読む映画リバイバル『天使のはらわた 名美』

再検!日活ロマンポルノ

あの“天使のはらわた”シリーズ第3弾ですわ

(2000年7月号より)

 雨だ。雨の日はキライだ。カラダがべとつき、おまけに気分が鬱屈するからだ。そうだ。こんなときはロマンポルノを観よう。石井隆原作・脚本、田中登監督の『天使のはらわた 名美』。79年作品。

 雨だ。画面の中もやっぱり雨だ。少女が歩いている。男と目があったつぎの瞬間には納屋に連れ込まれている。
「やらせろ、1回でいいからやらせろ」
狂ってる。狂い叫びながら男は少女の下着を剥ぎとり、うしろからつっこむ。なんてことだ。気分が鬱屈する。しかしそれからもどんどん女が犯されていく。用具置き場で、埋め立て地で、死体安置場で……。

 ところが犯されない女がひとり登場する。女性週刊誌「ザ・ウーマン」の美人記者・土屋名美(鹿沼えり)だ。彼女はレイプされた女性たちを追い、“強姦その後”というルポルタージュを雑誌に連載し、人気を集めている。そして犯さない男も登場する。エロ雑誌記者の村木だ(地井武男)。彼はかつては大出版社のエリートだったが、妻を強盗に襲われ、そればかりか、その強盗犯と駆け落ちされてしまったという苦い過去を持っている。なんてことだ。外は雨だ。ますます気分が鬱屈する。

 ところで村木は“狂った女”を知っていた。クロロホルムを嗅がされ、手術台上で裸にされて、さらには「お前のはらわたが見たい」と男によってメスで腹を切り裂かれ、そうしてその死体置き場のホルマリン槽の中で、腐敗死体に取り囲まれながら男に犯された看護婦のことだ。

 狂った女。女はいまどうしているのか。土屋名美の前にいる。取材にやってきた彼女の前にいる。名美のはらわたに狂った女のメスがにぶい光を放つ。外は雨。

 それにしてもなぜ男はこんなことをするのか。どうして男の性器ってやつはこんなにヒドイことをするのか。橋本治は『秘本世界生玉子』(北宗社。のちに河出文庫)にこう書いている。

「男性性器――ペニスは挿入するもの、侵略するもの、陵辱するものである筈です。それは受動態としてあるのでなく能動態としてあるべきものです。どうしてその能動態であるものの本質が“必然としての受け身”であるというような矛盾が起こるのでしょうか? それはペニスが決して侵されないからです。ペニスは、どう扱われようとも、それは必ず快楽をもたらすからです。侵されることのない絶対の持ち主は、自身も又、決して侵される事がないのです」

 もうイヤだ。こんなもんぶらさげているのもうイヤだ。外を見るとやっぱり雨。雨だ。雨はキライだ。

[月刊ビデオボーイ掲載]
●監督:田中登●出演:鹿沼えり、地井武男、水島美奈子、他●1979年●日本