実在のロックポップグループ、ザ・フォー・シーズンズの物語。映画よりブロードウェイのミュージカルになったのが先で、日本を含め世界で公演される演目となっています。
2014年のクリント・イーストウッド監督作。レビューをどうぞ!
舞台とは違う、映画ならではの最高のグランドフィナーレにも注目
ファルセットを得意としたフランキー・ヴァリがリード・ボーカル、ザ・フォー・シーズンズの栄枯盛衰を実名で描く。
舞台にも出演した役者陣が好演するなか、マフィアのボス役、クリストファー・ウォーケンがさすがの貫禄。バンド結成に一役買った名優ジョー・ペシの若き日のエピソードも。
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近年、日米の間でこれほど映画版への評価が異なる作品も珍しいのではないか。
アメリカン・ポップグループの最高峰のひとつ、フォー・シーズンズの栄光とバックストーリーを描いた『ジャージー・ボーイズ』。
基になったブロードウェイミュージカルは2006年、本国でトニー賞4部門に輝き、今なおロングランを続ける大ヒット作であるが、クリント・イーストウッド監督による映画版はこのオリジナルの作劇やディテールなどをかなり踏襲しているのだとか。
従って軍配は、アメリカでは圧倒的に舞台のほうに上がり、一方、日本の観客の多くは(評論家も含めて)そうした経緯を知らぬまま、イーストウッドの手腕のみを礼賛したのだった。
慌てて書き添えるが、後者をディスっているのではない。かくいう筆者も舞台を観ておらず、とても大きな口は叩けない。
映画の開幕は1951年。ニュージャージー州出身の4人組の“バンドマンあるある”な「春夏秋冬」の人生を綴ってゆく……のだが、ユニークなのは彼らが劇中突然、独白を始める点。
つまり視点が4つあり、極上のハーモニーの裏側の不協和音を立体的に感じさせ、また、ひとつひとつの出来事の時制のあやふやさ、映画的な創作をもうまく補う。
なぜなら、誰もが自分に都合のいいように物事を記憶しているのだから。実に、隙のない構成である。
が!! 先に「大きな口は叩けない」と言ったものの、多くのものを舞台に負っていても映画版は傑作だと断言したい。時を経て1990年、ロックの殿堂の表彰式で25年ぶりに再会する4人に、映画ならではの最高のグランドフィナーレを用意。
それは、人生の「春夏秋冬」を巡った後の新たな”季節”へと観客を誘う。つまり単なる回想録ではなくエバーグリーンな輝きを4人に与えたのだ。
週刊SPA!2015年2月3日号掲載記事を改訂!
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