バイプレーヤー安田顕の初主演映画『俳優 亀岡拓次』は居酒屋の寒天である!?

館理人
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大人気名バイプレーヤーとしてドラマや映画に欠かせない存在の安田顕が、初めて主演した映画『俳優 亀岡拓次』をレビューにてご紹介!

館理人
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なんと無名のバイプレーヤーを演じてます!もうこれだけでキャスティングの妙。

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データ

【概要】

 人気演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーで、映画・ドラマ・舞台・バラエティと幅広く活躍する安田顕の、初主演映画。

館理人
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チケットが即完の「TEAM NACS」の舞台はDVDで見ることができます。こちらは2018年の「PARAMUSHIR ~信じ続けた士魂の旗を掲げて」

 演じるのは、声が掛かればどんな役でもこなす”最強の脇役”、亀岡拓次。

 スポットライトを浴びることなく生きてきた役者の恋と映画の珍騒動を、ユーモアとペーソスたっぷりに描く。

 原作は、5度の芥川賞候補にもなった作家・戌井昭人の同名小説。監督は、独特の着想と鮮烈な演出で、デビュー時から高い評価を受けている鬼才・横浜聡子。

【ストーリー】

 俳優・亀岡拓次(安田顕)。37歳、彼女ナシ。

 大作から自主映画まで、声さえかかればどこでも出向き、どんな役でもこなす。監督から重宝され、スタッフ の信頼も絶大。泥棒、チンピラからホームレスまで、演じた役柄は数知れず。日本人なら誰もが顔を知っているが、でも名前が思い浮かぶことはない──そんな”最強の脇役”だ。

 酒をこよなく愛し、撮影現場と酒場をひたすら行き来していた亀岡が、あるときロケ先で初めて入った居酒屋の美しい女将・安曇(麻生久美子)に一目惚れする。

【キャスト&スタッフ】

監督・脚本:横浜聡子
原作:戌井昭人「俳優・亀岡拓次」(フォイル刊)
音楽:大友良英「あまちゃん」
出演:安田顕、麻生久美子、宇野祥平、新井浩文、染谷将太、浅香航大、杉田かおる、工藤夕貴、三田佳子、山崎努
配給:日活

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レビュー

全国の撮影現場を渡り歩く、37歳独身男の“心象風景”

Photo by ShareGrid on Unsplash

 こんな経験はないだろうか?

 映画やテレビドラマを観ていて、「この脇役、顔はあちこちでよく見かけるけど名前までは知らないんだよなあ……」と感じることが。

 今回取り上げる『俳優 亀岡拓次』は、そんなバイプレーヤーの名をタイトルに持ってきて、なんと主役にしてしまった人物「深堀り」ムービー。

 日々、撮影現場を渡り歩き、日本全国 津々浦々を旅してゆく37歳の独身男のONとOFF、興味深い生態と“心象風景”が綴られていく。

 お声がかかればどこにでも、どんな役でも駆けつけて、そして現場で“ささやかな奇跡”を起こす亀岡。

 “最強の脇役”として監督たちに重宝がられ、 本作では流れ弾に当たって死ぬホームレスに、ヤクザの子分、時代劇の泥棒、フィリピンパブのお客、さらには海外へと飛び出して、モロッコの砂漠を歩くアラブの民と七変化を披露する。

 亀岡を演じるのは、こちらは無名ではない! 人気演劇ユニットTEAM NACSのメンバーでもある“ヤスケン”こと安田顕。近々ではテレビドラマ『下町ロケット』(2015年)の熱き技術開発部部長役が出色だった。

館理人
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こちらのレビュー、2016年のものになります。

館理人
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「下町ロケット」はこの3年後、新シリーズで再び放送されました。

 さて亀岡の趣味は……お酒。

 ロケで訪れた長野県の諏訪市で、ふらりと入ったのが居酒屋「ムロタ」である。瓶ビールを1本、1人で飲んでいる途中、 カウンターに突っ伏してウトウトと居眠りをしていたところ、店のテレビから聴こえてきたのがグルメ番組の女性レポーターの声。

 どこぞのスペインレストラン に取材しており、タコ料理を紹介していた。まだ夢うつつの中、店の扉が開き、外の冷気が中に飛び込んできて、と同時に人が出てゆく気配が。やおら目を覚ま すと、カウンターの前にはさっきまでのオヤジ店主と交代した若女将が立っていた。

 それが麻生久美子扮するヒロインの室田安曇(あずみ)。亀岡は、無意識に刷り込まれたのか、熱燗とともにタコを注文、若女将は「食べたくなりました?」とテレビのほうに視線を送って、「うちのはただのタコブツですけどね……うふふ」と笑う。この“うふふ”が何とも魅力的な若女将は亀岡にお酌をし、東 京から来たことを知ると地元の名産「寒天」を勧め、サービスで刺身にして出す。

 たしかに、諏訪地方は寒天の製造で日本一の地域。海藻から作られ、低カロリーながら栄養、食物繊維などが豊富な一品だ。

 亀岡は醤油につけて食し、 若女将の「なんてことのない味でしょ」という言葉に「そうですね」と相づちを打ってしまうのだが、特徴がなく、基本“無味無臭”だからこそ料理のバリエーションが多い。アレンジが自在で、どのようなものを加えても邪魔をせず、しかも加えたものの味付けですべてが決まってしまうわけで。

 「寒天」の佇まいはす なわち、脇役にも通ずる、としたらこじつけが過ぎるだろうか。

 その答えは、映画を観た方々に預けることにしよう。ちなみに、「寒天」の刺身もちゃんとテングサの風味はするんですよ。さあ、“素”の亀岡拓次の風味はこれいかに?

轟

ぐるなびPRO(2016年)掲載記事を改訂!