漫画ワンピースの青雉のモデル!今もなおカッコイイのアイコン!ドラマ『探偵物語』の「工藤ちゃん」って? 松田優作の脚本家・丸山昇一との挑戦から解説!!

スポンサーリンク
館理人
館理人

漫画、アニメ、「ワンピース」で登場のキャラクター青雉は、『探偵物語』に出演した時の松田優作がモデルですが、その役柄が「工藤ちゃん」です。

館理人
館理人

「工藤ちゃん」は、テレビドラマ『探偵物語』で松田優作が演じ、世に放ったキャラクターで、「ダサカッコいい」私立探偵。

脚本家・丸山昇一と松田優作、『探偵物語』の工藤ちゃん。まるっと見ていくと、エンターテイナー・松田優作のストイックなまでのこだわりが見えてきます!

スポンサーリンク

松田優作プロフィール

1950年9月21日、山口県生まれ。高校在学中の1年間の渡米を経験した後、1973年に文学座に入り、『狼の紋章』でスクリーンデビュー。同年TVシリーズ『太陽にほえろ!』のジーパン役で人気を得る。1977年の『人間の証明』、1978年からの『遊戯』シリーズでスターとしての地位を確立。『陽炎座』(1981年)、『家族ゲーム』(1983年)、『嵐が丘』(1988年)で新境地を開き、『ブラック・レイン』で国際的活躍を期待された矢先に、1989年11月、膀胱癌でこの世を去る。

スポンサーリンク

役者と脚本家の共犯関係

 ここに1冊の本がある。タイトルは「松田優作+丸山昇一 未発表シナリオ集」(幻冬舎文庫)。言うまでもない。丸山昇一氏、彼こそは日本有数の脚本家である。

 1977年、優作が主演したTVドラマ『探偵物語』でデビューし、以後、優作とは『処刑遊戯』『野獣死すべし』『ヨコハマBJブルース』『ア・ホーマンス』という4本の映画を作り上げた名コンビだ。

 その二人が何と、10年の間に、10本近くもの未発表シナリオを残していたとは!

 それは、日本映画のお仕着せの企画や脚本に苛立ち続けた優作が、「ならば自らで作るしかない」と丸山氏とともに挑んだ闘いの歴史であった。

 ときにボソっと一言、ときには大河小説が1冊書けるほど溢れ出てくる優作のアイデアと格闘した丸山氏の第一稿。目を通した優作の答えは「ダメ!」「やったな!」の2つに1つ……ほかの答えなどありえなかった。

 そう。これはひとりの役者と脚本家が出会い、共犯関係を結び、シナリオを編みながらも映像化へと至らなかった苦い記録。だが、それにもましてストイックなまでに創作活動にのめり込んだ不世出のスターのクリエイティビティな魅力に、真に迫った貴重な記録でもあるのだ。

「丸山、俺たち、ありきたりのことをフィルムにしちゃダメだ。跳ばなきゃな。だけど、ごく普通の生活をとらえておかなきゃ、非現実の世界に跳んだって阿呆みたいなもんなんだぜ

 例えばTVドラマ『探偵物語』の続編を期待され、優作は「チャイナ・タウン」という作品を構想したーー。丸山氏とのやりとりはこうだった。いつもと同じでこんな感じだった。

『嵐ケ丘』の撮影に入ってる時に、呼ばれて現場に行ったんですよ。で、「撮影どうですか?」と尋ねる間もなく「丸山、“チャイナ・タウン”」って始まった (笑)。

「でも、チャイナ・タウンは出さないんだよ。向こうに見えてんだよ。まあ、撮るなら横浜だと思うけど。楼門が見えればいいんだよ、ロングで撮れば。で、話は東京都内なんだ」

「で、どうすんですか?」

「丸山、考えろよ。主人公の探偵はさ、事務所を持ってるか持ってないのかわからないんだけど、サイドカーに寝袋積んでるってのはどうかな」

 かつてTVバラエティ番組『SMAP×SMAP』の中で木村拓哉が、パロディにしながらもオマージュを捧げてみせたTVドラマ『探偵物語』の主人公〈工藤俊作〉。ハートウォーミングで、でもちょっとだけハードボイルド。そんな『探偵物語』の世界を優作は、当時ハーボイルドと呼んでいた。

 それは言ってみるなら、今日がなんら昨日と変わらぬ今日であることをシカと引き受けながら、気ままに、底ぬけに、しぶとく生き抜いてみせるアウトサイダー・ヒーローの誕生であった。

