三浦春馬×多部未華子のキラキラ甘酸っぱい、至極の青春映画『君に届け』

Photo by Paweł Czerwiński on Unsplash
館理人
館理人

とても悲しいです……。三浦春馬×多部未華子のキラキラしたこの青春映画で、三浦さんを追悼したいと思います。

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データ

2010年 監督:熊澤尚人 原作:椎名軽穂「君に届け」(集英社「別冊マーガレット」) 脚本:根津理香、熊澤尚人 撮影:藤井昌之 照明:舘野秀樹 美術:橋本優 出演:多部未華子、三浦春馬、蓮佛美沙子、桐谷美玲、夏菜、青山ハル 配給:東宝

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レビュー

 エンドロールのクレジットに「監督 熊澤尚人」と出て、flumpool の主題歌も流れ終わったあと、主人公のふたり、黒沼爽子と風早翔太のその後がチラリと描かれる。

 下り坂道。風早は自転車を押しながら歩き、少しうしろをいつものように爽子が付いてゆく。と、ふと立ち止まり、手元を見る。プラネタリウムのチケットが2枚。微笑む爽子。そこに「黒沼!」とにこやかに呼びかける声が。駆け寄って、爽子は初めて横に並んで歩く……そんな、ふたりの距離感の物語、2010年公開の『君に届け』。

 長い黒髪で外見が暗く内向的、ホラーアイコンの「貞子」とあだ名されている高校1年生、性格がピュアすぎるヒロインの爽子に多部未華子。

 対して、明るく誰であっても分け隔てなく接し、クラスのみんなから好かれている同級生の人気者・風早には三浦春馬がキャスティングされた。

 互いに特別な感情を抱いているが、気持ちをうまく相手に届けられず、ふたりの距離感はなかなか縮まらない。だが「好き」という気持ちの中で、はにかんだり、一緒にいられるだけで嬉しいと感じたり、純な思い、が全面に溢れ出ている。

 つまりとても清冽で、甘酸っぱい映画なのだ。

 当時、20歳になったばかりの三浦春馬に取材をした。映画を通して「LOVE」について語ってもらうというベタな企画だったが、彼は撮影中、熊澤監督から「もっと恋した気持ちになってドキドキして!」「もっと原作漫画の風早みたいに恥ずかしがって!」とアドバイスされたという。

 思えば、貴重な映画であった。なぜならば、三浦春馬も多部未華子も本作以降はいわゆる“キラキラ映画”には出ていないからだ。あの時、にしか演じられないタイミングだったのだろう。高校生役をもう引き受けることはなく、舞台も含めて演技の幅を広げていった。

 たとえ女性コミックが原作でも、多部未華子は『ピース オブ ケイク』(2015年/監督:田口トモロヲ)でリアルなラブシーンに挑み、20代の女性の切ない恋模様、ジョージ朝倉の世界観に身を投じているのだ。

 そして忘れてはいけない、『君に届け』に桐谷美玲が出ていたことを。ヒロインのライバル的存在の胡桃沢梅役で、これが初の少女漫画映画の出演である。

 原作の大ファンであった彼女は至るところで風早くんが理想の男性のタイプと公言していたのだが、時は流れてキャリアを重ね、少女漫画映画『ヒロイン失格』(2015年/監督:英勉)の主演で大ヒットを飛ばし、のちにラブコメの女王と呼ばれるように。これもタイミングのなせるワザか。

 原作は現在(2020年7月)も不定期連載されている。一時いっとき、「もし新たに実写化するならば、キャスティングはどうなるだろうか?」と考えたことがあった。が、もう映画になることはないだろう。このキャスティングが、あまりに完璧だからだ──。

轟

キネマ旬報2017年1月下旬号掲載記事を改訂

館理人
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