読む映画リバイバル『イースタン・プロミス』

ヴィゴがフルチンで肉弾戦! 映画史に残る、いや残したい、この名シーンを見逃すな

(2008年11月18日号より)

 フルチンで大乱闘、なんである。

 「いきなり何だあ!?」って話だろうが、とりあえずこの傑作『イースタン・プロミス』のメインイベントを、ひとまず先にお伝えてしておこうかと。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に続いて実現した、主演ヴィゴ・モーテンセン、監督デヴィッド・クローネンバーグのコンビ作。

 むろん「フルチンで大乱闘」だけの映画ではない。社会的なテーマとエンタメ性が融合し、ストーリーも最後まで目が離せずスリリング。導入からしてイイのだ。ロンドンのある病院で、身元不明のロシア人少女が出産後、息を引きとる。手術に立ち合った助産婦(ナオミ・ワッツ)は、残されたロシア語の日記を手がかりに、身元を割り出そうとする。

 そこに絡んでくるのがヴィゴ扮するニコライだ。ロシアン・マフィアの運転手で、全身黒づくめの服、脱げばカラダには無数のタトゥーが彫られている謎めいた男。コイツの動向とともに、移民の問題、さらにはヨーロッパの人身売買とその裏で暗躍するロシアンマフィアの実態が炙り出されていき、そして本作は問題の「フルチンで大格闘」に突入する。

 公衆浴場で手にナイフを持った殺し屋2人に襲われるニコライ。かつて勝新太郎が主演した『兵隊やくざ』でも、風呂場で裸の大喧嘩をやらかすシーンがあったが、それとは違う、もっとリアルでガチンコな闘い。真に強い男は「フルチンでもいかに強いか」を示した肉弾戦。このシチュエーションをギャグにはしない力業がスゴイ。映画史に残るシーンが新たに誕生した、と言っておこう。

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2007年トロント国際映画祭で観客賞を受賞! タバコの火を自らの舌で消した後、遺体の指を切り落とし、手際よく処理していくロシアンマフィアの運転手ニコライ。この男の秘密とは一体? 脚本は『堕天使のパスポート』(2002年)で不法滞在者、移民のシビアな現実、臓器移植の闇を描いたスティーヴ・ナイト。本作でもリアルなロンドンを描く。

[週刊SPA!掲載]
●監督:デヴィッド・クローネンバーグ●出演:ヴィゴ・モーテンセン、他●2007年●イギリス