読む映画リバイバル『(本)噂のストリッパー』

再検!日活ロマンポルノ

今年でケンちゃん37歳 いまも現役の俳優です

(1998年5月号より)

 たった1本の映画が――人生を思いも寄らぬ方向へと導いてしまうことがある。それは観客サイドだけでなく、もちろん製作者サイドにも起こりうる不測の事態だ。例えば『(本)噂のストリッパー』というこのロマンポルノ。かつて名子役として人気を博したひとりの俳優にとって、これはまさしく“運命の映画”なのであった。

 まだ〈チャイドル〉なんて言葉のなかった60年代。映画にTVに活躍し、7才のときから始まった主演作『ケンちゃん』シリーズでその俳優、宮脇康之はお茶の間のアイドルとなった。絶大なる人気ぶりといったらもう、ほぼ同年代の俺から見ても当時羨望のマトであった。シリーズの舞台が寿司屋、ケーキ屋、おもちゃ屋に、レストラン、そば屋、フルーツパーラーと毎回変わっていくのもステキで、
「カアチャン、なんで俺を“宮脇康之”に産んでくれなかったァ!」
 と恨めしく呟いたもんだが、さすがにシリーズ最新作『フルーツケンちゃん』の頃などは観ているはずもなく、
「まだやってんだ、ケンちゃん……」
 と、同情とねぎらいの気持ち。76年のことで、すでに15才になっていた。

『(本)噂のストリッパー』は堀越学園卒業後に、そんな宮脇康之が“脱=ケンちゃん”を目指して出演したロマンポルノである。監督には劇場デビューしたばかりの気鋭の森田芳光。イメージチェンジを図るには申し分のない企画だった。事実、映画の出来は良かったのだ。彼が演じてみせたのは、ストリッパー(岡本かおり)に片思いする純朴なアルバイト学生。別の女性を抱いて心の隙間を埋めていたのだが、そのストリッパーがマナ板ショーを始めたと知り、相手役に立候補。念願のセックスへと突入するものの向こうにとってはただのお仕事! 夢に生きる男の痛いところをクールに刺激する作品だ。

 宮脇康之、20才のときの大勝負。で、彼の自伝『名子役の虚構 ケンちゃんの真実』を繙いてみると、
「――略――よし、これが呼び水となって、再び仕事が入るようになるか。それとも芸能界から見放されることになるか。どっちか一つに賭けてみよう――略――」

 結果は見事に後者だった。作品にも彼にも罪はなかった。つまり、世の偏見に押しつぶされたのだ。

 それにしてもこの自伝、スゴイ内容です。帯からして
「芸能界史上最高の名子役の誰も知らなかった悲痛な舞台裏、ケンちゃんのイメージを守るためだけに、両親が離婚、兄が自殺未遂をしても、僕たちは最良の家族を演じ続けた…」

 チャイドル、必読の書である。

[ビデオボーイ掲載]
●監督:森田芳光●出演:岡本かおり、太田あや子、宮脇康之、他●1982年●日本