『ウィッチ』(2015年)はロバート・エガース監督、出演はアニヤ・テイラー=ジョイほか。
レビューをどうぞ
裏テーマは「少女の反抗」!
【概要】
映画の舞台となった米国ニューイングランド出身のロバート・エガースは、第31回サンダンス映画祭で監督賞に輝き、一躍、第一線へと躍り出た。
主演のアニヤ・テイラー=ジョイは本作後、M・ナイト・シャマラン監督の『スプリット』に起用され、スター街道に!
ロバート・エガース監督は大作『The Northman』(原題)を製作中(2020年6月現在)。アニヤ・テイラー=ジョイのほか、ニコール・キッドマン、ウィレム・デフォー、アレクサンダー・スカルスガルド、ほか!
【レビュー】
かのスティーヴン・キングが「とんでもなく恐ろしい映画だった。そして、これは本物の映画であり、緊張感があり深く思考を刺激されるものだ」と大絶賛した『ウィッチ』。
さて、唖然呆然とすること間違いなしのラストシーン後に、画面上には脚本と長編初監督を手がけたロバート・エガースの名前が記され、続けてこんな字幕が現れる。
「本作は日記や裁判記録などの歴史的資料、民話などから着想を得た」
そのひとつに、「セイラム魔女裁判」があったのは確実だ。映画の舞台と同じく17世紀アメリカ、ニューイングランド地方で起こった陰惨な“魔女狩り”事件である。
200名近い村人が魔女として糾弾されていったのだが、映画で描かれているのは、ある敬虔なキリスト教徒の家族が怪現象の連続に追い詰められ、疑心暗鬼になり、互いに中傷し合った挙句、瓦解してゆくさま。
一家はまず、コミュニティから弾き出されて、人里離れた鬱蒼とした森のそばの荒れ地で暮らすことを余儀なくされる。
自給自足の生活でとても貧しい。だがそれが、神に仕える身の当然の試練だと思っている。
子供は全部で5人おり、長女が一番下の弟、乳飲み子を「いないいないばあ」であやしているとき、森の奥に潜む魔物が動きだす。彼女が顔を両手で隠した瞬間、赤ん坊は忽然と姿を消してしまうのだ。
このあと、おぞましい儀式が目の前で展開するのだが、全編に得体の知れない怖さ、不穏な空気が充満していき、思わず息が苦しくなる。
そんな中、家族に“魔女”と疑われていく長女を演じた新星アニヤ・テイラー=ジョイが圧倒的に素晴らしい!
厳しい信仰と内なる欲望が葛藤し、押し隠すほどに生のエロスがこぼれてしまうヒロインを体現してみせている。
かつて“悪魔憑き映画”の傑作『エクソシスト』から、裏テーマ「少女の反抗」を読み取り、指摘したスティーヴン・キング先生がベタ褒めするのも納得の作品なのであった。
『エクソシスト』は少女に憑いた悪魔VS神父の、1973年の大ヒットオカルト映画です。
週刊SPA!2017年12月5日、12日合併号掲載記事を改訂!