 ところで、思い起こせば最初に彼をブレイクさせた『太陽にほえろ!』(1973〜74年)。このTVシリーズで“ジーパン”というあだ名の刑事役で登場した優作が対面していたのは、往年の映画スター・石原裕次郎だった。

 若き頃は同じくアウトサイダーなヒーローであった裕次郎が、七曲署でボスと呼ばれ、すっかり貫禄のついた姿で登場していたとき、対照的にムダな贅肉をそぎ落とし、優作がシャープな肉体(と精神)を作りあげていたのは何とも象徴的だ。

 その名も“ミスター・スリム”という煙草を吸っていた彼のスリムな肉体は決定的なカッコ良さを表明していた。時代のヒーローの交代劇はこのときすでに行われていたのだ。

 そしてTVドラマ『探偵物語』の、女にだらしなく、喧嘩もさして強いとはいえない〈工藤俊作〉。相手と正々堂々戦うのでも、かといってはじめから背を向けて逃げるのでもなく、ひたすらクールに無償の行為に明け暮れる、魅力的にアウトサイダーなヒーロー。

 しかし、優作に満足という言葉はない。彼が考えていたのは常に先のことだった。

 終盤にさしかかった『探偵物語』の撮影現場で丸山氏は、(『荒神』が収録されている)中上健次の短編集『蛇淫』を手渡されたという。

 いきなりここ読んでみてって言われてさ。見ると「おかしくなった。わらった。涙が出た。心臓がむきだしになっている気がした。」という一行に赤線が引いてある。それで、「おかしくなった。わらった。涙が出た。心臓がむきだしになっている気がした。」って声に出して読んで、はあ?って言うと、「これ、やりたいんだよね、俺、このシーン。じゃ、よろしく」って(笑)。すぐに優作さん、出番です。とか声がかかって行っちゃうわけだよ、あの『探偵物語』の工藤ちゃんの扮装で(笑)。

 残念ながらこの作品『荒神』は実現するに至らなかった。しかしそうしたセンシティブな、鬼気迫るほどの感性が、あのピカレスク・ロマンの傑作『野獣死すべし』 (1980年)を生んだことは想像に難くない。

 犯罪者として都会の闇にひっそりと生きる主人公を演じるため、優作は本気で足を5センチ切ろうとした。それが無理なので10キロ近くも減量し、歯を上下4本抜いて、顎のラインを落とし、声質まで変えてしまった。

 あらゆる場面で1センチ、いや1ミリの距離感にこだわってきた男だからこそなせるワザ。そんな優作の関心は、次第にSFの世界へと移っていった。ただしSFといっても 非日常の意味合いで。

 2人は「緑色の血が流れる」という、未発表シナリオも残した。丸山氏はこう記す。

「優作の話すことは、通常の生活では発想できないような非現実と幻想の世界をかけめぐる。普通に普通に生活して、その余韻もさめない内の、身も心も浮遊するような超現実ーー。例えば、ごく普通の登場人物と思っていたら、実は血は緑色で、眼は他人の眼、とか。そしてサハラよりも乾ききった人間の関係」

 その「緑色の血が流れる」の先駆作が、レプリカントが登場する『ア・ホーマンス』である。しかも優作は最新SFXを駆使するのではなく、生身の人間たちに技術と知恵でどうにかSF映画が作れないかとこだわった。不可能を可能にするところに映画の面白さがあるのだと。

 一度だけ、丸山昇一氏に会ったことがある。彼はこんなことを語ってくれた。

「優作は、監督やプロデューサーに挑戦状ではなく挑発状を送っていたんですね。俺の言ってることやれるの? それができなきゃ映画やってる意味、ないんじゃないの? ってね」

 優作の残した作品を見る。すると今もそんな激した声が聞こえてくるはずだ。

スポンサーリンク

『探偵物語』の工藤ちゃん

TVドラマ『探偵物語』とは

 当初は、アメリカン・タッチで一匹狼の私立探偵モノという企画だった。だがそこに登場したのは、米国帰りではあるものの、丸サングラスにソフト帽、キザなカラーシャツにネクタイをつけ、カーリーヘアーをふり乱し、愛車イタリア製ベスパP150Xに跨って、三面記事の片隅に載るのがオチのセコい事件を渡り歩く私立探偵、その名も工藤俊作。

 1979年よりスタートした番組は、ハード・コミカルな優作の魅力を全面に押し出しつつ、決めるときにはビシっと決める〈ハードボイルド・コメディ〉という新ジャンルを開拓。伝説の最終回まで“無国籍な街”を自由気ままに彼は徘徊したのだった。

工藤ちゃんとは

私立探偵・工藤俊作のこと。調査中に事件に巻き込まれて、犯人扱いされること多々あり。かつてサンフランシスコで刑事をしていた過去も。だらしなく、いい加減に見えるが、いざという時は頼れる男。得意ワザは手錠抜け。

見た目が大事! 工藤俊作スタイルの必携4アイテム!

