ストップモーションホラーアニメ『パラノーマン ブライス・ホローの謎』は、その技巧も楽しめますが、ストーリーもいいです!
レビューをどうぞ!
魔女狩り伝説ホラーアニメ
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』のレビューはこちらにあります!
【レビュー】
(轟夕起夫)
全米では興行的に高成績を収め、アカデミー賞の長編アニメ部門にもノミネートされたパラノーマン ブライス・ホローの謎。しかし、日本では公開2週間で打ち切りの憂き目に……。
まあ、タイトルの雰囲気や主人公を含めた各キャラの造形、3Dストップモーション・アニメ自体、万人に響かないのは仕方ないが、ホラー好きは言わずもがな、これ、実話映画好きも必見の1本だったりするのである。
ブライス・ホローとは、本作の舞台、魔女狩り伝説の残る町の名前。モデルはマサチューセッツ州のセイラムだ。
現在はダンバースと改名されているのだが、本当に17世紀に魔女裁判のあったところで、およそ200人を魔女として告発、19人を絞首刑にし、他に5人が獄死、1人が拷問死した。
主人公の少年は、現代の魔女狩りに遭っている。ゾンビやホラー映画が大好きで、死んだ人たちと会話できる特殊能力を持ち、周囲からは変わり者扱いされているのだ。
そんな彼がある使命を与えられる。300年前に封印された「魔女の魂」の復活を阻止すること。詳細は伏せておくが、ここで先ほどの「セイラム魔女裁判」を下敷きにしたギミックが使われ、かなりシリアスな設定が提示される。
で、つまるところ、魔女との対決とは己の分身との対決でもあり、この構図がまた、深い感動を呼び覚ますのであった。
技法的にも楽しめる場面の多い映画で、例えば朝の通学時、独り言を呟く主人公を捉えたカメラが360度パンすると彼の主観になり、顔なじみの幽霊と親しげに挨拶する光景に。
単なるキャラ紹介ではなく、「視点を変えること」の重要さをさりげなく示していて見事。本作には被写体の人形を1コマごと動かし撮影、途方もなく根気のいる技法で完成させたスタッフの念が写っている。その「念写」されたものは言葉にすると陳腐になるのでやめておく。どうか実際にご覧ください。
週刊SPA!2013年9月10日発売号掲載記事を改訂!