吸血鬼の少女の物語『ビザンチウム』〜特殊女優の道をひた走るシアーシャ・ローナンを堪能

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館理人
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挑むは特殊な役どころばかり!気になる女優、シアーシャ・ローナンを、バンパイア映画『ビザンチウム』で堪能したい! 彼女、弱冠13才でアカデミー賞助演女優賞候補になった逸材です!

館理人
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てことで、『ビザンチウム』をご紹介!

データ

監督:ニール・ジョーダン
出演:シアーシャ・ローナン、ジェマ・アータートン、サム・ライリー、ジョニー・リー・ミラー、他

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シアーシャ・ローナンは弱冠13才でアカデミー賞助演女優賞候補になった逸材!

(轟夕起夫)

 シアーシャ・ローナンは笑わない。

 スクリーンの中では神妙かつ憂いを帯びた表情がトレードマークだ。

 無論、厳密には例外もある。16歳の暗殺者としてアクションにも挑んだ『ハンナ』(2011年)には、印象的な笑顔があった気も。

 だが弱冠13才でオスカー助演賞候補となった『つぐない』(2007年)での瞠目すべき演技がプロトタイプとなり、薄幸でシリアス、ヴァルネラビリティ(攻撃誘発性)の高いキャラクターならシアーシャという図式が成立、彼女の表情筋は基本、こわばってばかりなのだ。

 案の定、ニール・ジョーダン監督の『ビザンチウム』でも、その笑顔は封印されていた。ジェマ・アータートン扮する8つ年上の姉(という設定の母親)と共に旅をしつつ、時を超えて生き続けるヴァンパイア役。

館理人
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ニール・ジョーダン監督は、トム・クルーズでもヴァンパイア映画を撮っています、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』!

 正体は明かせず、200年間「16歳のまま」孤独を噛みしめながら、永遠の毎日を繰り返している。

 難病の青年との禁断の恋、血を求め、人を殺めてきた贖罪意識、200年もの歴史の起源の物語が押し寄せ、しかしここで特筆すべきは、シアーシャはシチュエーションごとにいくつもの困り顔のバリエーションを見せてくれるのであった。さすがっ!

 現在19歳──美少女だの若き天才女優だのと持ち上げられても、旬の季節はアッという間。が、オッサン監督ばかりに起用され、しかも趣味性の偏った一風変わったジャンルの作品に呼ばれ(はたまた自分で進んで選び)、我が道を往くシアーシャは素晴らしい。筆者が偏愛するのは『ラブリーボーン』(2009年)だ。

 淫楽殺人者の手にかかり、天国の入り口とやらに留まり、タイム・リープを繰り返すヒロインの「無念と後悔と怒り」に同化したピーター・ジャクソンの『時をかける少女』が実現!

 だから『ビザンチウム』の、時空を超越しているヴァンパイア役だってお手の物。アンドリュー・ニコル監督の『ザ・ホスト 美しき侵略者』では、地球外生命体に寄生されながらそれと闘うヒロインに。

 特殊女優の道をひた走っている。『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』はアレクシス・ブレデルと共演、銃をブッ放す殺し屋役なのだが、『プレシャス』(2009年)でオスカーの最優秀脚色賞を受賞したジェフリー・フレッチャーの初監督作。

 ティーンエイジャーの女子ふたりは、大好きなブランドの新作ドレス欲しさに仕事を請け負っちゃうお気楽さ。けれどもこれ、女のコの複雑な内面を扱った『ゴーストワールド』(2001年)級の映画だったりするのである。

 そうだ! ウェス・アンダーソン監督の『ザ・グランド・ブダペスト・ホテル』にも出演した。1927年のハンガリーのブダペストにあるホテルを舞台に繰り広げられる物語だ。

 そろそろ、とびっきりの笑顔も見たいが、ウェス・アンダーソンの世界では期待するのはヤボか。

 16歳の姿のまま、200年もの時を生きているヴァンパイア役もいいけれど、一体、誰が彼女の笑顔をスクリーンに刻んでくれるのか。筆者の脳内には今、あの栗田ひろみ主演の『放課後』(1973年)の挿入歌、井上陽水の名曲『いつのまにか少女は』が流れている──。

轟

キネマ旬報2013年10月下旬号掲載記事を改訂!

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