【白のベスパP150X】
トレードマークのひとつである愛車は白のベスパP150X。どこへ行くにも、移動は常にこのイタリア製のスクーターマフラーからもくもくと白い煙をはきだしながら走る姿はとても愛嬌がある。工藤俊作=ベスパともいえるくらい、絵になる印象深いアイテムである。よくコケていたが一度、壮絶なクラッシュをしたことがあり、「もうベスパは壊れて出てこないのかも?」と一部のファンをドキドキさせたことが。しかし、次の回では何事もなかったかのように軽快に走っていた。

【100円ライター】
『探偵物語』ファンの喫煙者が皆マネをしたと思われるのが火力全開のライター。100円ライターの金具を外してから、火力の調節ネジをムリヤリ上に持ち上げつつ3回半プラスに回して完成。ゴウゴウ音をたてる炎で煙草に火をつけるのが工藤ちゃん流だった。ただし、あまりに強すぎる火力で小さな火の玉が吹き出すこともあり、時に前髪がチリチリにもなるので結構デンジャラス。絶対マネはしないように!

【コーヒー、ただしモカ2:キリマンジャロ1:ブルーマウンテン3】
オープニングで工藤ちゃんのコーヒー好きは一目瞭然(本格的にコーヒーを入れて、嬉しそうに香りを楽しんだ後、一口飲んで吹き出しちゃうというお決まりのシーン)。当然、ブレンドにもこだわりがあった。行きつけの店でのオーダーは「モカが2、キリマンジャロが1、ブルーマウンテンが3」。しかし、店主(榎本明)は覚えが悪く、何度復唱させてもブレンドの割合を覚えられなかった。

【ファッション】
黒もしくは白の上下スーツに同色の帽子。サングラスをつけてベスパにまたがれば、ダンディな工藤俊作ファッションの完成。寒いときはスーツの上にベージュのダウンジャケットを着ている。また、睡眠時の定番スタイルといえばパジャマにサスペンダー。そして目にはアイマスク。ちなみに寝起きはかなり悪い。

スポンサーリンク

松田優作+丸山昇一の映画3本はコレ!

映画『処刑遊戯』

1979年、監督:村川透
公開時のポスターコピーは「瞬きひとつ許さない…奴は狼の影!」。殺しのテクニックにさらに磨きをかけた鳴海昌平と、秘密公安組織とのめくるめく対決。シリーズの末尾を飾る第3弾は、大野雄二の音楽も超クールな、フィルムノワール色濃厚な1本。のちに優作と『野獣死すべし』ほか数々の傑作を手がけることになる脚本家にして盟友、丸山昇一の劇場映画デビュー作でもある。

館理人
館理人

ちなみにシリーズ第一弾は『最も危険な遊戯』、第二弾は『殺人遊戯』です!

映画『ヨコハマBJブルース』

1981年、監督:工藤栄一
無精ヒゲに長髪にヨレヨレのレインコート。探偵F・マーロウならぬ、横浜のうらぶれたバーでブルースを歌う探偵BJが、ヤバイ事件に巻き込まれながら親友の死の謎を追う。優作が企画・原案を手がけ、念願の工藤監督と組んだ、逆光の中のヨコハマ版『ロング・グッドバイ』。公開時のポスターコピーは「優作 お前と会うのが楽しみだ! ガッデム、今度は何をやらかすか!?」。シブい喉も聴けます。

館理人
館理人

『ロング・グッドバイ』はロバート・アルトマン監督流の脱ハードボイルド映画!

映画『ア・ホーマンス』

1986年、監督:松田優作
久々にアクションに回帰した優作の、初にして唯一の監督作。「風」という名の過去も記憶も持たない男が、欲望と暴力と闇とで包まれた都市・新宿を、まさしく「風」のように駆け抜ける。石橋凌扮するはみだしヤクザとの友情を中心に、優作=風の正体が実はレプリカントだったという先駆的なアイデア、ポール牧や工藤栄一監督をヤクザ役で活かしたその大胆不敵な手腕に唸らされる。

(轟夕起夫)

轟

月刊スカパー!1999年号掲載記事を改訂!