日本エンタメ界の御三家といえば、橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦。新御三家が野口五郎、郷ひろみ、西城秀樹。
だったらば!と、小沢昭一、永六輔、野坂昭如が『中年御三家』を結成。…この昭和感というかお祭り感がわかるエピソードを復刻レビューにてご紹介! 小沢昭一さんフューチャーでコンパクトに解説しています。
『花の中年御三家大激突!一九七四ノーリターンコンサート』@武道館を振り返る
TBSラジオで「小沢昭一の小沢昭一的こころ」が始まったのは1973年からだが、翌年、小沢さんの人気はさらに若者のあいだにまで拡大していった。
共に戦中派の野坂昭如、永六輔と組んだユニット「中年御三家」が、無党派の、戦争を知らない子供たちの心を捉えたのだ。
そのクライマックスは1974年12月6日、武道館で行われた『花の中年御三家大激突!一九七四ノーリターンコンサート』。観衆は1万人超え。司会は愛川欽也と中山千夏が担当。
壇上で「今の心境は?」と訊かれると、3階まで一杯の客席を見て永六輔がこう言った。「あんな高いところまで人がいるなんてビートルズ以来で。ビートルズに負けないように、と思っています」。
永六輔さん(1933年4月10日〜2016年7月7日)もラジオパーソナリティとして広く長く愛されたタレント。随筆家、作詞家、役者と多才!
すると野坂昭如は「ビートルズって誰?」的に混ぜっ返し、「われわれ御三家に勝る歌手がいるわけがない」と煽る。
そして小沢昭一はといえば「けっこうな寄り合いで、なんとも……いいんじゃないでしょうか」とポツリ。会場は一段と爆笑。このどこが醒めた視線”が実に小沢昭一的こころ!
コンサートはジャンケンで、永、小沢、野坂の順番になるのだが、小沢さんの持ち時間はおなじみ、「お父さんエレジー」「ハーモニカ・ブルース」「土耳古行進曲」の3曲をパフォーマンス。
合間のトークで「大したことやるわけじゃないんだから」「一所懸命やりすぎなんだ、この2人は稽古なんかしてる」「いい加減にやってたから、支持されたのに」と、キラーフレーズを連発。ちょっと感覚的にはジョン・レノンみたいだ。
当時、小沢さんは45歳(野坂は44歳、永は41歳)。基本、クールではあっても、熱い魂の持ち主で、とりわけ自らの戦争体験を語り始めるや、グイグイとボルテージが上がってゆく。
ここのくだりはぜひ、今の戦争を知らない子供たちにも聴いてもらいたい(YouTubeに音源あるかも)。
のちに2003年、「帰ってきた中年御三家」コンサートがNHKホールにて開かれたが、野坂昭如は脳卒中で倒れ、不参加だった。
ちなみに、1974年というのは野坂昭如が参院選に出馬した年で、小沢さんは新宿駅西口にて“泣ける”応援演説をしている(CD『野坂昭如 辻説法』に収録)。こちらも必聴!
(轟夕起夫)
映画秘宝2013年3月号掲載記事を改訂!
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