監督・山田洋次『東京家族』上京してきた両親と子供たちの家族との数日間の無常感!

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Photo by Breno Assis on Unsplash
館理人
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『東京家族』(2012年)は、監督:山田洋次、出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、ほか

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小津安二郎の傑作『東京物語』をアレンジ

 映画監督50周年記念作品に山田洋次が選んだ題材は、松竹の大先輩、日本映画の巨匠・小津安二郎が1953年に発表した傑作『東京物語』。これをモチーフにアレンジを施し、「今を生きる家族」の物語へと再構築してみせた。

 基本の構図は同じーー遠路はるばる上京してきた老いた両親と、数日間を過ごす子どもたち。今やその子どもの側にも家族が、すなわち各々の人生があるわけで……映画から滲み出してくるのは親と子の間に歴然と存在する時間の流れの残酷さ、そして世の無常さだ。

『東京物語』で老夫婦に扮したのは笠智衆と東山千栄子、『東京家族』のほうは橋爪功と吉行和子という組み合わせである。感心したのはオリジナル版のキーマン、原節子が担っていた役柄を、『東京家族』では大きく変えてしまった点。

 つまりは、老夫婦を慰めたのは戦死した次男の妻・平山紀子で“赤の他人であったが、『東京家族』ではそれを、平山家の次男とその恋人、妻夫木聡と蒼井優の演じる各キャラクターに分散させ、うまく落とし込んでいるのだ。

 ことに瀬戸内海の小島に渡ってからのエピソードが印象的で、後日譚のようで実は本題はそこに在る。次男のアパートはY字路に建っているのだが、(Y字路好きな!)美術家にしてグラフィックデザイナー、横尾忠則を“スペシャルアドバイザー”として起用した効果だろう。

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ちなみに横尾忠則著のY字路本も多数!

 このアパートでの、胸に残るシークエンスひとつとっても、『東
京家族』は小津に恥じない映画と言えよう。

(轟夕起夫)

轟

映画秘宝2013年2月号掲載記事を改訂!

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