祝『パラサイト 半地下の家族』アカデミー賞作品賞受賞! 他にもあります、面白い韓国映画。
『トンネル 闇に鎖された男』(2016年)は、韓国で大ヒットした映画です。
さっそくご紹介!
極度の閉所空間が舞台のサバイバル劇。伏線が仕込まれた導入5分を見逃すな!
監督は『最後まで行く』(2014年)でカンヌ国際映画祭でも注目されたキム・ソンフン。サスペンスとユーモアを織り交ぜた演出が絶妙。
『空気人形』(2009年)、『ジュピター』(2015年)など日本やハリウッドでも活躍する国際派女優ペ・ドゥナが妻役に。ほとんどノーメイク(でも可愛い!)。
『空気人形』のレビューあります。こちら!
『ジュピター』は『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー姉弟監督作です。『マトリックス』のレビューあります、こちら!
映画が始まってすぐに、その惨劇は起こる。車を走行中、突然トンネルが天井から崩れ落ち、主人公は生き埋めになってしまうのだ。開幕して約5分の出来事。
この『トンネル 闇に鎖された男』という作品は、観る者をじらさない。四の五の言わずに本題に入り、あとはゴールを目指して突っ走る!
主人公を演じるのは、ハ・ジョンウ。『チェイサー』『お嬢さん』など韓国を代表する憑依系アクターで、ここでは妻と幼い娘を持つ平凡な、だが予想外の事態へと巻き込まれる不運すぎる自動車ディーラーに。
ハ・ジョンウは『チェイサー』では連続殺人犯役!
『お嬢さん』では、お嬢さんの財産を狙う男役! 怖っ!
トンネル内で車ごと瓦礫まみれになった彼の「生命線」は、バッテリー残量78%の携帯電話と、ペットボトル2本分の水、ワンホールのケーキ。水は直前に立ち寄った給油所で手に入れ、ケーキは娘の誕生日用。
極度の閉所空間を舞台に、趣向を凝らしたサバイバルが展開してゆくのだが、これがよくあるディザスタームービーでは全然なくて。
「どうせ救助隊が頑張って助けられるんでしょ」
と、高を括っていると、どエラい目に遭わされます(もちろん、いい意味で)。
つまり、本作の目指すゴールは凡百のパニックもの、ジャンルムービーのお約束の次元に設定されておらず、あろうことか主人公の安否をダシにして非常にブラックでアイロニカルな、しかし胸を打つ地点へと奇跡的に着地するのである。
その“尾を引く”後味がたまらない。
頼りなさげな救助隊長を演じた名バイプレイヤー、人のいオッサン風情のオ・ダルスがここぞという場面で発するセリフ、入魂の「クソ野郎!」にココロ射抜かれる。
一体誰に向けてなのかは本編でご確認を。この一言を聞くための映画、と言っても過言ではない。
実は導入部の約5分間、ここにさりげなくすべての伏線が仕込んであるのも巧い。
時にトンネルは「くぐり抜けねばならぬ人生の逆境」の比喩として使われるが、それは落とし穴のように我々をじっと待っているのだ。怖っ!!
週刊SPA!2017年9月5日発売号掲載記事を改訂!
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