監督語り【大島渚】ゴダールも認める、スキャンダラスな元祖ヌーヴェル・ヴァーグ旗手

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Photo by Nick Sarro on Unsplash
館理人
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大島渚監督を語るレビューをご紹介!

国際的に知名度が高く、リスペクトされる監督であったことは、1983年の監督作『戦場のメリークリスマス』で、キャスティングにデビッド・ボウイ、ビートたけし、坂本龍一を揃えたことでも、そのすごさがわかりますね。

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大島渚・プロフィール

1932年3月31日、京都出身。京大卒業後、松竹大船撮影所(現・松竹)に入社。
1959年『愛と希望の街』で監督デビュー。『青春残酷物語』『太陽の墓場』が若者に圧倒的に支持され、松竹ヌーヴェル・ヴァーグの旗手に。
1975年に大島渚プロを創立し、『愛のコリーダ』『愛の亡霊』『戦場のメリークリスマス』で世界の注目を浴びる。
2013年1月15日死去。
2000年 紫綬褒章受章。
2001年 フランス芸術文化勲章オフィシエ受章。

館理人
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では!大島渚監督をレビューにてみていきましょう!

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既存の映画とはまったく違うものを撮った、監督・大島渚

(文 轟夕起夫)

 2002年、36年ぶりに来日を果たしたジャン=リュック・ゴダール。記者会見で日本映画についてどう思うか、と訊かれた彼は、優れた映画作家として「小津安二郎、黒澤明、溝口健二、成瀬巳喜男」らの名を挙げ、続けて「大島渚の『青春残酷物語』が真のヌーヴェル・ヴァーグだと思う。私やトリュフォーより前に、大島は既存の映画とはまったく違う映画を撮っていた」というコメントを発した。

 これを、社交辞令と受け取るのは間違っている。なぜなら「ゴダールの映画史」なる論考シリーズの中でも、彼は『青春残酷物語』について言及しているのだ。しかも大島映画はさらに、『愛のコリーダ』も入っている。

『青春残酷物語』は、若きカップルが恋愛遊戯に興じ、妊娠、堕胎、最後には犬死に至る悲痛な物語だ。小津のような映画を模範としてきた松竹はこれに度肝を抜かれた、いや、日本映画全体が揺れた。

 それまでタブーだった“セックスと犯罪”のテーマが前面に押し出されていたのだから。やがて大島渚は松竹を辞め、政治的にも尖鋭化、行動し論争するスキャンダルな作家として1960年代を疾走した。

 1970年代に入るとヨーロッパに製作の場を求め、海外の製作者たちと組み始める。それが阿部定事件に材をとった美しきハードコア・ポルノ『愛のコリーダ』だ。

 マイケル・ウィンターボトムが大学時代の最初に観た日本映画だそうだが、ガス・ヴァン・サントやデニス・ホッパー等、多くの監督が熱烈に支持!

館理人
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英国のマイケル・ウィンターボトム監督作に、『スペインは呼んでいる』などがあります。

館理人
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ガス・ヴァン・サント監督作に『プロミスト・ランド』など。

『愛の亡霊』を高校生のとき初めて観たアルノー・デプレシャンは「映画館の中であまりに性的に興奮したので、死ぬかと思った」と告白している。

館理人
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ベルギーの監督、アルノー・デプレシャンの映画に『あの頃エッフェル塔の下で』などがあります。

 また、テオ・アンゲロプロスは世界の映画人による日本映画ベストワンに『儀式』を挙げた。これは硬質な国家論だ。

館理人
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ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督作に、『エレニの帰郷』などがあります。

『新宿泥棒日記』の横尾忠則、『戦場のメリークリスマス』のデヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、『御法度』であれば松田龍平と浅野忠信……時代を象徴する人間をスクリーンに投入する手法は昔からだ。

『青春残酷物語』では清純派スターの桑野みゆきに体当たりの演技をさせた。ちなみに彼女は、小津の『彼岸花』『秋日和』、黒澤の『赤ひげ』ではまったく別の顔を見せている。

 1995年、英国製作で大島渚の映画史ともいうべき「日本映画の百年」を監修したとき、小津の『生れてはみたけれど』のラストを入れた。子供たちがダメダメな親の世代に反抗の意志を示すシーンだ。小津と大島はかつて、世代闘争していると思われた。だがその“志”は実は、シカと繋がっていたのである。

轟

月刊スカパー!2003年1月号掲載記事を改訂!

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大島渚監督作、ピックアップ8作品!

『ユンボギの日記』

1965年 監督:大島渚出演:小松方正

韓国の貧しいガム売りの少年の手記をもとに、大島渚が韓国で撮影した数百枚の写真で構成したドキュメンタリー。

『新宿泥棒日記』

1969年 製作・監督・脚本:大島渚 出演:横尾忠則、横山リエ、唐十郎、麿赤児

実在の文化人やアーティストたちと遭遇しながら、1960年代の虚実の新宿をねり歩く男女…。その当時の世相を背景に、性的解放と革命を謳う異色作。

『儀式』

1971年 監督・脚本:大島渚出演:佐藤慶、小山明子

冠婚葬祭に集まるさまざまな事件を抱えた一族の人間模様。混乱と動乱に満ちた昭和の時代と日本人の心情を描く。

『夏の妹』

1972年 監督・脚本:大島渚 出演:栗田ひろみ、石橋正次

少女のひと夏の体験を縦軸に、日本と沖縄の間の溝を、妹と兄、兄と父の婚約者などさまざまな対立に重ね合わせる。

『少年』

1969年 監督:大島渚 出演:渡辺文雄、小山明子

当たり屋一家の事件をもとに、その足跡をたどりつつ全国横断ロケを敢行。虐げられる少年の日常と悲劇を描き出す。

『東京戦争戦後秘話 映画で遺書を遺して死んだ男の物語』

1970年 監督:大島渚 出演:後藤和夫、岩崎恵美子

大島渚と田村孟の原案を、自主映画を製作していた原正孝(現・原将人)と佐々木守が共同脚本した作品。

『忍者武芸帳』

1967年 製作・監督・脚本:大島渚 声:小沢昭一、山本圭

白土三平の長編劇画を原作に、白土三平の原画そのものを撮影、その静止画をモンタージュする手法により映画化。

『愛のコリーダ』

1976年 監督・脚本:大島渚 出演:藤竜也、松田英子

阿部定事件を題材に、男女の究極な姿を鮮烈な色彩の中に焼き付ける。監督の意図に限りなく近い本編ノーカット版。