読む映画リバイバル『(秘)女郎責め地獄』

再検!日活ロマンポルノ

 爆弾になってしまえば人間も人形も同じなり

(2001年11月号より)

 人形とは、人間の似姿だ。

 黒衣(くろこ)の意のままに操られるのが人形のさだめだが、ときに人間もまた操り人形と同じ境遇になる。つまり自分の意志を持っているようでいて、実は背後でうごめく何者かに操られてしまう人間の哀しい運命。客観的に眺めてみればどっちもどっちだろう。

 そんな世界観を卓抜なビジュアルで描いた映画にスパイク・ジョーンズの『マルコヴィッチの穴』があったが、この『(秘)女郎責め地獄』もそれに匹敵する傑作だ。

 まず、オープニング・タイトルからして秀逸。石畳。スタッフ、キャストが記されている石畳。ひとりひとりの名を追うキャメラはやがて、舞台となる女郎長屋へと辿りつき、観る者はアッという間に映画という“人形たちの部屋”に導かれてゆく。脚本は田中陽造。監督は田中登。もはや多くは述べまい。手だれの人形=人間使いである。

 ヒロインの女郎、おせん(中川梨絵)は、いろんな意味で操り人形のような存在だ。金で縛られた遊女であること。「彼女を抱いた男は皆、死ぬ」との噂から“死神”のアダ名をつけられていること。さらには、どうしようもないヒモ野郎(高橋明)までしつこく取りついている。

 そこに新たな傀儡師(かいらいし)が登場する。人形浄瑠璃師の梅吉(堂下繁)だ。コイツが「人形の顔は覚えられるが、人間の顔となると男と女の区別もつかない」という大の人形バカ。盲目の許嫁(山科ゆり)を人形として愛し、そのカラダに一度も触れなかったため他の男と不義密通を働かれ、めぐりめぐっておせんにこう懇願するハメに。

 「お願えだ。人形になっておくんなせえ、私にすっかりカラダをあずけておくんなせえ」

 三味線と義太夫節と人形浄瑠璃とが交差する中、黒衣の梅吉に身を任せ、次第に人形となってゆくおせん! 映画史上に刻まれた人形化した女のまばゆいイメージ! それは『A.I.』で人間化した人形を描きながらも、愛に飢えた駄々っ児映画しか作れなかったスピルバーグに見せてやりたいほど鮮烈なのだが、ともかく梅吉はおせんのカラダの温もりに包まれ、「初めて血の通った人間になれやした」と礼を言う。

 そう、女が人形化を通していっそう人間を色づかせるように、男たるものには皆、股間にピノキオの鼻ともいうべき“木偶(でく)”がついている。使い方によってそいつは、魔法の杖にもなれば木偶の坊にもなる。人間と人形の狭間の微妙なニュアンスを愉しむためにぶらさがっている“木偶”。意志を持っているようでいて、実は背後でうごめく何者かに糸を引かれているコ奴こそが、一番の操り人形なのであった!

(月刊ビデオボーイ掲載)
●監督:田中登●出演:中川梨絵、山科ゆり、他●1973年●日本