読む映画リバイバル『永遠のこどもたち』

母と子の“哀しき鬼ゴッコ”の結束やいかに……数々の伏線が回収されるラストも見事!

(2009年5月26月号より)

 思い返すとあれは、実に不思議な鬼ゴッコだった。「だるまさんが転んだ」。関西では「ぼんさんが屁をこいた」——地域・場所によっていろいろとネーミングが違う“子供時代の遊び”のことである。

 さて。驚くなかれ。このゴシックホラー『永遠のこどもたち』の冒頭には、スペイン版の「だるまさんが転んだ」が出てくる。オニになった者は「1、2、3、壁を叩け」と唱えながら振り向く。一方、背後をタッチしようと忍び足で近づく子供たちは、オニが振り返るごとにピタっと動きを止める。掛け声こそ別物だが、遊び方は日本と全く同じなのだ。

 本作の主人公は、そこでオニをやっていた少女の30年後の姿。彼女は幼少期を過ごした孤児院を養護施設に変え、夫と7歳の息子と新生活を始めようとする。が、息子は神隠しにあったかのように失踪、以後クリント・イーストウッドの『チェンジリング』もかくやの、母親による執念の“捜索劇”が展開していく。つまり、映画冒頭の遊戯シーンは重要な伏線、物語全体の世界観の根幹だったわけで、ヒロインは“哀しき鬼ゴッコ”の主役なのであった(『海を飛ぶ夢』の名女優、ベレン・ルエダの鬼気迫る演技が圧巻!)。

 息子が空想癖の持ち主で、虚構と現実、表裏一体のドラマを構築していくあたりは、傑作『パンズ・ラビリンス』を彷彿させるが、その監督ギレルモ・デル・トロが進んでプロデュースを担当。’75年生まれの俊英、J・A・バヨナ監督とは昔から、映画オタク同士の友だった。洋館を中心にした怪現象の描写がバヨナ監督、なかなかに達者で、古典的テクニックだが、ドアの開閉だけで見えざるものの“気配”をちゃんと感じさせる点も見事だ。

 終盤、「だるまさんが転んだ」の美しき悪夢バージョンが綴られ、数々の伏線が回収されていく中、観る者は単純な善悪では割りきれぬ“宙吊り感覚”に身を浸すことになるだろう。ちなみにデル・トロの、本作への感想はこうである。「俺をこんなにも泣かせやがって……バカヤロー!」。これ以上の賛辞があるだろうか。

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本国スペインで大ヒットを記録したダーク・ファンタジー。バルセロナ映画祭で7部門制覇、ゴヤ賞ではスペイン映画史上最多の14部門にノミネートされ、脚本賞、新人監督賞ほか7部門に輝いた。初の長編監督を務めたファン・アントニオ・バヨナの次回作はデル・トロ製作のハリウッド映画『Hater』、さらに『トワイライト 初恋』シリーズ第3弾も。

[週刊SPA!掲載]
●監督:J・A・パヨナ●出演:ベレン・ルエダ、フェルナンド・カヨ、他●2007年●スペイン、メキシコ