男の、そして父親としてのメンツが雪崩のごとく崩壊するパニック映画『フレンチアルプスで起きたこと』

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館理人
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『フレンチアルプスで起きたこと』(2014年)は注目のスウェーデン人監督によるスウェーデン映画!

館理人
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出演はスウェーデンの実力派、ヨハネス・バー・クンケ、リサ・ロブン・コングスリ、ほか。

レビューをどうぞ!

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北欧映画界のイノベーター(革新者)、リューベン・オストルンド監督が人間関係の惨事を描く!

Photo by Joshua Earle on Unsplash

現代社会の中の人間を見つめ、鋭い洞察力とモダンな映像感覚で“北欧映画界のイノベーター(革新者)”と称されるリューベン・オストルンド監督。

第67回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門審査員賞を受賞。

全米でも絶賛され、外国映画賞最多15冠に輝き、ハリウッド・リメイクも決定した。

館理人
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ハリウッド・リメイク作は2020年にアメリカで公開されました。タイトルは『ダウンヒル』。

監督:ナット・ファクソンとジム・ラッシュ、主演:ジュリア・ルイス=ドレイファス、ウィル・フェレル、ほか。コメディ色強め!

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 世の殿方たちは、この『フレンチアルプスで起きたこと』を作ったリューベン・オストルンド監督に感謝すべきかもしれない。

館理人
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リューベン・オストルンド監督作に、現代美術館のキューレターに起こる悲喜劇を描いた『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などがあります。こちらの作品、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートのほか、各国の映画祭で賞を受けています。

 なぜか? 認めたくてもなかなかできぬ「男の弱さ」ってやつを、堂々さらけ出してくれたからだ。

 5日間のバカンスを過ごそうと、スウェーデンからフランスのスキー場へとやってきた一家4人。

 事件は2日目に起こる。山際の絶景のテラスで昼食を楽しんでいると、爆発音が鳴り響き、目の前の斜面で雪崩が発生!

 それはスキー場側が定期的に音を鳴らし、雪の緩い部分を落とす「安全対策」であったが、予想外にテラスめがけて雪はなだれ込み、観光客はプチパニックに。

 幸い大事には至らず、再びテラスはリゾート気分に包まれる。が、しかしスウェーデン一家だけは違った。

 妻と子供2人は、どっちらけ……。

 一家の大黒柱の取った行動が大いに“問題あり”だったのだ。

 映画はその決定的瞬間を写しだす。すなわち子供を必死に庇おうとした妻に対し、夫が自分だけ先に逃げてしまった姿を!!

 さらに火に油を注ぐのは、言い訳をして「逃げた」ことを認めようとしない態度。

 夫役の俳優のルックスが少し、キーファー・サザーランド=“ジャック・バウアー”に似ていて、タフガイヒーローが、ヘタレな“ジャック・バウアー”に見え、これが本作のポイントを一段と上げている。

館理人
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キーファー・サザーランド扮するジャック・バウアーがテロ組織に立ち向かう24時間を、1時間1話のリアルタイム進行で描く大ヒットテレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』シリーズは、シーズン9にあたる「リブ・アナザー・デイ」まであります!

 もがけばもがくほど男の、そして父親としてのメンツが崩壊してゆく。つまり、男ごころのパニック映画。

 みっともないけれど、バレたら仕方ない。世の殿方よ、もう虚勢を張る必要はなくなりましたよ〜。

 ところで底意地のホントに悪いリューベン・オストルンド監督、男の正体を晒すだけでは終わらず、最後に「雪山のバス」を使ってもうひとつ仕掛けを用意している。

 今度は女性もドッキリに遭う。人間関係の“惨事”の雪崩を描いたディザスター・ムービー。あなたの姿もきっと、そこにあるだろう。

轟

週刊SPA!2016年1月12日発売号掲載記事を改訂!