相米慎二監督全13作で楽しむ、撮影監督10人の仕事

スポンサーリンク
館理人
館理人

では!撮影監督フィーチャー記事をどうぞ!

スポンサーリンク

相米慎二のイマジネーションを具現化してきた猛者たち

(文 轟夕起夫)

 相米慎二の映画を支えたキャメラマンたち。そこには錚々たる顔ぶれ、日本を代表するシネマトグラファーばかりが並んでいる。まず監督デビュー作『翔んだカップル』(1980年)を担当したのは、水野尾信正

 相米は助監督時代、曽根中生の日活ロマンポルノに多く参加していたが、その数々の傑作を撮っていたのが水野尾信正だった。

館理人
館理人

『翔んだカップル』は出演:鶴見慎吾、薬師丸ひろ子、ほか!

 例えば『天使のはらわた 赤い教室』(1979年)の長回しを観れば、いかに彼が相米映画に多大な影響を与えているかが分かるだろう。

『セーラー服と機関銃』(1981年)は、『遊戯』シリーズを筆頭に松田優作のアクション活劇で名を馳せた仙元誠三

館理人
館理人

『セーラー服と機関銃』は出演:薬師丸ひろ子、渡瀬恒彦、風祭ゆき、ほか!

『ションベン・ライダー』(1983年)は、70年代初頭に小川紳介の戦闘的ドキュメンタリーでキャリアをスタートさせた田村正毅

館理人
館理人

『ションベン・ライダー』は出演:藤竜也、河合美智子、永瀬正敏、坂上忍、原日出子、ほか。

 つまり、役者の生身のアクション(殺陣にはあらず)を長回しによってまるごとドキュメントしていく──それが相米映画なのである。

 漁師と巨大マグロとの死闘を描いた『魚影の群れ』(1983年)、狂った格闘オペラ『光る女』(1987年)、成瀬巳喜男の衣鉢を継ぐホームドラマ『あ、春』(1998年)の3本は、松竹を代表する長沼六男

館理人
館理人

『魚影の群れ』は出演:緒形拳、夏目雅子、佐藤浩市、ほか

館理人
館理人

『あ、春』は出演: 佐藤浩市、斉藤由貴、富司純子、藤村志保、山崎努、ほか

 勝新太郎の『座頭市』 (1989年)や山田洋次監督の時代劇三部作『たそがれ清兵衛』(2002年)、『隠し剣 鬼の爪』(2004年)、『武士の一分』(2006年)でも気を吐いたが、相米映画では一貫して“大人のドラマ”を見つめた。

 ちなみに『魚影の群れ』の海上シーンは、船からクレーンを突き出し、そこからキャメラを設置した鉄籠を吊り下げて撮影するという、大変デンジャラスなものであった。

『ラブホテル』(1985年)、『夏の庭 The Friends』(1994年)の2本は篠田昇。とりわけ岩井俊二の映画群で有名な名手だが、『ラブホテル』は篠田の劇場用映画デビュー作だ。

館理人
館理人

『夏の庭』は出演:三國連太郎、戸田菜穂、坂田直樹、王泰貴、牧野憲一、ほか。

『台風クラブ』 (1985年)は伊藤昭裕。相米は寺山修司の『草迷宮』 (1983年)にも助監督でついていたが、伊藤昭裕は寺山の実験映画出身。

館理人
館理人

『台風クラブ』は出演:工藤夕貴、大西結花、三浦友和、ほか。

『雪の断章 情熱』 (1985年)の冒頭、伝説の18シーン・ワンカットは五十畑幸勇。90年代の市川崑作品といえばこの方である。

館理人
館理人

『雪の断章 情熱』は出演:斉藤由貴、榎木孝明、世良公則、ほか

 さらに、『東京上空いらっしゃいませ』(1990年)は稲垣涌三。巨匠・稲垣浩を父に持ち、円谷プロ経由で、実相寺昭雄の『無常』(1970年)でデビュー。

館理人
館理人

『東京上空いらっしゃいませ』は出演:中井貴一、牧瀬里穂、ほか。

 『お引越し』 (1993年)の栗田豊通は、アラン・ルドルフの『モダーンズ』、ロバート・アルトマンの『クッキー・フォーチュン』などの国際派。

館理人
館理人

『お引越し』は出演:中井貴一、桜田淳子、 田畑智子、笑福亭鶴瓶、ほか。

 そして最後のフィルム『風花』町田博──いずれも映画の虚構性を逆手に存分に遊び倒した相米慎二の、“イマジネーション”を具現化してきた猛者たち。

館理人
館理人

『風花』は出演:小泉今日子、浅野忠信、麻生久美子、ほか。

 全13作を通して、スタンディングオベーションを捧げたい。

轟

映画秘宝2011年12月号掲載記事を改訂!