『ガメラ2 レギオン襲来』のレビューです!
映画『ガメラ』シリーズは『ゴジラ』シリーズとともに日本を代表する怪獣映画。
数々作られたガメラ映画の中に、「平成ガメラ3部作」と呼ばれる3部作があります。『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)、『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)、『ガメラ3 邪神覚醒』(1999年)がそれ。すべて金子修介監督が手がけています。
昭和の「ガメラシリーズ」とはいろいろ違います。昭和の“正義の怪獣”から生体兵器へと設定が変更され、ガメラのビジュアルもダイナミックに! 平成ガメラ3作はいずれもヒットしました。
ここでは、その2作目のレビューを復刻ご紹介です!
データ
監督:金子修介
出演:永島敏行、水野美紀、石橋保、吹越満、藤谷文子、川津祐介、他。
主題歌:ウルフルズ。
金子修介監督作品には、ほかに『DEATH NOTE デスノート』『DEATH NOTE デスノート the Last name』などがあります。
映画王の熱い思いと粋の結晶
(轟夕起夫)
あれは1996年3月だったか。『ガメラ2 レギオン襲来』撮影中の大映スタジオへ取材しに行ったときのことである。目の前にはミニチュアでいくつもの街のステージが組まれており、中でも札幌はすすきのの繁華街にズズンと寄生した異星生物レギオンとやらのその得体の知れぬ不気味さは、すぐには言葉に翻案できないものだった。
そして、足もとにあった缶ジュースとタバコの自動販売機のミニチュアをふと眺めてみたのだが、ゲゲッ、そこにはなんと中身の一個一個にホンモノ通りのデザイン&商品名が細かく記されてあったのだ。なんたる情熱。なんたる職人気質!
このマクロからミクロまでズズイと行きわたった、構築への意志 というか、リアルな世界観の徹底は、前作同様、いやそれ以上にただごとではなく、もう映画を観る前から圧倒してくるのだった。
さて、前説はここまで。そうして完成した『ガメラ2』の出来はどうだったのか。これがやはりイイんである。約2時間、スクリーンに釘づけにされるんである。
とくに導入部となる札幌の夜のレギオン襲来。宇宙から飛来した巨大なレギオンがビル街をつき破って出現し、その分身細胞のソルジャーレギオンが活動をはじめる。みるみるうちに繁殖した体がビルを破壊、地球上の酸素濃度を毒性に変質させてゆく。
恐怖をどこまでも増長させてゆく聞の中、逃げまどう市民。パニック状態に陥りながらも抗戦を続ける自衛隊。ガメラはまだか、ガメラの登場はまだなのか!
子供が観たらコレ怖すぎるんじゃねえのかァ、と思うくらい緊張事態に対するリアルなシミュレーションが1作目『ガメラ』に続き、今回もお見事。
一瞬にして訪れるカタストロフィーが絵空事ではなくなった今日、それは奇妙な既視感をともなって我らに迫ってくる。もう自動販売機の中身の緻密なことなどすっかり忘れていた。スタッフたちの努力の結晶にいちいち驚いているヒマもないくらい、映画の展開に没頭してしまうのだ。
先の読めぬシチュエーションを積みあげてゆく描写の力。それが制作プロセスを覆い隠し、凌駕してみせる点ではハリウッド大作にもヒケをとらない。
前作に続く特技監督・樋口真嗣氏は現場でこんなことを語っていた。
「構図をひとつ作るにも、自分の目ではなく、常にカメラの目が最優先される。フレームによって切り取られて、初めて怪獣は“怪獣”になる、カメラの目から外れた怪獣は、単に着ぐるみでしかないですからね」
はじめにフレームありき。世界はいくつもの目で切り取られては構築されている。そしてここにはリスペクトすべき、映画王の目による世界がある。
…そして三部作最終章『ガメラ3 邪神覚醒』に続く!
ドクターピカソ1996年9月号掲載記事を改訂!
特技監督の樋口真嗣さんは、この平成ガメラシリーズ3本とも特技監督を務めています。
樋口監督映画としては『ローレライ』『日本沈没』『シン・ゴジラ』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』などがあります。
そして!2021年には監督作『シン・ウルトラマン』が公開されます!!!企画・脚本:庵野秀明、出演:斎藤工、長澤まさみ、ほか!!!
『日本沈没』のレビューはこちらにあります。