野心的作風、破格エンタメ!頭脳と度胸で仕掛ける世界を股にかけたカンニング・プロジェクト、タイ映画発!『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』

スポンサーリンク
館理人
館理人

タイの大ヒットサスペンス・スリラー映画です。

館理人
館理人

世界を股にかけたカンニング! レビューをどうぞ!

スポンサーリンク

タイムリミット・サスペンス!試験会場に乗り込んだ二人は不可能なミッションに挑む諜報員のごとし!

Photo by Ben Mullins on Unsplash

アジア各国でタイ映画史上歴代興行収入第一位、タイ・アカデミー賞と呼ばれる第27回スパンナホン賞で監督賞、主演女優賞、主演男優賞をはじめ、史上最多12部門受賞の話題作。

一人の天才少女をリーダーに高校生の犯罪チームが頭脳と度胸だけを武器に、世界を股にかけたカンニング・プロジェクトを仕掛ける。

   ・   ・   ・

 今やカンニングもハイテク化――というのは世の常識だが、ついに“デジタル系カンニング”時代を顕現する作品がタイで誕生した。

「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2017」にて『頭脳ゲーム』の邦題で上映され、タイトルを『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』と改めた本作。結論から述べるなら、こうなる。

 野心的な作風で、しかもエンタメとして破格に面白い!

 主人公は、進学校へ奨学生として転入してきた天才女子高生だ。

 家は決して裕福ではなく、教師の父と二人暮らしをしている。

 そんな彼女に金持ちのボンボンたちが接近しだす。テストの際に「カンニングをさせて」とお願いしたのだ。無報酬ではない。謝礼付きで。

 成功した彼女はさらに組織的なカンニング方法を編みだし、その“ビジネス”はやがて学内へ広がっていく。

 物語のバックボーンにはタイの学歴社会、並びに格差社会が横たわっており、ヒロインは(出来心もあるが)明晰な頭脳を使って不平等な現状から這い上がろうとしているのだ。

 一度は学校側にバレてしまい、痛い目に遭いながらも彼女は、その告げ口をした張本人、もうひとりの貧困層の奨学生、生真面目な男子を巻き込んで、大きなヤマへと挑む――と書くと、イニシアチブは全て主人公にあるようだが、実際は(勉強のできない)金持ちのボンボンたちが首謀者で、両者の共依存関係が“苦い現実”を滲ませる。

 初めはごくごく素朴な方法だったのが、だんだんと手が込んだものに。

 そして、一大カンニング・プロジェクトの舞台となるのはオーストラリアのシドニー。

 アメリカの名門大学に留学するための統一入試「STIC」の会場である。

 同日に世界各地でテストが行われ、一番早く開始されるシドニーで彼女と生真面目男子が試験を受け、全解答をタイに携帯電話で送付しようという算段だ。

 この超スリリングなシークエンス、ジャンル的には完全に“タイムリミット・サスペンス”で、乗り込んだ二人は不可能なミッションに挑む諜報員のごとし!

 だが、二人を筆頭にプロジェクトを進めているのは一介の“高校生”なのだから、弱点がいっぱい。

 で、それがまた、不確定要素を映画に導入して展開を読めなくさせている。

 監督のナタウット・プーンピリヤは、フランシス・フォード・コッポラ監督の『カンバセーション…盗聴…』やアラン・J・パクラ監督の『パララックス・ビュー』『大統領の陰謀』など、1970年代の傑作ポリティカル・サスペンスに影響を受けたという。

館理人
館理人

『カンバセーション…盗聴…』は追い込まれる盗聴のプロをジーン・ハックマンが演じます。ハリソン・フォードも出演。

館理人
館理人

『パララックス・ビュー』はウォーレン・ベイティ主演。上院議員殺人事件を記者が追います。

館理人
館理人

『大統領の陰謀』はウォーターゲート事件を追う記者にロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマンが扮します。

 相当なシネフィルだが、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督みたいに大化けする可能性も。

館理人
館理人

『ラ・ラ・ランド』は、下積み中の女優とピアニストのミュージカル・ラブストーリー。アカデミー賞では史上最多に並ぶノミネート数14部門、受賞は6部門の高評価を受けました。

 前作の『セッション』でチャゼル監督は演奏シーンを、カーチェイスや銀行強盗のように撮っていたが、プーンピリヤ監督は“カンニングシーン”でそれに近いことをやってのけているのである。

館理人
館理人

『セッション』もアカデミー賞では5部門ノミネート、3部門で受賞!音楽学校で学ぶドラマーとパワハラ指導者の音楽を通したバトル!

 クールなヒロインを演じたのは、モデル出身のチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。彼女の名前もプーンピリヤ監督と同様、覚えておいたほうがいい。でも、えらく難しすぎて、なかなか覚えられないとは思うけれども。

轟

ケトル2018年8月発売号掲載記事を改訂!