三浦春馬20歳の復刻インタビュー〜LOVEについて

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館理人
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復刻いたしました、三浦春馬さんが20歳の時のインタビュー記事です。出演した映画『君に届け』の公開の年。映画、舞台…さまざまなLOVEについてお話いただいています。

館理人
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三浦春馬さんと、インタビュアー轟との幸せな出会いを、みなさまと共有できたらと思います。

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とびきりの笑顔で「絵」から「画」へ

LOVELYすぎる笑顔である! 三浦春馬。さすがあの“風早くん”を体現した男。御存知のとおり彼は大人気少女コミックの映画化、『君に届け』で、愛すべき王子様キャラの風早翔太を演じた。

三浦 振り返ると、この作品との出会いはちょっと運命的なものがありましたね。コミックではなく、深夜にテレビ放映されていたアニメ版を見たのが最初なんですけど、昨年『サムライ・ハイスクール』というドラマの収録に追われていた頃でした。

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原作は椎名軽穂の漫画です!

 撮影が終わってクタクタになって深夜、家に戻ってテレビをつけたら、偶然やっていて。登場人物たちの純な思い、が詰まっていて胸がキュンとしたというか、その世界に魅かれて気持ちを持っていかれてました。

いろいろなLOVE=愛

風早は、明るく誰に対しても分け隔てなく接する高校1年生。クラスのみんなから好かれている人気者だ。外見が暗く、ピュアすぎる性格ゆえ周囲から浮いている黒沼爽子(多部未華子)に特別な感情を抱いているが、爽子との間はまだ恋愛未満──。

三浦 映画化に関して、いつもより周囲の反応が多いですね。男性でもタイトルを知っている方が多い、という印象を受けました。風早ってキャラが立っていて、男から見ても憧れますよ。好きな女の子に対して的確なアドバイスをし、応援してあげる姿勢は、見習いたいなと思います。でもこれは難しい! 人間の感情として、やっぱり“一番自分が大切”だと思う瞬間ってあるし、好きな相手に見せたくない部分を見せちゃうこともあるじゃないですか(笑)。

スイッチが入った。『君に届け』を通して「LOVE」について語ってもうおうと思う。もちろん、いろいろなLOVE=愛について。

三浦 僕自身、“好き”という気持ちは相手に素直に伝えるタイプです。風早とは違う。自分からアプローチします。といっても、ストレートにぶつかるのはハードルが高いので、いろいろ「相手が喜ぶことって何だろう」と考えて行動に移します。

撮影中、熊澤尚人監督から「もっともっと恋した気持ちになって」とアドバイスされたという。

館理人
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監督は熊澤尚人。監督作に吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ出演の『ユリゴコロ』、千原ジュニア主演『ごっこ』などがあります。

三浦 もっとドキドキして、もっと恥ずかしがって、って。爽子と風早のふたりの距離感はぜんぜん縮まってはいないんだけど、互いに“好きだ”という気持ちの中で、はにかんだり、一緒にいられるだけで嬉しいと感じたり、そういう純な思いが全面にあふれ出ている。とっても清冽で、甘酸っぱい映画なんですよね。

舞台への想い

LOVEといえば昨年(=2009年)、彼が初挑戦した舞台、地球ゴージャスプロデュース公演VoL.10『星の大地に降る涙』は、歴史ファンタジーの中に異民族同士の共存の物語、そして愛の織りなす悲劇を綴った作品だった。しばし、回想してもらおう。

三浦 あの舞台は、僕にとって大きな経験になりました。描かれていた愛の複雑さ、反戦のテーマも胸に迫るものでした。テーマが大きいから演じている僕たちも、何ていうのか足下ではなく遠くを眺め、物語の世界に入っていけるというのか。セリフを吐きだすときも、歌を唄うときも、お客さんに向かって熱意が伝わっていく感じがたまらなく良かった。ぜひ舞台はまたやってみたいです。

館理人
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三浦春馬さんはこの後、劇団☆新感線「ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III」などの舞台出演が続きました。舞台「キンキーブーツ」の出演では、読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞を受賞!

ちなみに、舞台「キンキーブーツ」はブロードウェイミュージカルですが、これは2005年のイギリス映画『キンキーブーツ』を舞台化したもの。参考までに、映画についてはこちらにレビューがあります。

今年(=2010年)4月に20歳になった。これまでの役者人生は順風満帆に思えるのだが、あのLOVELYな笑顔の裏には人知れぬ時間があった。

俳優という仕事

三浦 じつは「この仕事が本当に好き」と自信をもって言えるようになったのは最近なんです。今年に入ってから。それは僕がちょうど20歳になったからではなく、いろいろと挫折していく中で自分という人間を否応なく見つめ、ようやくそう言えるようになったんです。この『君に届け』の撮影に入る前がキツかったですね。すべてに自信を失っていた。忙しすぎたこともありますが、ちょっと精神的にも参っていたんですよね。

