監督は、有名ブランドを数々手がけるグラフィックデザイナー、マイク・ミルズ。そんなセンスが溢れちゃってる映画をレビューにてご紹介。2005年の作品です。
「オーラの泉」よりも心に染みる!? マイク・ミルズ監督の優しいメッセージ
親指を吸う癖の治らない17歳のジャスティンは、“誰もが認める自分”になるための正しい道を探そうとするが……。
マイク・ミルズ監督は世界のトップクリエイター。
2005年ベルリン国際映画祭銀熊賞〈最優秀男優賞〉、サンダンス映画祭特別審査委員賞〈演技賞〉に輝いたルー・プッチのリアルな佇まいも見モノ。
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その業績は、記し始めたら何ページも費やすことになるだろう。偉才マイク・ミルズ。
人気ブランド「X-girl」のロゴや、ビースティ・ボーイズ、ソニック・ユースのCDジャケ、ミュージッククリップにCM(GAPのミュージカル風のやつ)などなど、グラフィックデザイナー、映像作家として幅広く活躍してきたアーティストだ。
そんな彼が長編初監督にチャレンジした『サムサッカー』。
さぞかしアートな匂いプンプンかと思いきや、そうではなかった。独断的に例えれば、本作は“めちゃくちゃセンスのいい「オーラの泉」”みたいなノリの、染みる映画なのであった。
番組名は「国分太一・美輪明宏・江原啓之のオーラの泉」。ゲストのあれやこれやを、「見える二人」が語るスピリチュアルトークショー。2005年から2009年まで放送されました。
主人公のジャスティン(ルー・プッチ)は17歳になってもサムサッキング=親指しゃぶりがやめられない青年。まだDT(童貞)。
抗鬱剤を飲むことになり、いったんは事態は好転するが、待っていたのはさらにドツボな展開! 画面に向かって「江原啓之と美輪明宏のカウンセリングを受けな」と声をかけたくもなるが、劇中、江原&美輪さんの代わりに登場するのは、キアヌ・リーブス扮するちょいと怪しい歯科医。
彼は主人公にこう諭す。「大切なのは、答えのない人生を生きる力だよ」と。いい言葉だけども、イマイチ抽象的な気も。
だが、そこはマイク・ミルズ。撮影、編集、音楽、どれも卓越していて、真綿に水が染み込むごとく数々の優しいメッセージが心に浸透していく。
スピリチュアルな世界を人に上手く伝えるのはとても難しいワザ。『サムサッカー』は「オーラの泉」など比べものにならないほど、それに成功しているのだ!
週刊SPA!2007年2月6日号掲載記事を改訂!