松方弘樹の覚醒映画シリーズ!徹頭徹尾“馬鹿な男”の物語『脱獄広島殺人囚』

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館理人
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松方弘樹がすごい主演映画があります!

館理人
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『脱獄広島殺人囚』(1974年)は中島貞夫監督作、主な出演は松方弘樹のほか、梅宮辰夫、大谷直子、渡瀬恒彦。

館理人
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レビューをどうぞ!

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松方弘樹がパワフルに“不屈の男”に血を通わせた会心の演技を見よ!

Photo by Steffen Triekels on Unsplash

『仁義なき戦い』シリーズの主人公・広能昌三のモデルである美能幸三が服役中に耳にした“脱獄王”の話をもとに映画化。

館理人
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『仁義なき戦い』シリーズは深作欣二監督。戦後の広島で起きた抗争をもとにした映画です。

出演は菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、田中邦衛、梅宮辰夫、ほか。出演者が劇似!

監督は、俳優・松方の育ての親のひとり、中島貞夫。本作と『暴動島根刑務所』『強盗放火殺人囚』(共に1975年)を合わせて「松方弘樹東映脱獄脱獄3部作」と呼ぶ。なお、3月14日に亡くなった渡瀬恒彦も出演。合掌。

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 松方弘樹がこの世を去ってから幾数ヶ月後の2017年6月、哀悼の意を込めて、『脱獄広島殺人囚』が初DVD化された(『強盗放火殺人囚』『広島仁義 人質奪回作戦』も)。

 どれもイカつい物騒すぎるタイトルばかりだが、30代に入って“覚醒”した「主演・松方弘樹」をたんまり堪能することができる。

 よく代表作として『仁義なき戦い』シリーズが挙げられ、実際たしかにその演技は最高なのだけれども、あくまでも助演である。

 それに引き換え『脱獄広島殺人囚』は1974年当時、東映実録路線のなかで頭ひとつ抜けて主役を張り、大ヒットし、松方本人もひときわ愛していた作品だった。

 終戦直後の混乱期。殺人と強盗の罪で広島刑務所にぶち込まれた“植田”という野蛮な男を演じている。

 まずは懲役20年。

 ギラギラと欲望のままに生き、闘争心の塊のような植田は自由を求めて脱獄するも、逃亡→逮捕→入獄、また脱獄を繰り返し、どんどん刑期がかさんでいく。

 シャバに出てはドジを踏んで毎回捕まる。

「わしゃホンマに馬鹿な男じゃ」と呟く場面が象徴するごとく、徹頭徹尾“馬鹿な男”の物語で、ムショ内でも殺人を犯して、最終的に刑期は41年と7ヶ月にもなる。

 が、松方弘樹はパワフルに、全身で、馬鹿だがこの“不屈の男”に血を通わせて観る者を魅了する。

 特に目ヂカラがスゴい!

 米国の人気ドラマ『プリズン・ブレイク』を先駆けること30年、執念を貫き、誰にも止められぬナチュラルボーン・ブレイカー(破壊者)の輝きは、今もまったく色褪せない。

館理人
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『プリズン・ブレイク』は全5シーズン。脱獄劇にまつわるサスペンスドラマです。

 本作公開後に出した本、「松方弘樹の言いたい放題 きつい一発」で彼はラストシーンについてこう述べている。

「脱獄したんだ。オレ自身の長かった刑務所から」。

 二世スターで華々しくデビューするも実は遅咲きのアクターで、長く燻っていた鬱憤を晴らす会心の演技がようやくできたのだ。在りし日のメモリアルな雄姿をぜひとも――。

轟

週刊SPA!2017年6月20日号掲載記事を改訂!