007年10月2日号掲載記事を改訂!