こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
監督:長谷部安春
出演:桂たまき、林ゆたか、山科ゆり、岡本麗、潤まり、森みどり、梓ようこ、吉井亜樹子、飯田紅子、堺美紀子、田畑善彦、三川裕之、高村ルナ、八城夏子、丘奈保美 脚本:桂千穂 音楽:月見里太一(=鏑木創)
長谷部安春監督の映画に、『野良猫ロック』シリーズや『あぶない刑事』シリーズ、『エロチックな関係』などがあります。
長谷部安春監督の、観る者を心底寒からしめるバイオレンス&サイコ&ホラーな世界
(轟夕起夫)
12月が人類に用意した、最大イベントがこないだ終わった。
こちら、1999年1月発売の雑誌、その掲載コラム記事の復刻ですので、終わったばかりの1998年12月のことを振り返って書いているわけでございます、ご承知おきください。
さて、クリスマスケーキのお味はいかがであったろうか。1年に1度、カップルが聖なる夜に食しあう甘い甘〜いひととき。
それに引き続いて、スポンジのように柔らかな“お互いのケーキ”をむさぼり合うあの性なる夜。
しつこいようですが、時代感!ご承知おきを!
「バ、バカやろー、てんめえブッ殺されてえのか!」
そう思われた方。
大概の人々は当時も今も、とくに何とも思わないでしょうけどね、時代感をお楽しみください。
今回は、そんなクリスマスケーキ嫌いのアナタにピッタリの映画をご紹介しよう。『暴行切り裂きジャック』。
題名からしてグッと来ないか?
グッと?
主人公はかけだしのケーキ職人。喫茶店に住み込みで働いているのだが、ひとりの性悪ウエイトレスに「送って」とせがまれたところから話は転がりはじめる。
雨の中。二人は不可抗力で見知らぬ女を殺してしまう。ウエイトレスは、気弱なケーキ職人をけしかけ、死体を遺棄しようとする。
サスペンス?
そのとき、地をひきづられていた死体に何かが突き刺さり、股からビリビリとお肉が裂けてしまうのだ。常軌を逸した事態に遭遇し、ふたりは興奮さめやらずセックスにのめりこむ。
これが良かった。得たことのない異常な快感。
サイコスリラー?
もはや普通のセックスなんぞしちゃあいられない。女はケーキ職人にせがむ。「ねえ、アレ、今度いつやる?」
初めての共同作業が、ケーキではなく人間への入刀だったふたり。誰かを切り刻んだあとでしか燃えられないカラダになって、男は女にそそのかされるままにケーキナイフを生贄へと突きたてていく。
ホラー?
どうですか? スポンジのように柔らかな肉体が、快楽殺人によって料理されていくハッピークリスマスな映画。もうケーキなんか食べたくなくなったでしょ。
クリスマスとは全く関係のない映画であることは理解できました。
しかしここまではまだ前哨戦。もっとケーキ嫌いにアナタをしてあげよう。
ケーキ嫌いを決めつけてますね。ケーキは好きです!
次第に、ひとりで女を切り裂く快楽へとさらにのめりこんでいくケーキ職人。面白いのは女の言いぐさだ。
「浮気しないでよ!」
何と彼女に黙ってナイフを使うこと自体が浮気だというのだ。つまりナイフ=男根の象徴。
ところが尻に敷かれていたはずの男はすっかり逞しくなり、黙々とナイフを研ぐばかり。男を研ぐ、とはまさにこのことだ。そうして単身看護婦寮にもぐりこみ、またしても数人をめった切りにする!
スプラッター?
かつて日活ニューアクションの一翼も担った長谷部監督の観る者を心底寒からしめるバイオレンス・ポルノの傑作。
バイオレンス・ポルノですか。
日活ニューアクションについては、こちらに関連記事があります。
今年クリスマスケーキが食べられなかったアナタは必見だな……でも、本当にそれでいいのか?
ふに落ちないままですが、もういいです。
ビデオボーイ2000年3月号掲載記事を改訂!
Amazonプライムビデオではレンタルタイトルになっています!(2020年11月現在)
ロマンポルノを鑑賞するためのサービスについて、関連記事はこちらです!
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