『オン・ザ・ミルキー・ロード』(2016年)はエミール・クストリッツァ監督(出演も!)、モニカ・ベルッチ出演!
レビューをどうぞ!
鬼才クストリッツァの狂騒的なごった煮感がすごい
【概要】
映画製作年現在61歳! カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールの2度受賞をはじめ、世界3大映画祭のすべてで主要賞を獲得しているエミール・クストリッツァの集大成的作品。
全編動物が大活躍の映画だが、体重300キロを超える大熊に口移しでオレンジを分け与えるシーンほか、ほとんどCGは使っていないとのこと。
【レビュー】
いや〜、やっぱりめっちゃスゴかった! エミール・クストリッツァ監督の9年ぶりの新作、『オン・ザ・ミルキー・ロード』のことである。
クストリッツァといえば旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)出身の最高のクリエイターだが、もしもまだ、彼の作品を一度も体験していないならば、それは不幸でありつつ逆に、「これからの人生に光明が射した」とも言えるだろう。
観ればたちどころに映画の内側へと飲みこまれ、強力な生のエナジーをしこたまチャージされるので。
代表作『アンダーグラウンド』『黒猫・白猫』などから入る手もあるが、「3つの実話に基づき、多くの寓話を織り込んだ物語」(と冒頭に出る)この“最新形”に臨むのもいいかも。
『アンダーグラウンド』は、1人の武器商人を主人公にした6つの話で綴られる、旧ユーゴスラビアの激動の歴史。
『黒猫・白猫』はヒューマン・コメディ!
舞台は、戦乱が続いている架空の国だ。日傘を差し、ロバに乗って銃弾を避けながら、前線の兵士たちにミルクを届ける配達人、これが本作の主人公。
大空を舞う“相棒”のハヤブサを肩に乗せて、紛争下での冒険と、壮大な愛の逃避行を見せてくれる。何と演じているのはクストリッツァ本人!
運命的な出会いを果たし、共に戦地を駆け抜けるのは、“イタリアの宝石”こと国際派女優のモニカ・ベルッチ。とにかくカオティック、奇想天外な面白さが詰まっていて、「次はどうなるの?」とファンタジックな絵本に首ったけになっていた子供時代が甦ることだろう。
キャラの立った人物ばかりか、様々な動物も驚きの行動を取り、祝祭的な空間が現出するのだ。が、その裏側には、ボスニア紛争でツラい経験をしたクストリッツァのもうひとつの心情が流れている。
喜劇と悲劇は紙一重。しかし、シニカルな視点を持ちつつ、基本姿勢はあくまでアッパーに。自ら率いるバンド「ノー・スモーキング・オーケストラ」のミクスチャー・サウンドさながらの、狂騒的な“ごった煮”感が今回も心地いい。
エミール・クストリッツァ監督はバンドではギター担当。バンドは監督の映画のほとんどのサントラを担当しています。
さあ、思い切って飛び込んで、エナジーを充電すべし!(轟夕起夫)
週刊SPA!2018年4月24日号掲載記事を改訂!