石井輝男監督(1924年1月1日 – 2005年8月12日)映画のすごいやつ、ご紹介です、どストレートなタイトル「地獄」からも伝わってきますね、トンデモすごそう感が。
では!レビューをどうぞ
アナーキスト石井輝男が私財で撮ったストレート・トゥ・ヘルな世界
【データ】
1999年 監督・脚本・プロデューサー:石井輝男 製作総指揮:小林悟 出演:佐藤美樹、前田通子、斉藤のぞみ、丹波哲郎ほか
【レビュー】
まず、雑誌「映画芸術」1969年10月号を紐解いてみるとしよう。とそこには、石井輝男について「つねに企業の要請にこたえているように見えながら、実は時代の転換期に、必ず旧体制の墓掘り人として立ち現れる地獄の使者のような存在」と評した記事がある。
これを書いたのは映画評論家で作家の長部日出雄。1961年に倒産した新東宝での最後の数年間、この鬼才がいかに狂い咲いていたかを綴ったものなのだが、ところで1969年といえば石井輝男は、東映で「異常性愛路線」爆進中のとき。
『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』という映画では阿部定さん(ホンモノ)を出演させたりしちゃって、やはり時代の転換期に大いに気を吐いていたわけだ。
で、1999年いよいよの世紀末。その「地獄の使者」がずばり『地獄』なる映画を作った。
しかも企業の要請ではなく、私財を投げうって。
連続幼女誘拐殺人事件、地下鉄サリン事件、カレー毒物混入事件……などなど、平成ニッポンを震撼させた例の犯罪者たちが大集合。現実で裁けぬのなら、閻魔大王が地獄にて天罰を下してやろうではないか、と大胆不敵な企画を実現させてしまった。
(チープな描写だが)舌をビロ〜ンと抜き、手足や首をバッサバッサ切り落とし、教祖のツラの皮をズルズルリ〜ンと剥がしてみせる、『地獄拳』シリーズ(1974年)もビックリのストレート・トゥ・ヘルな映画。
『地獄拳』シリーズ、こちらに記事あります。
とりわけ終盤の、自作『忘八武士道』 (1973年) の人斬りキャラ「明日死能」 (丹波哲郎)がフラリと地獄に顔を出す馬鹿リミックスのスゴさよ!
丹波哲郎についての記事はこちらにあります。
東映時代の盟友・高倉健なんて『鉄道員』(1999年)でモントリオール映画祭主演男優賞に輝いておるというのに、いつまでもこんな出鱈目なことばかりしていいのか?
もちろん、いいんである。
高倉健についてはこちらに記事があります。
時代の転換期に、必ずや墓掘り人として立ち現れる地獄の使者。真正にして孤高のアナーキストだ。 しかも相変わらず女性の趣味がよろしいのにも感心。『ねじ式』(1998年)で美少女つぐみ嬢の乳を揉みまくり、今回も佐藤美樹(さとう樹菜子)、里見瑶子らを裸にひんむいた上、アイドルの斉藤のぞみを抜擢。彼女のウインク攻撃にポっと頬を赤く染めてしまったのは俺だけか?
しかも何と、映画全編を公開前にネット上で見せてしまう試みも敢行。賛否両論をすぐにメールでやりとりしようというのだ。ところで輝男ってパソコンできんの?
頼まれた色紙に「地獄で待ってるぜ」と書きつける75才のカツドウ屋。 生きるも地獄、死するも地獄。彼こそは最後のアナーキスト、なり。
(轟夕起夫)
Smart 1999年11月号掲載記事を改訂!
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