『クロニクル』異能を手に入れた高校生の傑作SF青春グラフィティ

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Photo by Andrea Cau on Unsplash
館理人
館理人

『クロニクル』のタイトルだと、これが傑作SF青春グラフィティだ!ってのがちょっとわかりづらいですね。レビューをどうぞ!

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人は強大なパワーを手に入れた時どうなるか…啓蒙の映画でもある!

【概要】
低予算ながら、世界的にヒットを記録した新感覚SF。これが長編デビュー作のジョシュ・トランクは現在28歳で、リブート版『ファンタスティック・フォー』の監督に抜擢された。また主演のデイン・デハーンも人気上昇、『アメイジング・スパイダーマン2』の仇役に!
2012年 アメリカ 1時間25分
監督:ジョシュ・トランク 出演:デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダン

【レビュー】

(轟夕起夫)

 2週間限定上映から拡大公開された噂の映画 『クロニクル』。まずは「傑作だ!」と大声でたたえておきたい。

 地面に開いた穴の中に入り、謎の物体に触れたことで高校生3人が念動力に目覚める。「さて、それぞれの運命は?」というのが物語の骨子なのだが、新星デイン・デハーン扮する主人公アンドリューの設定に注目を。イジメられっ子で家庭環境も最悪。彼は肌身離さずビデオカメラを手にし、日々をクロニクル(記録)し続けている。なぜか。カメラだけが「自分の思う通りに動かせるもの」であるからだ。

 やがてアンドリューは念動力でカメラを空中に固定し、3人の姿を収めるようになる。まるでカメラが人格を持ち、良き友達がまたひとり増えた感じ。しかも空中カメラはいわば 神の視点を獲得した主観映像で、彼は自分の異能のパワーに自信を深めていく。

 映画自体も斬新で驚異的なアングルを次々と披露!

 だが終盤、現実の重みに打ち砕かれたアンドリューが暴走するや、スマホ、街や店の監視カメラ、TVニュースが客観的にその姿を捉え始める。もう彼が、意のままにカメラを制御することはできない……。

 一見バカ映画っぽいが実はロジカルな脚本を書いたのはマックス・ランディス。『ブルース・ブラザース』『狼男アメリカン』などの監督ジョン・ランディスの息子だ。

 彼はこう言っている。「ファンタジーやSFといったジャンル映画のつもりで作ったわけではない」と。

 スティーヴン・キングの大ファンゆえに、本作は当然『キャリー』の影響も大。

 新進監督のジョシュ・トランクはといえば撮影前、デイン・デハーンに『AKIRA』と『エレファント・マン』のソフトを渡したそう。

 現実離れした話ではない。胸掻きむしられる青春グラフィティであり、人は強大なパワーを手に入れた時、どうなるかを描いた啓蒙の映画。もう一度念を押しておこう。これは傑作だ!

轟

週刊SPA!2013年12月10日号掲載記事を改訂!