巨匠監督のトンデモ怪作!『セックス・チェック 第二の性』オリンピックを目指すヒロインの数奇な運命

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館理人
館理人

『セックス・チェック 第二の性』は1968年の映画です。増村保造監督作、出演は安田(現・大楠)道代、緒形拳、小川真由美、ほか。レビューをどうぞ!

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こ、これは冗談か?ギャグなのか?

 人間の運命とは不思議なものだ。それはスポーツの世界を眺めていても、しばしば実感させられることである。たとえば半陰陽。セックス・チェックによって、まれに話題となる両性具有者の事例だが、古くは1932年ロサンゼルス五輪、女子100Mの金メダリスト、ステラ・ウォルシュ選手の名が知られている。

 『セックス・チェック 第二の性』は、この半陰陽を題材とした「トンでも日本映画」の怪作。

 緒形拳扮する陸上コーチに見いだされたヒロインが、オリンピック代表を目指し特訓している。緒形コーチは、ふと考える。彼女の中の男の能力を揺り動かせば、脚力も強くなるのではないかと。

 そこでなんと、彼女を「男」として扱うようになる。毎日、ヒゲを剃るように命じ、会話も「俺さあ」という男言葉を強要する。こ、これは冗談か?ギャグなのか?

 いや、マジである。なぜなら、監督が増村保造だから。『兵隊やくざ』『陸軍中野学校』『御用牙・かみそり半蔵地獄責め』などの男性路線、『妻は告白する』『卍』『華岡青洲の妻』といった若尾文子との名コンビで知られる奇才。

 かの大映ドラマの基本テイストを築き上げたのも御大でもある。「赤い」シリーズや「スチュワーデス物語」を知っている方ならば、常軌を逸した、しかし魅惑のハイテンション演出のスゴさをわかってくれるだろう。

 話を映画に戻そう。作戦は成功し、ヒロインは実力をグンと上げ、オリンピック代表候補になるのだが、セックス・チェックの結果、彼女は半陰陽と診断される。改造を試みたら、本当に半分「男」になってしまったのだ。

 このあとのヒロインの数奇な運命、驚天動地の展開は……ぜひとも、お確かめを!

 原作は、寺内大吉の「すぷりんたぁ」。脚本化の際は“暁の超特急”吉岡隆徳氏から、安田(現・大楠)道代は撮影前、1カ月間毎日特訓を受けた。筋肉がつき、映画の中で出す100m11秒7に近い記録に迫り、「オリンピックに出ないか」とまで言われた。その辺の話、奇才の全貌については「映画監督増村保造の世界」(ワイズ出版)に詳しい。

 ところで冒頭のステラ・ウォルシュの事例は、彼女の死後明るみに出たものである。なぜ分かったのか? 69歳のとき強盗に射殺され検視を受けたのだ。性染色体は女性だったがペニス大のクリトリスを所有、“女性仮性半陰陽”と呼ばれるものであった……人間の運命は、本当に数奇だ。

轟

ゼッケン1999年号掲載記事を改訂!