読む映画リバイバル『タイムアバンチュール 絶頂5秒前』

再検!日活ロマンポルノ

猫が出るんです。ちゃんと「夏への扉」と同じように

(2003年6月号より)

 ウォン・カーウァイ監督が『欲望の翼』(90)を引っ提げ初来日したとき、取材の席で彼は、意外な日本映画について語ってくれた。滝田洋二郎監督の『木村家の人々』(88)。それは、アジア圏でも大ヒットした作品だったのだ。

 滝田監督といえば、現在も『陰陽師』(01)や『壬生義士伝』(03)などのヒットメーカーとして知られるが、彼は助監督時代から、数々の逸話を持つツワモノであった。

 山本晋也監督のあるピンク映画でのことだ。OLが暴行魔に襲われる場面。路上には彼女が手にしていた“おでん”が散らばる趣向。まず先にレイプシーンを終え、ブツ撮りに移ろうとしたところ、もはや時刻は夜半。用意してあった“おでん”はとうに冷めている。コンビニなどザラにはない時代だ。いかにして“おでん”から湯気を出すか。そこで助監督の滝田は任せろと言った。カメラが回った。彼はションベンをかけて湯気を出したのだ! しかもOKカットを確認して、こう言ってのけた。「NGが出たら困ると思って、半分残しておきました」。

 そんな“奇跡を呼ぶ男”ならではの快作が、この『タイムアバンチュール 絶頂5秒前』だ。ヒロイン(田中こずえ)は2001KHzから流れるラジオを聴きながら、オナニーのエクスタシー力で2001年にタイムスリップしてしまう。そこで未来の自分と出会うのだが美容とダイエットに夢中で、しがない私立探偵の夫(蛍雪次郎)とはうまくいっていない。1986年のヒロインと2001年の夫との恋の行方は? 脚本を手がけたのは名コンビ・高木功。これは実は、「夏への扉」のポルノ版なのだ。

 そう、山下達郎もこよなく愛し、同名曲があるあのロバート・A・ハインラインのSF傑作小説の(作詞家・松本隆先生も松田聖子の「夏の扉」でオマージュを捧げてました)。意のままに湯気を出し時空のパラドックスを超える滝田マジック。のちに広末涼子の『秘密』(99)を撮ったのも当然の成り行きだったのである。

(月刊ビデオボーイ掲載)
●監督:滝田洋二郎●出演:田中こづえ、杉田かおり、他●1986年●日本