『グッバイ、サマー』(2015年、フランス)は、監督ミシェル・ゴンドリー、出演はアンジュ・ダルジャン、テオフィル・バケ、他。
自分が、元子供だったことを思い出す映画! レビューをどうぞ。
ミシェル・ゴンドリー監督の自伝的青春映画。僕らはいつの間にか大人になっていた
ミシェル・ゴンドリー監督が少年期の記憶を、『僕らのミライへ逆回転』(2008年)のように自らリメイクした作品。
ミシェル・ゴンドリー監督作『僕らのミライへ逆回転』は主演ジャック・ブラックのコメディ。レンタルビデオ店のビデオテープがすべて再生不可能になってしまい、困った店長はなんと、注文のあったタイトルを自ら主演しリメイク製作していきます!
『エターナル・サンシャイン』(2004年)や『恋愛睡眠のすすめ』(2006年)のエッセンスもチラリ。
ミシェル・ゴンドリー監督作『エターナル・サンシャイン』の主演はジム・キャリーとケイト・ウィンスレット。恋人だった記憶を消す手術を受ける男女ふたりの、記憶を巡る物語です。
ミシェル・ゴンドリー監督作『恋愛睡眠のすすめ』では、夢と現実の間で、片思いの相手への想いが膨らんでゆく男性を、ガエル・ガルシア・ベルナルが演じています。
今やフランスを代表する女優、40歳となった『アメリ』(2001年)のオドレイ・トトゥが過干渉なダニエルの母親役に。
ジャン=ピエール・ジュネ監督作『アメリ』は、オドレイ・トトゥ演じるコミュ障の女性のラブストーリー。
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ミクロとガソリン。新手のお笑いコンビ名、ではない。ミシェル・ゴンドリー監督のこの自伝的青春映画『グッバイ、サマー』の原題であり、主人公と相棒の“学校での渾名”である。
前者は長髪に童顔、華奢なカラダつきで、女の子と間違えられるような容姿を揶揄されてミクロ(=チビ)と、後者はなぜか服が油臭いので、転校して来てすぐにガソリンと呼ばれているのだ。
本当は、主人公はダニエル、転校生のほうはテオという名前。
ダニエルは絵が得意で、テオは機械いじりが大好き。2人は学校で共に“浮いた存在”ゆえに意気投合、仲良くなり、夏休みに思い切って、つまらない日常からの脱出を試みる……のだが、その方法がユニーク!
廃材をかき集め、中古のエンジンを取りつけ、手作りで“車輪の付いた動くログハウス”をこしらえ、旅に出る。
しかしなぜ、家型なのか? もし警察がやってきたら、停車をして不恰好だけども住居に早変わり。頓知で道交法を掻いくぐろうって算段だ。
そんな子供騙しで大丈夫なのか、とツッコんではいけない。まだ14歳なんだもの。
ところで「自伝的」と謳ってはいるものの、ゴンドリー監督、実際には“動くログハウス”で旅はしていないそう。
だが、絵を描くのは好きで、女の子にもよく間違えられ、周囲から“浮いた存在”なところも同じ、友達と車を作る計画も立てたという。
現実と幻想とがポップに混ざり合うのがゴンドリー監督の特徴と言えるが、本作も後半、“夢うつつ”で摩訶不思議な描写で染め上げられ、単なる冒険回想録では終わっていない。
すなわちダニエルは、自分だけ「後ろ向きに進んでいる」感覚に襲われ、けれども確実に一歩、少年期から前へ進むのだ。
ラスト、唐突に第三者、ダニエルの初恋相手の視点に切り替わる場面も含め、「いつの間にか大人になっていく」このニュアンスを咀嚼できるのは、われわれ“元子供”の特権だと思う。
週刊SPA!2017年4月11日・18日号掲載記事を改訂!