こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1978年
監督:小沼勝
出演:なかにし礼、鹿沼えり、宮井えりな、水島美奈子、越美晴、今井健二、絵沢萠子、高橋明、藤健次、有働智章、中野文吾、草薙良一、中川明、関川慎二、佐藤了一、大竹省二、星野哲郎、中山大三郎、石田ゆり
脚本・音楽・原作・原案:なかにし礼
越美晴(コシミハル)の美少女ぶりにも感嘆!
(轟夕起夫)
日本の歌謡曲に「過去」という言葉が(歌詞として)初めて登場したのは1964年。菅原洋一のヒット曲『知りたくないの』だそうだ。しかし本当なのか?
「知りたくないの」の大ヒット後、菅原洋一さんは同じく、なかにし礼さんが作詞した「今日でお別れ」でも大ヒットを飛ばしました。
作詞した本人がこう書いている。
〈三日も四日もギターをかき鳴らして歌いつづけていたら、
あなたの過去など
知りたくないの
という文句が口をついてきた。
おっ、いける。悪くないじゃないか。とくに、「過去」という言葉は新鮮に響いた。この言葉がこれまでの歌謡曲に登場したことはあるのだろうか。念のため全音の『歌謡大全集』を全十二巻を買ってきて、そのすべてに目を通して見た。思ったとおり「過去」という言葉はどこにも見当たらなかった〉
『兄弟』(文藝春秋刊)
なかにし礼。作詞家。
日本歌謡史上に燦然と輝くヒットメーカーである。泉アキの『恋はハートで』や黛ジュンの『恋のハレルヤ』といった“ひとりGS”の名作、奥村チヨを歌詞の中でマゾ調教した『恋の奴隷』『恋泥棒』などもこの人の仕ワザ。
島倉千代子のアクメ歌謡の逸品『愛のさざなみ』や、由紀さおりのヌーボ・ロマンな『手紙』もそう。
北原ミレイの『石狩挽歌』からハイ・ファイ・セットの『フィーリング』まで、数限りなく、“男と女の世界”を自由自在に織りあげてきた。
そんな作詞の天才が、自らの「過去」に決着をつけたのが直木賞候補にもなった先の自伝的ベストセラーだ。例の有名なコピー「兄貴、死んでくれて本当に、本当にありがとう」である。
何度となく多額の借金を押しつけられた、特攻隊帰りとウソぶく放蕩な兄との壮絶な愛憎の物語。豊川悦司とビートたけしの共演でTVドラマにもなったので、観た方も多いことだろう。
1999年、テレビ朝日開局40周年記念スペシャルドラマとして製作されました。
ドラマでも一瞬描かれていたが『時には娼婦のように』は、なかにし礼が作詞、作曲して唄い、黒沢年男(現・年雄)バージョンともども大ヒットを飛ばした天下御免のエロ歌だ。
すぐさまロマンポルノで映画化され、自ら主演、体当たりのファックシーンにも挑んだのだが、やはりそれは悪魔のような兄から理不尽に背負わされた借金返済のためであった。
──なわけだから、洋エロ本の翻訳家に扮した彼が画面の中で発している空気はとてつもなく重い。
『兄弟』を読めば「なるほど」な厭世感である。
そんな彼に編集者は訊く。「小説なんか書いて我々をあっと言わせるんじゃないでしょうね」。映画では「いや」と答えているが、実際には書いちまった。が、この人の「過去」を知った今、それで本当に良かったと、心からそう思う。
小説『兄弟』は直木賞候補になりました。受賞は逃しましたが、小説『長崎ぶらぶら節』で2000年に見事第122回直木賞を受賞したのでした。
『長崎ぶらぶら節』は2001年に映画化もされました。主演は吉永小百合さんと渡哲也さん!
ビデオボーイ1999年7月号掲載コラムより!
『時には娼婦のように』はAmazonプライムビデオではレンタルタイトルに入っています。(2020年10月現在情報)
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