ハンガリーが好きになるおちゃめな映画!ご紹介です。
さっそくレビューをどうぞ!
昭和の怪人・お笑い芸人トニー谷がなぜ海を渡りハンガリー映画に?
1970年代ハンガリーの架空の街を舞台に、日本オタクのヒロインの「恋」と「呪い」の物語、奇想天外な顛末を描いたラブコメディ。
本国で大ヒットを記録し、世界三大ファンタスティック映画祭のうち、第35回ポルト国際映画祭にてグランプリ、第33回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭では審査員&観客賞を受賞した。
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トニー谷という往年の人気芸人のことは、何となく知っているのではないか。
キザで毒舌、露悪的な芸風、インチキ英語に「ざんす」「ネチョリンコン」といった独特の喋りで一世を風靡した、かの赤塚不二夫の漫画『おそ松くん』の “イヤミ”のモデルにもなった人だ。
その昭和の怪人トニー谷がなぜか海を渡り、時空を超えてハンガリー映画『リザとキツネと恋する死者たち』のなかに影響を与えている。
一文字変えられているのだが、「トミー谷」として甦ったのだ。
共通点は眼鏡にスーツ姿、胡散臭い雰囲気。こちらはヒロインのリザだけにしかに見えない幽霊……実は正体は死神で、底抜けに陽気なノリ、オーバーな振り付けで「ダンスダンス☆ハバグッタイム」と怪しいカタコト日本語で歌って踊り、ヒロインに近づく男たちをつぎつぎと抹殺していく。
アクの強さがクセになる「トミー谷」役のデヴィッド・サクライは、日本人の父とデンマーク人の母を持ち、日本に8年間住んでいたことも。
それにしても彼の歌う楽曲が、何やら昭和歌謡を模していて不思議な気持ちになるのだけれど、さらに、地味で奥手なヒロインもまたとてもヘン! 日本の恋愛小説が大好きで、彼女もカタコト日本語を披露、一体どこの国の映画なの!?
監督のウッイ・メーサーロシュ・カーロイは、ハンガリーの人気CMディレクターで、来日5回、Jカルチャー全般に精通している。
本作の基本設定は那須高原に古くから伝わる「九尾の狐」「殺生石」をモチーフにしており、画面にいちいちババ〜ンと、「死者」とテロップを出すスタイルは、我らが深作欣二監督のやり方を真似しているのだとか。うーん、マニアック。
そういえば本家トニー谷は、目尻のつり上がったフォックス眼鏡がトレードマークであった。
もしかして「そこもキツネつながり?」なんて、これはそんな深読みをさせてしまう「ジャポネスク・ファンタジー」なんざんす。
SPA!2016年6月7日号掲載記事を改訂!