カルトムービーと言われるとお宝感を感じます。当時の人気ミュージシャン2人が俳優として主演した映画『断絶』をレビューにてご紹介。
ミュージシャンが主演なのに、ふたりの音楽は一切排除。なかなかDVD化ができなかったというレアものです。
ミュージシャン、ジェームス・テイラーとデニス・ウィルソン(ザ・ビーチ・ボーイズ)が共演
ブルース・スプリングスティーンやリチャード・リンクレーター監督も愛する、カルトムービー。
ブルース・スプリングスティーンは今も現役ミュージシャン!
原題の『TWO-LANE BLACKTOP』とは“二車線の舗装道路”という意味。
長年ソフト化が見送られてきた最大の原因は、劇中、車のラジオやカーステから流れてくる音楽の著作権も大きかったとか。
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呪われた映画、というものがある。この1971年公開の『断絶』もそんな1本として数えられてきた。
主演はジェームス・テイラーとデニス・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ!)。
ちなみにビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンを描いた映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』のレビューはこちらにあります。
デニス・ウィルソンは『断崖』出演後、ザ・ビーチ・ボーイズのメンバの中で初めてソロアルバムを出してます。
当時人気のミュージシャンだ。彼らはレース用に改造した1955年型シボレーを運転する。
対するのは名優ウォーレン・オーツの乗るポンティアックGTO。
両者の間を行き交うヒロインはローリー・バード(モデル出身で写真家でもあり、後にアート・ガーファンクルの恋人に)。
要は互いの車を賭けてワシントンまで競いあう、いわゆるアメリカン・ニューシネマ的ロードムービーだが、反逆のアンチヒーローにも負け犬の美学にも背を向けた、徹底してアメリカの迷走感を押し出した映画であった。
監督はモンテ・ヘルマン。1960年代にジャック・ニコルソンと風変わりな西部劇を作り、1990年代にはタランティーノの『レザボア・ドッグス』の製作総指揮にクレジットされたことで知られる鬼才。
風変わりな西部劇は『銃撃』!
だが大手ユニバーサルの重役は完成試写を観て激怒し、宣伝に力を入れず、公開時はあえなく興行的失敗に終わった。
それから36年。ついに初ソフト化されたわけだが、関係者たちはどうなったか?
バード嬢は1979年に自殺。オーツ親父は1982年に心臓発作で急死。デニスは1983年に海で溺死。ジェームズ・テイラーは何とか今も現役だが、ヘルマン監督の新作は……ない。
しかし、“呪われた映画”という肩書きが、ある種の神話となり、本作は生命力豊かに甦ってきた。鮮烈ともヤケクソとも言える伝説的ラスト。それを見逃す手はないと思う。
週刊SPA!2007年4月17日号掲載記事を改訂!