そんな彼の窮地を救ってくれたのもやはりLOVE 。周囲の人々の支えであり、優しさだった。

三浦 そうですねえ、ひとりだけで乗り越えようとしてたら無理だったかもしれませんね。叱咤激励され、背中を押してもらって、少しずつ回復していきました。でもそのとき感じたのは、ギリギリまで追いつめられると、意外と近くの人には相談できないものなんだなって。今までは何か問題を抱えても、僕は自分の力だけでどうにか解消してきたんですけど、とことんキツイと、自分でもどうにもならないし、人にも言えないんですよね。というのも、周りのみんなが輝いて見えて、だからなおさら相談できなくなる……。弱みを見せたくないという気持ちは確実にありましたね。でもそれを吹っ切って、家族やスタッフ、友人に話をして浮上するキッカケを掴んだんです。

赤裸々な言葉だった。こんなに輝いている存在が、周囲の輝きに気後れしてしまうなんて。だがLOVEのカは偉大なり。『君に届け』は、脱皮した三浦春馬が見られる映画である。

撮影現場での佇まい

三浦 久しぶりの映画の現場でしたから楽しかったです。もちろん、細やかな演技を要求されて大変な面もありましたが。それまで切羽詰まった役が続いていたんですね。舞台「星の大地に降る涙」があって、TVドラマを『サムライ・ハイスクール』『ブラッディ・マンデイ』シーズン2とやり、だからなのか『君に届け』の現場では熊澤監督に、振り向くスピードが早すぎるとまず指摘されました。

 きっと『ブラッディ・マンデイ』の、いつも命を狙われているような世界観がカラダに染みついていたのでしょう(笑)。もっと体の力を抜くように、って熊澤監督にはよく言われてました。

これまでは、大勢のキャストと現場で過ごすのはわりと苦手だったそうだが、今回は、自ら積極的に前に出てコミュニケーションをとり、撮影を進んで牽引していった。

三浦 前々から何かを変えたいと思っていたんですよね。今回は、自分から監督にリテイクをお願いしたことも何回かありました。風早を演じながら「俺、気持ちにウソをついているな」と気づいた瞬間、自然と「もう1回やらせて下さい」と言い出していたんです。逆に「このシーンは自分なりに上手くできたのでは」と感じたときに、監督から「良かったよ」と声をかけてもらえることもあって、充実した現場でしたね。

自分へのLOVE

自分へのLOVE。「この仕事が本当に好き」と自信をもって言えるようになった愛の力。それにしてもよく立ち直ったものだ。そう声をかけると、彼は素直にこう返事をした。

三浦 本当ですね。あそこまで追い込まれたのは初めてで、自分のこと、弱いなと思いました。

無問題。「弱い」と自ら言えるくらい、今は柔軟な精神状態なのだ。

三浦 頼るときには人に頼らなきゃダメなんですよね。でも、もっと強くなりたい。もっと免疫をつけたい。

となると、これからはより逞しくタフになっていく予感がする?

三浦 う〜ん、簡単にはなれないと思います。そうなろうとする気持ちだけは失いませんけど。

取材の終了時間が来た。帰りしなに、もう一問、訊いてみた。

「LOVEと聞いて、思い浮かべるものは何ですか?」

三浦 ハートですね。

なるほど、HEART。心臓。胸。心。感情。愛情。元気。勇気。気力。熱意。関心。興味。ハート形のもの──すべてのLOVEはそこに宿る。

人物を浮き立たせる笑顔

名前からして「イケている」ではないか。風早翔太。この好感度大なキャラクターを、三浦春馬は全身で引き受け、肉付けし、血を通わせた。

これまでも恋愛物には出演していたが、例えばTVドラマ「14才の母」や映画『恋空』とは違って、『君に届け』は恋愛未満のシチュエーションに力点が置かれており、三浦春馬は一層その柔らかな魅力を発揮することを望まれ、と同時に一定のリアルさも与えねばならず、つまりは、難役である。一筋縄ではいかない。

原作は「別冊マーガレット」にて連載のコミック。 単行本は少女漫画としては異例の1200万部を突破(※2010年当時)。爽子と風早の、片想いと片想いの物語。

「初めての大好き」 という誰もが共感できる尊い気持ちを描いた原作者の椎名軽穂は、主演者について、「凛とした佇まいが美しい多部未華子さん。毅然とした男らしさが爽やかな三浦春馬君。清々しくも雰囲気のある、そして絵になるおふたりが、実際に映画の中で画になるのがとても嬉しく、今から待ち遠しく思っています」とコメントしている。

「絵」から「画」へ。しかし三浦春馬の演技は、写実派一辺倒ではなく、水彩画のソフトな筆致も入れて、人物を浮き立たせるだろう。フラットな「絵」が立体化され、LOVELYな「画」に。それがあの、とびっきりの笑顔なのだ。

(轟夕起夫)

轟

ぴあ2010年9月9日号掲載記事を改訂

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三浦春馬さんの関連記事として、『君に届け』レビュー、『永遠の0』出演にあたってのインタビュー記事があります。こちらからどうぞ。