チャップリンは知ってる!ではローレル&ハーディは?
伝説の大人気お笑いコンビを描いた映画のご紹介!
『僕たちのラストステージ』(2018年)の監督はジョン・S・ベアード、出演はスティーヴ・クーガンとジョン・C・ライリー、ほか。
レビューをどうぞ
往年のコメディ映画の素晴らしさを再発見
世界3大喜劇王といえば、チャップリン、キートン、ロイドだが、同時代に生き、映画史的にも肩を並べるような活躍をしたレジェンダリーなコメディアンがいる。「ローレル&ハーディ」がそれだ。
スタン・ローレルとオリバー・ハーディの2人は日本では「極楽コンビ」と名付けられ、その主演作が続々と公開されて人気を博した。
ハリウッド創成期のサイレント映画、また時代がトーキーに移行しても才気を失わず、後世に多大な影響を与え、彼らのフォロワーはジャンルを飛び越えて数限りない。
かのビートルズもそうで、名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の表ジャケットを飾る“名士たち”の中に選出している。それだけ、アイコニックな存在なのである。
と、そんなローレル&ハーディの晩年を映画『僕たちのラストステージ』は描いているわけだが、オープニングは“前段”の1937年、まだ全盛期の頃。
新作を撮影中でセッティング待ち、楽屋から大スタジオへとダベりながら並んで歩いていく2人を何と6分間ワンカットの長回しで捉えてみせる!
やるぜジョン・S・ベアード監督、これで(ローレルとハーディのキャラ紹介を兼ねながら)一気に劇世界へと観客を引き込むことに成功している。スコットランド出身、クライム・コメディ『フィルス』(2013年)で頭角を現した逸材だ。
『フィルス』はジェームズ・マカヴォイ、ジェイミー・ベル出演。殺人事件を追うイカれた刑事が逆に追い込まれます。
スタジオでは(ハーディが止めていたにもかかわらず)ローレルがギャラをめぐって大プロデューサーのハル・ローチと口論になり、それを遮るように撮影が再開、2人のユニークなダンスシーンがフィルムに収められると、場面変わってそのシーンが上映されている満員の劇場へ。
完成した映画のタイトルは『宝の山』(1937年)。
そこからさらにテンポよく16年後にワープし、1953年の英国・ニューカッスルへ。ハリウッドの第一線から退き、しかし再起をかけてホールツアーを敢行しようとしており、ここから先は“観てのお楽しみ”──。
小さなトップハットに蝶ネクタイ、細身のローレルを演じたのはスティーヴ・クーガン。ちょび髭、棒ネクタイに大きなシルクハットがトレードマークの巨漢ハーディはジョン・C・ライリーが。
共に鬼気迫る“再現度”なのだが、事前にローレル&ハーディの映画をYOU TUBEなどで観ておくのもオツなもの。
字幕なしでも無問題。例えばオーソリティー・小林信彦氏が名著「世界の喜劇人」や「ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200」で触れている『ビッグ・ビジネス』(1929年)、『天国2人道中』(1939年)。
そういえば『宝の山』は、(こちらもマストの書籍!)「映画 この話したっけ」の森卓也氏がオールタイム・コメディ・ベストの中に入れていた。
もう一本、アカデミー賞の最優秀短編映画賞を獲得した『極楽ピアノ騒動』(1932年)も外せないか。アナーキーなスラップスティック・コメディの真髄で、教典のような作品である。
まさに「故きを温ねて新しきを知る」。ローレル&ハーディが喜劇の楽しさとコンビ愛、そして人生の深淵さを合わせて教えてくれるだろう。
ケトル2019年4月号掲載記事を改訂!