短命の歌姫のドキュメンタリー『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(2015年)のご紹介! 監督はエイミー・バーグ。
レビューをどうぞ!
繊細で孤独なリトル・ガールに寄り添う、イタいけど優しい作品
ロック史に輝く歌姫の素顔を、さまざまなライブ・パフォーマンス映像、貴重な証言を織り込みつつ探っていく。
遺族の全面協力のもと、家族や恋人に宛てしたためられ続けていたパーソナルな手紙の数々が初めて披露されており、シンガーソングライターのキャット・パワーがその朗読を担当!
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ジャニス・ジョプリンを手荒に紹介すれば、女性初のロックスターにして、ドラッグで夭折した1960年代の伝説的なブルーズシンガー、ということになるだろう。
「グレイティスト・ヒッツ」(1973年)は没後に発売されたアルバムです。
アルバム「パール」(1971年)の録音のために訪れていたハリウッドのホテルで、ジャニス・ジョプリンは亡くなりました。
まあこれに「魂の叫びを叩きつけたソウルフルなハスキーボイスの持ち主」なんて形容も足せば、なんかわかったような気になって、深く考えずに思考停止してしまうのだが、そんな態度に異議申し立てするように、彼女の“魂”の内実を、27年間の生涯を通して真摯に見つめていくのがこのドキュメンタリー映画『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』なのであった。
アメリカ南部の、排外的で保守色の強いテキサスで生まれたジャニスは家庭にもその土地柄にも馴染めず、大学を卒業することなく途中で故郷を飛び出す。
そして、カウンターカルチャーが胎動していたサンフランシスコで活動を始め、やがてヒッピー・ムーブメントのアイコンに。
それまでは地元で“変わり者”と見なされ、彼女は激しいイジメを受けていた。なかでも酷いのは、大学でのこんな仕打ち。男を対象にした校内「ブサメン」コンテストで、1位に選ばれてしまったのだ!
少々突飛かもしれないが、このエピソードから2度映画化されたスティーブン・キングの『キャリー』を想起した。
『キャリー』(1976年)はブライアン・デ・パルマ監督作、スティーブン・キング原作のホラー。
スティーブン・キング原作の映画化2013年版『キャリー』はキンバリー・ピアース監督作です。
イジメられっ子のキャリーがプロムパーティーで奈落の底へと落とされ、凄まじい超能力を解放するあの有名なシーンを。
つまり、ジャニスのパワフルな歌声もまた、一種のサイキックのごとき威力があると思うのだ。
ただし、キャリーの場合は死屍累々、あたりを業火で焼き尽くしてしまうが、ジャニスは悲しみや怒りを、慈愛に満ち溢れたブルージーな表現に昇華し、たくさんの傷ついた人々の心を救ってきた。
そのジャニスが功成り名遂げ、10年ぶりに故郷の高校の同窓会に出たとき、何が起きるか……繊細で孤独な、27年間の“リトル・ガール”の内面に寄り添った、イタいけど優しい作品である。
週刊SPA!2017年2月14・21日発売号掲載記事を改訂!