表情豊かな「時代劇版女ウシジマくん!」が活躍する加藤泰監督の大傑作映画!多幸感に包まれる『骨までしゃぶる』

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館理人
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抜群にテンポのいい名作エンタメ映画の数々を残した、昭和を代表する映画監督のひとり、加藤泰の大傑作をご紹介!!

館理人
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『骨までしゃぶる』(1966年)は、監督:加藤泰、出演:桜町弘子、久保菜穂子、夏八木勲、ほか。

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レビューをどうぞ!

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ブラック会社の権化のような遊郭のシステムからの脱出劇

Photo by Tianshu Liu on Unsplash

 何とえげつないタイトルだろう。『骨までしゃぶる』。

 しかし、知ってる人は知っている。最後まで観届けたあと、これがタイトルに反し、“多幸感に包まれる大傑作”であることを!

 監督は加藤泰。2016年7〜9月、東京国立近代美術館フィルムセンターにて「生誕100年」の、史上最大規模のレトロスペクティヴが開催され、企画はその後、大阪の老舗ミニシアター、シネ・ヌーヴォに引き継がれた。

 並外れた作り手であった事実を、初めて体験したり改めて噛みしめた方々が数多くおり、何度目かの再評価の機運が起きた。今まで進んでいなかった作品のソフト化も活発になり、加藤泰曰く「初めて撮ったチャンバラのない」「好き放題できた」映画だという本作も、ついに初DVD化を果たした。

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その後、動画配信サービスでも観られるようになりました!

 早い話が、遊郭に売り飛ばされた“貧農の娘”の、悪戦苦闘のドラマだ。

 加藤泰組であるヒロイン、桜町弘子は『車夫遊侠伝 喧嘩辰』も合わせて日本映画史に名を刻み、これがデビュー作の相手役、夏八木勲の好漢ぶりも堂々たるもの。

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『車夫遊侠伝 喧嘩辰』(1964年)は、江戸っ子ヤクザが浪花芸者を巡って勇み立つ任侠娯楽作!

 また、潤沢な予算ではないにもかかわらず、洲崎遊郭の二階建てのオープンセット、鈴木孝俊の美術マジックが冴えわたり……といったことも、知ってる人はすでに知っているわけで。本当は知らない人にこそ観てもらいたいのだが。

 だからこんな風に書いてみよう。設定は明治33年ではあるけれども、現代にも十分通じる映画ゆえに、例えば『闇金ウシジマくん』シリーズのファンにはバッチリである、と。

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『闇金ウシジマくん』は山田孝之主演でテレビドラマ化され…、

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映画版は『〜the Final』まで全4作作られました。

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原作は雑誌「ビッグコミックスピリッツ」で不定期連載の真鍋昌平の漫画!

 懸命に働けば働くほど借金が増えていくブラック会社の権化のような遊郭のシステムは、まさに女たちを“骨までしゃぶる”。

 そこで展開されるリアルでシビアな「金と契約と交渉」の劇には、いつウシジマくんが出てきてもおかしくはない気さえしてくる。

 いや、純朴であったヒロインは過酷な現実の中で次第にウシジマくん化しながら愛に生き、同時に“裏社会からの脱出”という離れ業を見事やってのけるのだ。

 以上はストーリー上の面白さだが、映画的には「これぞ加藤泰!」と言わしめるワンカット長回しの濃密なシーンが用意されている。

 特に、遊郭の主人とヒロインとが警察署で対決するクライマックス。

 関係者を加えて4人が警察署の一室に集い、それぞれの思惑で動き、スリリングな言葉を応酬し、観る者を釘付けにする。

 ウシジマくんは鉄面皮だけども桜町弘子は表情豊か!! 弾けまくる彼女の魅力は、当時の東映イズムあふれる野蛮なタイトルを、むしろ崇高なイメージへと変えるのであった。

轟

キネマ旬報2016年11月上旬号掲載記事を改訂!

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