『神様のカルテ』の1、2のレビューをまとめてお届けです!
医師で作家の夏川草介の小説を、櫻井翔と宮崎あおい主演で描いた感動ドラマ。いずれも監督は深川栄洋。2は1の続編です。
『神様のカルテ』データ
美しい自然に囲まれた信州を舞台に、地方医療の現実に立ち向かう若き内科医が、愛妻に支えられながら成長していく。
監督:深川栄洋 原作:夏川草介 脚本:後藤法子 音楽:松谷卓
出演:櫻井翔、宮崎あおい、要潤、吉瀬美智子、岡田義徳、朝倉あき、原田泰造、西岡徳馬、池脇千鶴、加賀まりこ、柄本明
『神様のカルテ2』データ
妻の出産を心待ちに仕事へ励む若手内科医が、親友だったエリート医師の変貌と恩師の過労をきっかけに、仕事と夫婦愛を見つめ直す。
監督:深川栄洋 原作:夏川草介 脚本:後藤法子 音楽:林ゆうき 出演:櫻井翔、宮崎あおい、藤原竜也、要潤、吉瀬美智子、朝倉あき、原田泰造
原作は全5巻!
では、レビューをどうぞ!
『神様のカルテ』レビュー
(轟夕起夫)
大女優を本気にさせた深川監督は只者ではない
2011年のハイペースと品質はちょっとスゴい。『白夜行』『洋菓子店コアンドル』に続いて『神様のカルテ』と、深川栄洋監督連続3作が同年公開された。
東野圭吾の原作小説を映画化した『白夜行』、主演は堀北真希、高良健吾。
『洋菓子店コアンドル』の出演は江口洋末、蒼井優。
原作は2010年度本屋大賞にノミネートされ、大賞こそ逃したものの第2位に輝いた話題のベストセラー。
主役は櫻井翔だ。彼が演じているのは長野県松本の地方病院、本庄病院に勤務する内科医、栗原一止。人の生き死にと向きあい、地域医療に取り組んでいる。
栗原は、天然パーマでボサボサ頭、との設定。これ、深川監督が「石坂浩二版の金田一耕助をイメージした」のだとか。
事件に振り回される金田一探偵と、日々、難題に直面している栗原をダブらせたのか!? 面白いことを考えるものだ。
夏目漱石の小説を愛し、喋れば古風な言い回しが飛びだして、いわば“変人”な栗原。大学病院の医局から熱心な誘いがあり、その心は大きく揺れる。
深川監督の演出は粛々と丁寧に。妻役の宮崎あおい、さらには同じアパートに住む仲間たちとの心温まるシークエンスもあるが、安曇雪乃という癌患者を迎え入れての、彼女と織りなすエピソードが一番胸に響いた。
演じるのは加賀まりこ。『洋菓子店コアンドル』にも出ていたが、日本映画史を彩ってきたこの大女優を「さらに本気にさせている!」あたり、深川監督、やはり只者ではないな、と思った。
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T2011年夏号掲載記事より
『神様のカルテ2』レビュー
(轟夕起夫)
すべてをゼロから築き上げた意欲的な新章
映画が始まって「あれ?」と感じるのは、若き内科医・栗原一止役、櫻井翔のヘアスタイルがモデルチェンジしていることだ。前作ではその変人ぶりを示すディテールのひとつゆえのクルクルのボサボサ頭であったのだが、この『2』では実にまっとうな、ナチュラルなものに変わった。
つまり一事が万事、すべてをゼロから築きあげ、新しい作品にしようと試みた深川栄洋監督の意識の表れだ。
主人公の一止は本庄病院に残り、相変わらず24時間365日対応の日々を過ごしている。そこに一止の大学時代の同窓、進藤(藤原竜也)が新任の医師として東京からやってくる。
かつて「医学部の良心」とも呼ばれた親友との再会と衝突が物語の軸に。さらに病院の精神的支柱である貫田(柄本明)がステージIV、末期の悪性リンパ腫で倒れ、恩師の最後の時間に一止は立ち合うことになる。
結果、前作以上に「働くとは何か」「家族とは何なのか」、そして人間の生死という普遍的なテーマを掘り下げた作品に仕上がった。
たとえば言葉で「命の希望のリレー」と書いたとしても、何ともボンヤリしたものにならざるを得ない。が、この映画はそれに明確な形を与えたのだ。モデルチェンジした櫻井翔のヘアスタイルのように。
T2011年夏号掲載記事より