こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1988年
監督:金子修介
出演:かとうみゆき、渡辺航、橋本杏子、高樹陽子、清水舞、草薙良一、大木戸真治、坂本博道、江崎和代、富田三千代、宮本麻代、風祭ゆき、岡本麗、大地康雄
脚本:じんのひろあき
2001年日活ロマンポルノの旅
(轟夕起夫)
何かが終わってしまうこと。永遠に続くかと思われていた時間が、不意に中断され、結末へと辿りついてしまうこと。
だが、終わりはいつだって、新たなる“始まり”を代わりに告げてゆくだろう。
な〜んちゃってね。
慣れないクールな書き出しをしてしまって、恥ずかしくなったようです。
こんなふうな感傷に、思いっきりひたらせてくれるのが『ラスト・キャバレー』という作品なのだ。
平成『ガメラ』シリーズや『クロスファイア』で知られる日本映画のエース、金子修介監督の、日活ロマンポルノへの惜別の一篇。
平成に製作された『ガメラ』全3作が「平成ガメラ」と呼ばれています。
舞台は、数日後に閉店してしまうキャバレーである。この機を利用して女子高生のヒロイン(かとうみゆき)は、店をたたむ経営者の父(大地康雄!)の過去をさぐり、不在の母親探しをはじめる。
平成ガメラは『ガメラ 大怪獣空中決戦』『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラ3 邪神覚醒』。
ラストシークエンスの、キャバレーのさようならパーティ・シーンが素晴らしい。風祭ゆき、岡本麗、江崎和代、橘雪子といったロマンポルノゆかりの女優陣も顔を見せるなか、ヒロインは人目を忍んで恋人と交わる。すると何かの拍子で天井のスプリンクラーが作動し、会場に、そしてカラミあう二人のもとに水が撒かれ出す。
まるであたりはどしゃぶりの雨模様!
3作とも金子監督です、平成ガメラ。
この、人工的な“雨”がいいのだ。そう、ロマンポルノとは徹底して、人工的なフェイクの世界であった。
ウソにウソを重ねて、突拍子もないロマン(物語)を強引に、はたまた巧妙に、観る者に信じ込ませる手練手管。つまりは映画の力。
経営者の父役、大地康雄さんは『マルサの女』(1987年)に出演後、名バイプレイーヤーとして様々なドラマや映画に出演。愛されキャラでCMにも多数出演されてましたね。
最近の映画では『サバイバルファミリー』(2017年)に出演されてました、大地康雄さん。
折しも時は1988年。長き歴史に幕を引こうとしていたロマンポルノを金子修介はキャバレーに見立て、そこにウソの“雨”を思いっきり降らして場を盛り上げ、そのフェイク美の歴史を自ら反芻したのだった。
『ラスト・キャバレー』が公開されたのは1988年4月。日活(当時の名義は“にっかつ”)は、「同年6月をもってロマンポルノの製作を終了する」と発表したのでした。
終わりは新たなる“始まり”――。
そんな後味を残して『ラスト・キャバレー』はエンドマークを迎える。なるほど、金子修介の存在が、身をもってそれを今日まで示し続けているだろう。
ところで、2001年1月19日に行われた、渋谷パンテオン(映画館)での日活ロマンポルノのオールナイトイベント「新世紀エクスタシーNIGHT」は、スクリーンでそのフェイク美を味わう絶好の機会であった。
日活ロマンポルノはこうやってこれまで、断続的にイベント上映が開催されてるんですよね。
そのたびに、じわりじわり、新しいファンがついていってるんですよ〜。
ちなみにラインナップは、田中登監督の問答無用の傑作『実録阿部定』。
柄本明が『マスク』のジム・キャリーばりに変身しちゃう小沼勝監督の『Mr.ジレンマン 色情狂い』。
神代辰巳監督の世界的遺産『恋人たちは濡れた』。
そして、最後を飾ったのは『ラスト・キャバレー』。
ここはあえて『マスク』をご紹介。
キャメロン・ディアスの美脚も圧倒する、ジム・キャリーのハイテンション変身が見もの。柄本明さんの変身演技がコレ級という!
どうだろう。キミも、終わりが新たなる“始まり”を告げてゆくその潮流に乗ってみないか。
月刊ビデオボーイ2001年2月号掲載コラムより!
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